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目次

令和5(2023)年度

第9回日本語の歴史的典籍国際研究集会

第9回日本語の歴史的典籍国際研究集会

日時

令和5(2023)年12月4日(月)18:00~19:25(日本時間)

開催方法

オンラインシンポジウム(YouTubeでの動画配信)

主催

大学共同利用機関法人人間文化研究機構 国文学研究資料館
チラシのダウンロードはこちらPDF
プログラム詳細
総合司会:山本 和明(古典籍共同研究事業センター長)
18:00

開会の挨拶

渡部 泰明(国文学研究資料館長)

18:05~18:50

セクション1 国文研のデータベースを使いこなす

  1. 歴史的典籍NW事業と国書データベース

    小宮山 史(国文学研究資料館学術情報課古典資料目録係員)

  2. 国文学研究資料館の研究データ対応 -学術リポジトリによる蓄積・公開-

    堀野 和子(国文学研究資料館学術情報課データ標準化推進係長)

  3. 収蔵歴史アーカイブズデータベース

    西村 慎太郎(国文学研究資料館研究部教授)

    この発表についての質疑応答

    (質問)

    一部の文書群に搭載されている「文書内検索」ですが、今後、この機能が使える文書群は増えていくのでしょうか。

    (回答)

    年間で文書群数も画像公開数も増加します。たとえば本年度の場合、4月から9月までの半年間では、新規公開文書群9件、新規公開文書件数6,404件、新規公開画像件数10,088件、新規公開画像コマ数52,413コマになっています。

    (質問)

    「文書群内検索」が多めに出来る地域の文書群と、それが少なめの地域の文書群がありますが、この違いは何でしょうか。

    (回答)

    いくつか理由があります。「文書群内検索」のほとんどは『史料目録』に収録されているもので、1951年に国立史料館が設立した以来の古文書を収蔵していますが、都道府県によって収蔵の差があります。
    加えて、たとえば山梨県内の役場文書は、1文書群ごとは大きくないのですが、多くの文書群がひとつの『史料目録』に収載されているので、収蔵歴史データベースに多く搭載されています。

18:50〜19:20

セクション2 歴史的典籍NW事業の成果と未来

  1. 歴史的典籍NW事業の成果について

    山本 和明(国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター長)

    この発表についての質疑応答

    (質問)

    30万点の古典籍画像の「30万点」という数字には、どのような意味があるのでしょうか。なぜ30万点でなければいけないのでしょうか。10年目の今だからこそ、お伺いしたいです。

    (回答)

    日本語の歴史的典籍の総数は、『国書総目録』に掲載されている書誌情報等から、約50万点と推測されています。
    歴史典籍NW事業においては、これらの日本語の歴史的典籍のうち、文科省とのヒアリング等を踏まえて、画像化が可能と見込まれる30万点の資料について、10ヶ年度の事業期間(2014年度~2023年度)での画像化を目標として、計画を推進してまいりました。
    上記の目標については、国内外の大学等との協力により無事達成できる見込みとなりました。後継計画では、今後10ヶ年度の期間で新たに15万点の資料の画像化を目指して取り組んで参ります。ご期待ください。

  2. 「総合書物学」のこころみから

    木越 俊介(国文学研究資料館研究部教授)

19:20

閉会の挨拶

山本 和明(国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター長)

19:25

閉会

令和4(2022)年度

第8回日本語の歴史的典籍国際研究集会

第8回日本語の歴史的典籍国際研究集会

日時

令和4(2022)年11月11日(金)9:00~11:00

開催方法

オンラインシンポジウム(YouTubeでの動画配信)

主催

大学共同利用機関法人人間文化研究機構 国文学研究資料館
チラシのダウンロードはこちらPDF
プログラム詳細
総合司会:井黒 佳穂子(国文学研究資料館特任助教)
9:00 ~ 9:05

開会挨拶

渡部 泰明(国文学研究資料館長)

9:05 ~ 9:20

[1]歴史的典籍NW事業の取組みについて

山本 和明(国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター長)

発表資料はこちらPDF
9:20 ~ 9:35

[2]前近代のネットワーク分析:日本の人名データベースの紹介

グラムリヒ=オカ・ベティーナ(上智大学国際教養学部教授)

発表資料はこちらPDF
9:35 ~ 9:50

[3]国立国会図書館のOCR事業及びテキストデータを活用したサービスについて

青池 亨(国立国会図書館電子情報部電子情報企画課次世代システム開発研究室司書)

発表資料はこちらPDF

休憩(15分)

10:05 ~ 10:20

[4]大量の板本を効率的に翻刻する~「武鑑全集」の経時的差分翻刻による江戸200年参勤交代データセットの構築

北本 朝展(ROIS-DS 人文学オープンデータ共同利用センター長)

発表資料はこちらPDF
10:20 ~ 10:35

[5]『みをつくし』プロジェクト:AIくずし字認識研究の展開

カラーヌワット・タリン(Research Scientist at Google Research)

発表資料はこちらPDF
10:35 ~ 10:55

[6]古典籍データ駆動研究センターの目指すもの

菊池 信彦(国文学研究資料館古典籍データ駆動研究センター特任准教授 )

発表資料はこちらPDF
10:55 ~ 11:00

閉会挨拶

神作 研一(国文学研究資料館副館長)

令和3(2021)年度

第7回日本語の歴史的典籍国際研究集会

第7回日本語の歴史的典籍国際研究集会

日時

令和3(2021)年11月11日(木)18:00~21:30

開催方法

オンラインシンポジウム(Zoom)+ YouTubeライブ配信

主催

大学共同利用機関法人人間文化研究機構 国文学研究資料館
チラシのダウンロードはこちらPDF
プログラム詳細

( )内はヨーロッパ中央時間(UTC+1)

総合司会:山本 和明(古典籍共同研究事業センター長)
17:30(9:30)

配信開始

18:00(10:00)

開会の挨拶

渡部 泰明(国文学研究資料館長)

18:05(10:05)

はじめに

⼭本 和明(古典籍共同研究事業センター長)

18:10〜19:25
(10:10〜11:25)

第1セクション 「デジタル社会における教育の取組等」

  1. 古典教材の未来を切り拓く!

    ⼭⽥ 和⼈(同志社⼤学⽂学部教授)

    発表資料はこちらPDF

    小中高・高専・大学等の枠組を超えた実践的教育研究を試みる同志社大学古典教材開発研究センター・古典教材の未来を切り拓く!研究会(コテキリの会)の活動から見えてきた和本やくずし字を用いた古典教材の可能性と課題を探る。

  2. 「データ駆動型人文学」の担い手を探る

    永崎 研宣(⼈⽂情報学研究所主席研究員)

    データ駆動型人文学という言葉が学術政策の文脈で注目を浴びるようになりつつあるが、これを「誰が担うのか」という点は必ずしも明確ではない。本発表では、人文情報学の教育を通じた担い手の育成と今後の見通しについて報告する。

  3. くずし字を読むエッジAIの開発

    早坂 太⼀(豊⽥⾼専情報⼯学科教授)

    都合により、本発表のアーカイブ動画は非公開とさせていただきます。ご了承ください。

    発表資料はこちらPDF

    本発表では、版本のみならず写本のテストデータに対しても高精度な認識を行うことができる深層学習モデルをRaspberryPiを始めとする小型コンピュータに実装した、くずし字を認識を行うことのできるエッジAIシステム開発について述べる。このシステムはインターネットへの接続を必要としないため、小中学校での教育や古民家での調査などの場面で手軽に利用できる。

    質疑応答
19:25〜19:40
(11:25〜11:40)

休憩

19:40〜21:05
(11:40〜13:05)

第2セクション具体的実践等の取組

  1. ドイツにおけるデジタル・ヒューマニティーズと日本学における応用

    ミヒャエル・キンスキー(ゲーテ⼤学フランクフルト・アム・マイン⽇本学部教授)

    発表資料はこちらPDF
  2. 古典と地域を結ぶICT活用教育の可能性
    -楽しみながら学ぶ「木曽路双六」・「ことわざ絵合わせ」-

    速⽔ ⾹織(信州⼤学人⽂学部准教授)
    宮本 祐規⼦(⽩百合⼥⼦⼤学准教授)
    中村 綾(愛知学院⼤学教養部講師)

    発表資料はこちらPDF

    ICT教育及びGIGAスクール構想に資する学習ツール開発に取り組む共同研究を紹介する。本発表では、主として、楽しみながら古典的知識を学ぶことを目的とし、双六やカルタといった伝統的遊具による主体的・対話的な学習を実現しうる教材展開について、報告したい。

  3. 江戸時代の占い本『晴明歌占』を用いたアクティブラーニングと和歌占いの普及

    平野 多恵(成蹊⼤学⽂学部教授)

    発表資料はこちらPDF

    成蹊大学のゼミでは、和歌占い文化をリバイバルし、多くの人に楽しんでもらうことを目指し活動している。その内容を紹介しながら、古典を題材とするPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)の可能性を論じる。

質疑応答

ディスカッサント
中村 ともえ(静岡⼤学教育学部准教授)

21:05〜21:25
(13:05〜13:25)

第3セクション データ駆動による可能性

データ集積とドメイン知識:万葉集を例に

海野 圭介(国文学研究資料館⼤型研究計画設置準備室⻑)

発表資料はこちらPDF
21:25(13:25)

閉会の挨拶

⼊⼝ 敦志(国文学研究資料館副館長)

21:30(13:30)

閉会

令和2(2020)年度

第6回日本語の歴史的典籍国際研究集会

日時

令和2(2020)年11月7日(土)

開催方法

オンラインシンポジウム(Zoom)+YouTubeライブ配信

主催

大学共同利用機関法人人間文化研究機構 国文学研究資料館
チラシのダウンロードはこちらPDF
プログラム詳細
総合司会:総合司会:山本和明(古典籍共同研究事業センター長)
12:30

配信開始

13:00

開会の挨拶

ロバート キャンベル(国文学研究資料館長)

13:10~14:10

セクション① 「NW事業から後継計画へ」

  1. 「歴史的典籍NW事業の現在と未来ー画像集積からデータ駆動へ」

    海野圭介(国文学研究資料館研究主幹・後継計画準備室長)
    宮本祐規子(国文学研究資料館 古典籍共同研究事業センター特任准教授)

    発表資料(1)はこちらPDF 発表資料(2)はこちらPDF
  2. 「上紙摺と上製本―合巻研究への高精細デジタルマイクロスコープの利用―」

    佐藤 悟(実践女子大学文学部国文学科・教授)

    19世紀の草双紙の特徴は文化期には上紙摺、合巻、黄表紙という三つの体裁があり、文政期にも上製本、合巻、黄表紙という体裁が並存する。高精細デジタルマイクロスコープによる観察により、合巻研究の新しい側面を切り開く可能性があることを報告したい。

14:10~14:15

休憩(5分)

14:15~15:15

セクション② 「「デジタル源氏物語」の構築と展開」

  1. 田村 隆(東京大学大学院総合文化研究科准教授)

    都合により、本発表のアーカイブ動画は非公開とさせていただきます。ご了承ください。

    発表資料はこちらPDF
  2. 中村 覚(東京大学史料編纂所前近代日本史情報国際センター助教)

    発表資料はこちらPDF
  3. 中村 美里(東京大学附属図書館情報サービス課資料整備係長)

    発表資料はこちらPDF
  4. 永崎 研宣(一般財団法人人文情報学研究所主席研究員)

    東京大学総合図書館所蔵『源氏物語』の公開を機に、教員及び図書館職員有志により構築した「デジタル源氏物語」について、文学研究上の意義や可能性、システム技術面の特徴などのほか、本文研究プラットフォームを目指した今後の展開方針についても述べる。

15:15~15:20

休憩(5分)

15:20~16:20

セクション③ 「若手研究者からの提案:テキストマイニング-KH Coderを中心に」

  1. 人文学における探索的データ分析

    小風 尚樹(千葉大学人文社会学系教育研究機構助教)

    発表資料はこちらPDF

    大量のデータにアクセスできるようになった今、たとえばテキストを精読する以外のアプローチが可能になってきている。全体の中のどの部分を選択して精読するのか、その選択を手助けする探索的データ分析という考え方について考察する。

  2. 公文録目録の量的分析 ─明治14年頃の財政を中心に─

    福田 真人(東京大学大学院人文社会系研究科博士課程)

    発表資料はこちらPDF

    本報告では国立公文書館にある明治期の行政文書である「公文録」の目録データを計量文献学的に分析する。特に明治14年頃の経済政策に対する含意を、文献学的分析と対照しつつ検討し、末期大隈財政の特質について論じる。

  3. 中国・北魏の石刻史料(墓誌)を用いたKH Coderによる分析と文化的社会集団の復元

    大知 聖子(名城大学理工学部助教)

    発表資料はこちらPDF

    中国・北魏(4~6世紀)における石刻史料(墓誌)の中の銘辞という韻文形式の漢文に対し、MeCab に自分が作成した辞書をコンパイルし、MeCab を KH Coder に入れ、テキストマイニングを行った。抽出した語彙に基づき共起ネットワーク図を作成し、各集団間の文化的な影響関係を復元する。

16:20~16:50

総括コメント

司会進行:山本和明・海野圭介(国文学研究資料館)

16:50

閉会の挨拶

山下 則子(国文学研究資料館副館長)

17:00~18:00

日本古典籍研究国際コンソーシアムについて

国際研究集会閉会後、同配信により「日本古典籍研究国際コンソーシアムについて」を開催いたします。プログラムは次のとおりです。

  • コンソーシアムの設立趣旨
  • コンソーシアムの活動計画
  • 参加機関によるラウンドテーブル

令和元(2019)年度

第5回日本語の歴史的典籍国際研究集会

日時

令和元(2019)年11月15日(金)

場所

国文学研究資料館2F大会議室(東京都立川市緑町10-3)アクセス

主催

大学共同利用機関法人人間文化研究機構 国文学研究資料館
チラシのダウンロードはこちらPDF 発表資料集PDF
プログラム詳細
総合司会:山下 則子(国文学研究資料館副館長)
11:00

開会の挨拶

ロバート キャンベル(国文学研究資料館長)

11:05

機構挨拶

佐藤信(人間文化研究機構理事)

11:10

趣旨説明

齋藤真麻理(国文学研究資料館教授)

11:15~11:55

研究報告 「総合書物学は何を目指すのか」

谷川惠一(国文学研究資料館教授)

残されたことばを手がかりとしてギリシャなどの古典古代の文明を探究してきたphilologyというヨーロッパの人文研究のディシプリンと日本が出会ったのは明治になってからです。最初は「博言学」と訳されたphilologyに「文献学」ということばを対応させたのは上田敏で、一八九六年のことでした。新村出の回想などから、この頃、東京大学やその周辺でphilologyへの理解と関心が一定のひろがりをみせていたことが推定されます。

「文献学」という訳語が与えられたphilologyは、東京大学の国文学科の教授である芳賀矢一によって本居宣長らの国学の伝統と重ね合わされ、明治時代の終るころに日本文学研究を中心とする「日本文献学」という総合的な学問の構想へとたどりつきます。今日でも日本文学研究者がときどき文献や文献学ということばを用いるのはこうした歴史があるからですが、村岡典嗣や和辻哲郎などが展開した思想史・文化史における研究をはじめ、新村出の日本語や日本文化についての幅広い仕事も含め、philologyの日本への移入はけっして日本文学研究にとどまるものではありませんでした。「文献学」ということばを避けた和辻は、philologyに「文学」ということばをあててphilologyを実践していたのです。

「日本文献学」という総合的な学問への構想がついえ、「文献学」という名称とともに日本文学研究という領域に局限されることになったphilologyは、ナショナリズムを前面に掲げつつ、選ばれた古典作品を対象としたテキスト・クリティークへと収斂していくことになります。第二次世界大戦後には、西郷信綱らを先頭に、そうした研究のあり方は非人間的な営みだとして激しく批判されます。今日の日本文学研究者は、もはや「文献学」を国学と直結させることはありません。わたしたちは、「文献学」ということばによって、池田亀鑑の源氏物語の本文批判などを思い浮かべ、それを写本で伝わった古典作品を研究するための基礎的な一方法と理解しています。

こうした地味な響きをもつ「文献学」ということばに慣れきったわたしたちには、ポスト構造主義やポスト・コロニアリズムといった最新の研究モードの旗手であったポール・ド・マンやエドワード・サイードたちが異口同音に「文献学」への回帰を唱えたことは、驚きであり、理解しがたいものでした。意味を産出する前のことばの運動に直に向き合うことを求めたかれらの「文献学」とわれわれの「文献学」との落差は、philologyと「文献学」のそれであり、われわれはもういちどphilologyに溯って考え直してみる必要があります。

philologyは、ことばと意味、対象となることばやその他の資料とそれらにもとづく研究との間にある隔たりを認識し、両者をつなぐための適切な技法について思いをめぐらせる営みでした。philologyを異なった言語をまたぐ翻訳とむすびつけたフランスの言語学者ジョルジュ・ムーナンの独創的な主張は、philologyの核心をついています。いいかえれば、philologyによって、意味と切断されたことば、研究の対象となる資料そのものがはじめて見出されたのであり、それらを収集し、整理・比較し、精読していくことがphilologyの基本的な任務でした。山口昌男による、既成の学問の分野にとらわれない「知識の存在形態(収集・保管・創造)の一つとしての学問」(『本の神話学』)の要請も、サイードなどとはまた違った意味でのphilologyへの回帰であるとみなすことができるでしょう。philologyがそうであったようなこうした「通分野的」(山口)な知の営みに、日本文学研究に局限された歴史をもつ「文献学」という名称はふさわしくありません。

総合書物学とは、日本近代におけるphilologyの移入を批判的にとらえかえし、philologyを基盤として人文学の新たな「知識の存在形態」を模索していく試みです。

幸田露伴の『水上語彙』(一八九七年)や柳田国男の「史料としての伝説」(一九二五年)などは、日本文学研究以外の領域においてなされた、わたしたちの試みにとって貴重な先例です。これらについて紹介しながら、来るべき総合書物学の姿をさぐってみたいと思います。

今日web空間の中に出現しつつある膨大な資料=書物は、その圧倒的な量によって人文学研究の細分化に拍車をかけていますが、既成の知の枠組みに囚われない新たな研究を産み出すための有力な母胎ともなりうるでしょう。そのためのプロセスを考え、さまざまに試みていくのが総合書物学の果たすべき一つの役割です。

11:55~13:10

ランチセミナー(研究者交流会)

13:10~14:00

基調講演 「源氏流いけばな-源氏物語といけばなのコラボレーション-」

岩坪健(同志社大学教授)

源氏流いけばなとは、十八世紀後半に江戸で千葉龍卜が始めた華道の一派である。源氏流の「源氏」には、二つの意味が込められている。一つは清和源氏の流れをくむ足利義政を祖と仰ぐこと、もう一つは源氏物語五十四帖にちなみ、巻ごとに五十四通りの活け方を秘伝にしたことである。いわば源氏物語といけばなとのコラボレーションである。

いけばなの歴史において、初めて源氏物語を取り入れたことで世間の注目を浴び、一時は一世を風靡した。しかしながら初代(千葉龍卜)の後は二代め(千葉龍子)で断絶して、十九世紀になると廃絶したため、資料も散逸して現存していない、というのが通説であった。

ところが実際には子孫は帰郷して家業を伝承し、また先祖伝来の秘伝書も保管していたのである。あいにく小著『源氏物語の享受―注釈・梗概・絵画・華道』(和泉書院、二〇一三年)にまとめた際には、千葉家(兵庫県赤穂市明源寺)の蔵書は拝見できなかった。その後、二〇一五年に赤穂市立歴史博物館において源氏流いけばな展が開催され、龍卜自筆本など貴重な資料が初めて披露された。本稿では新資料をもとに、今まで解釈できなかった点を明らかにしたい。

14:00~14:15

休憩(15分間)

14:15~15:55

パネル発表 国際共同研究「中近世日本における知の交通の総合的研究」

概要説明

ダヴァンディディエ(国文学研究資料館准教授)

中世末から日本の様々な知識が限られていた社会層より広範な享受層へと伝播され、多様な変容を遂げ、新たな日本文化を形成するに至った。その過程は一方的な――つまりエリートから庶民への――伝授というよりも、活発な「知の交通」であった。歴史的典籍を活用し、これらの知の変容の具体相を解明し、日本の新しい「知」の誕生の際に起こった思想的、文学的や社会的な変化に光を浴びせるのが、国際共同研究「中近世日本における知の交通の総合的研究」の目標である。本共同研究ではフランス、オランダおよび日本から集まったメンバーが「文学」、「博物学」そして「仏教」という角度からその「知の交通」を考える。このうち、今回のパネルでは仏教という重要な側面について3名の発表者が論じる。中世前半の音楽、あるいは臨済宗特有の公案と悟りへの導き方といった様々な観点から、言葉のみでは伝えきれないものがどう扱われていたかを紹介する。かつての「知」を広めながら、かつてなかったものが現れたこと、その文化史上の位置づけについて考えてみたい。

  1. 「〈直指人心〉から〈曲指人心〉へ」

    芳澤勝弘(花園大学国際禅学研究所顧問)

    禅宗は菩提達磨によって中国で始まったのだが、後世の禅家はその淵源を釈尊に求めた。生涯の最期に釈尊はもはや言葉で説くことをやめ、ただ一本の花を手にして弟子たちに示した。誰もその意味を理解できなかったが、ただひとり摩訶迦葉だけが理解し微笑した。この「拈華微笑」を禅の発端としたのである。その本質は以心伝心、不立文字である。そして達磨の宗旨は直指人心、見性成仏の語に集約される。以来、中国の禅宗では、不立文字の本質を「一機一境」(棒喝)という「行為」で示すことが行われたが、同時にまた不立文字を文字によってあらわすという、ある種の矛盾に満ちたことも繰り返し行われて来た。その総体が公案と呼ばれるものである。宋代になると、説明不可能な禅の核心について、既成の文学作品を援用することによって、その周辺情報を説明することも行われるようになった。

    このような禅が日本にも将来されることになった。禅とは言葉では説明できないところを、いかに言葉で表現するかという運動でもあった。その事情が日本では「心とはいかなるものを言うならん、墨絵に描きし松風の音」と表現された。不立文字に対する語に「曲指人心立文字」というものがある。もともとは言葉に堕することを批判したものだったが、言語の妙用を方便とすべき立場を表わすことにもなった。

    江戸時代になって、庶民に至るまで文字を解する社会が実現し、禅は大きく変質した。この時代に登場したのが白隠禅師である。彼は文字だけではなく、絵画というデヴァイスをあわせ用いることによって「墨絵に描いた松風の音」をさらに斬新な方法によって伝えることに成功したのである。言葉に絵を加えることによって「曲指」という方便が、さらに新たな段階に達したのである。

  2. 「中世の仏教と音楽―書物という“知”を軸に」

    猪瀬千尋(名古屋大学大学院人文学研究科附属人類文化遺産テクスト学研究(CHT)センター研究員)

    中世の音楽において、「仏教からあふれでた“知”」はどのように作用したか、書物をキーワードに考える。

    後白河院(1127-1192)が『梁塵秘抄口伝集』で「声わざの悲しきことは、我が身崩れぬるのち、とどまることのなきなり」と述べるように、古代中世の人びとにとって、音楽を後代に残すことは大きな課題とされてきた。奇しくも後白河院の音楽の両腕と言える藤原師長(1138-1192)と守覚法親王(1150-1202)によって音楽の体系化はなされる。師長は琵琶譜『三五要録』、箏譜『仁智要録』を編み、それまでの雅楽の流派を統合する。対照的に密教の流派を統合し、御流を称したのが守覚法親王で、御流についての儀礼をまとめた書物が『紺表紙小双紙』である。一方で、守覚は音楽にまつわる知識口伝を集成し『糸管要抄』を作成した。現在は逸文が残るのみであるが、音楽者の系図など、はじめて統合的に音楽が語られた書物であった。二人の対比は、あるいは地方歌謡である風俗(ふぞく)の楽譜化という点にも明白である。師長は雅楽のコードである楽琵琶譜に風俗をおこした。他方、守覚は声明のコードである博士譜を用い、風俗の伝授を多近久より受けた。

    こうした音楽における宮廷と仏教界の混交は、二人の時代より一世紀ほどのち、鎌倉時代後期にも見いだせる。西園寺実兼(1249-1332)は、それまでの雅楽の知識を整備し多数の書物をつくった。『妙音講式』など実兼によって改変された仏教儀礼テクストも存在する一方で、『音律事』という声明口伝にまつわる書物 も存在する。

    称名寺二世・剱阿(1261-1338)も注目されてよいだろう。いま剱阿が書写した音楽に関わる書物を列挙すれば『舞楽要録』『管絃音義』『音楽根源抄』など、音楽儀礼や仏教音楽思想の根底を理解するのに必須なものである。あるいは師長が著した『三五要録楽目録』が剱阿に手によって書写されていたことからは、「仏教からあふれでた“知”」が雅楽をも吸収しようとしていた痕跡を認めることができるだろう。

  3. 「近世初期の日本人が見た“公案”と“看話禅”-仮名法語を中心に」

    ダヴァンディディエ (国文学研究資料館准教授)

    中世末期から、他の宗派と同じように、禅宗が自身の教えを広く発信しはじめた。その最も象徴的な顕現の一つは禅の教えを分かりやすく紹介する仮名法語が多数に作成された事であろう。

    これらの仮名法語は禅の観点から簡略化された仏教の基本であって、よく読まれていた書物である。その教理的内容は単純化されているから、仏教研究者に高く評価される事はなかった。しかしながら、逆にそれだからこそ重視すべきである。単刀直入に大事な点をなるべく簡単に述べているからである。

    一方、禅――特に臨済宗――は理性で達せない悟りを目標としている。特に、悟りへの道を妨げる理屈を超えるために、公案を使用した修行(看話禅(かんなぜん))は必要不可欠だった。しかし、できるだけ分かりやすく書こうとする事と、論理を超える必要性とのあいだに一つの矛盾が生じるように見える。したがって、仮名法語における公案の問題を検討する事は、日本禅の歴史における――特に中世末期から近世までの――教えの普及に関する重要な点を照らす事になる。

    コメンテーター:堀川貴司 (慶應義塾大学附属研究所斯道文庫教授)

15:55~16:10

休憩(15分)

16:10~17:10

ラウンドテーブル-コンソーシアム構築に向けて-
テーマ:国際化する研究環境-人文学の場合-

司会:ロバートキャンベル (国文学研究資料館長)
登壇者:荒木 浩 (国際日本文化研究センター副所長)
クリスティーナ ラフィン(ブリティッシュ・コロンビア大学 アジア研究学科准教授)
ダニエル ストリューヴ (パリ大学教授)
張 龍妹 (北京外国語大学 北京日本学研究センター教授)

国文学研究資料館では2013年から「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」(略称:歴史的典籍NW事業)に取り組んできた。現在、その成果を維持し発展させるために「国際コンソーシアム」(仮称)の構築をめざし、来年度の発足に向けて検討を進めている。コンソーシアムでは、国内と海外の日本文学研究資源を保有する複数の機関との間で協定を結び、資源の共有や企画立案・実施等を進める上での有益な連携モデルを想定している。

日本文学研究資源は、図書・電子情報等を含む文字資料(いわばコンテンツ)と研究者・資料専門家・学生等によって形成される研究者コミュニティーとに分類することができるが、日本国内の学術環境においては、ICTの発展にともなって地域とディシプリンを超えた多様な共同事業が期待される一方、年々それらを達成するために必要な財源を確保することが困難の度合いを増している。しかし、単独では取り組むことが困難なテーマを、連携することによって計画から資金獲得までの流れを描き実体化させることが可能となる場合がある。また、人材育成を考える上でも、機関同士の連帯を通して大学院教育の充実や若手教員のスキル向上を図ることが考えられる。研究機関にとって重要なテーマが何かを協議し、各機関、または研究者同士の取り組みを促進させる相乗的な役割をこの国際コンソーシアムに期待したい。

国文学研究資料館では創設以来、海外での古典籍調査、在外研究者との共同研究、研究集会を通しての留学生育成等、グローバルなデータ収集とネットワーク構築を基盤事業として位置づけてきた。コンソーシアムはこれらの実績を基礎に、歴史的典籍NW事業から得つつある成果の伸展と活用を図り、いわば縫い目のない形で新たなグローバルネットワークの構築を志向するものである。

本ラウンドテーブルでコンソーシアムを取り上げるのは、まず理念として何を求めるべきか、その上で取り組むべき事業の具体的な輪郭が何か、について議論を深めるためであり、次に挙げる課題を突破口に、多角的な観点から語り合っていきたい。

  • ○新日本古典籍データベースの拡充と機能強化
  • ○共同研究をはじめとする海外での研究促進と成果発信
  • ○若手研究者・資料専門家への支援
  • ○ファカルティ・ディベロップメント及び教育プログラムの開発と強化
  • ○人文科学における評価指標に関する検討と発信

平成30(2018)年度

第4回日本語の歴史的典籍国際研究集会

日時

平成30(2018)年7月27日(金)~7月28日(土)(2日間)

場所

国文学研究資料館2F大会議室(東京都立川市緑町10-3)アクセス

主催

大学共同利用機関法人人間文化研究機構 国文学研究資料館
チラシのダウンロードはこちらPDF 発表資料集PDF
平成30年7月27日(金) プログラム詳細
総合司会:谷川惠一(国文学研究資料館)
13:30

開会の挨拶

ロバート キャンベル(国文学研究資料館長)

13:35

機構挨拶

平川南(人間文化研究機構長)

13:40

趣旨説明

齋藤真麻理(国文学研究資料館)

13:50

基調講演「聖語論(ヒエログロシア)から見た道元禅師の和漢言説」

ジャン=ノエル ロベール(コレージュ・ド・フランス日本学高等研究所)

道元の『正法眼蔵』は日本文学において最も人々の関心を引き続ける作品であり、さらには世界文学においても特異な位置を占めていると言い得るかもしれない。本作品をこのような位置へ至らしめたものは何であろうか。仏教に関心を持たない読者であっても、類いまれな言語的世界へ導かれるのはなぜであろうか。それは宗教性に起因するのであろうか、それとも他の何ものかの作用によるものであろうか。

道元の言語的世界の特質は、まず何よりも、その中国語と日本語の二元性にある。しかし、このような二元性は中世以来の日本仏教者にも見られ、道元のオリジナリティを説明するには全く不十分である。とはいえ、道元のバイリンガリズムには独特な味わいがある。中国においては宋代の口語が禅籍に使用されているが、道元はこれを初めて日本のテクストに導入した。これにより、宋代の口語をほとんど研究や習得の対象としていなかった伝統的な漢文体の中に、これらの表現が独自の地位を与えられたのである。道元における禅の白話(口語)文体は、単に新たなスタイルを導入したというに留まらず、彼が開いた新たな禅派の言語的指標の役割を果たすこととなった。「口語風の中国語」―この表現は、もともと禅宗における個人的な使用語彙であったと思しき語群を指すにはより相応しい表現であろう―を説法に頻繁に引用した道元の作品、とりわけ『正法眼蔵』は、ユニークで識別性の高い文体を獲得することとなった。

しかし、このいわば三次元的文体のみでは、道元の作品の豊穣性を説明し切ることはできない。『正法眼蔵』の説法が涸れることのない関心の泉となった最大の特質は、著者が三つの言語層を常に相互作用させた点に求められる。道元は訓読の多様性を巧妙に駆使し、天台教学に直接由来する論理とを組み合わせることによって、教条のあらゆる解釈学上の可能性を探った。その釈義の顕著な特徴は遡及訓読とでも称すべきもので、日本の訓読の技法を中国語に直接使用することである。この隠された訓読を見落とせば、道元の論旨を誤解する恐れは高い。

本講演では『正法眼蔵』の「諸法実相」と「無情説法」、および『永平広録』から同じく「無情説法」の具体例を取り上げ、道元の言語そのものがどこまで彼の思想の延長であるのか、考えてみたい。

14:50

休憩(30分間)

15:20

パネル1「津軽デジタル風土記 ナビゲーションからコミュニケーションへ」

概要説明

木越俊介(国文学研究資料館)

津軽デジタル風土記は、従来、一部の研究者などに閉ざされていた史資料のデジタル化と公開によって、より多様な層のユーザーに開かれたプラットフォームを構築し、活用するプロジェクトである。

デジタル資料を公開することは大きな一歩ではあるものの、それのみでは死蔵されてしまうおそれがある。そこで当面は、コンテンツの充実をはかるとともに、その魅力を発信し、そこにどのような活用の可能性があるかのモデルを示す〈ナビゲーション〉が必要となる。

本プロジェクトでは、デジタル資料の活用の実践として、アカデミズムにおける成果や知見などを、津軽における新しいツーリズムに結びつけるための複数の具体案をプロジェクトメンバーが提案し、現地のスタッフと共同で実現化に向けて走り出している。〈ナビゲーション〉が自ずと〈コミュニケーション〉へと発展する、そのための空間となり、結節点の役割を果たすのが、デジタル風土記の本質であると思われる。

  1. 報告1 「津軽を知り津軽を語ろう~津軽デジタル風土記への誘い~」

    瀧本壽史(弘前大学)

    津軽を知り、さらに深く掘り下げていきたい、そして津軽を語り、伝えたい。デジタル画像を活用しながら、その手がかりを地域住民自らが得られる学びの場を展開する。

    まず、津軽の全体を眺めてみよう。近世の津軽はどんな枠組みの中にあったのだろうか。弘前藩は内から外へ、外から内への出入り口を九つ設定した。これを九浦制度という。正保の国絵図「陸奥国津軽郡之絵図」を見れば南は秋田藩、東は盛岡藩と山を境に接していた。人々は海沿いの街道を通って藩境を超えた。そこには一つずつ関所が置かれた。藩境以外、弘前藩領は海と接していた。北に向かう航路が朱線で多数描かれている。そこに七つの指定港が設定された。合わせて九つの出入り口、「九浦」となる。弘前城下に次いで最重要の町である。なぜそこが九浦に指定されたのか、どんな役割が課せられたのか。

    その九浦を「九浦外町絵図」のデジタル画像上で歩いてみよう。九浦を踏破したときどんな津軽が見えてくるのだろうか。さらに九浦の中の一つ、例えば鰺ヶ沢湊に「東奥津軽山里海観図」で入り込んでみる。生き生きとした人々の姿や祭りの様子が見える。そして鰺ヶ沢湊の繁栄の背景を史書「邦内事実秘苑」で追っていく。

    津軽を語る多くの資料がデジタル空間で体系的に結びついたとき、資料の持つ価値の多様性とともに、多様な津軽、それぞれの津軽が見いだせる。人々がそれぞれの津軽をもって津軽を巡るとき、資料は地域資源・観光資源ともなってくる。これまでの市民講座を発展させ、受動的で一回きりでない、主体的で、継続的な場の展開、さらには津軽とコミュニケーションが図れる場の創造を目指す。その取り組みの一端を報告する。

  2. 報告2 「城下町弘前を歩く―津軽関係資料とその活用―」

    渡辺麻里子(弘前大学)

    文献観光資源学として実施する「津軽デジタル風土記」の事業は、津軽の歴史文化資料を広く知ってもらうとともに、さらに観光に活用するという目的で行うものである。日本における観光と言えば、以前は、著名な場所を短時間で数を多く効率良く訪ねることが重視されていたが、最近では、たとえ見学地は少なくても、また誰もが知っているような著名な場所ではなくても、その場所にまつわる歴史や文化を深く学びながらゆっくりじっくり見学することの方が重視されている。見学地では、その場所にまつわる歴史や文化、言い換えればその場所の「物語」を、より深く学び、歴史をリアルに感じることが重視されているようである。

    本発表では、「津軽デジタル風土記」で扱う文献資料を活用しつつ、城下町弘前を巡る旅の提案とその可能性について論じる。城下町弘前には、弘前城をはじめとして、多くの観光名所が存在しているが、有名無名にかかわらず、その場所について、訪問者が深く歴史や文化を学び、物語を感じ取れるような観光を考えてみたい。

    コースには様々な案が考えられるが、今回は試験的に、歴代藩主の記事が多く記される資料を用いながら、歴代藩主にゆかりの場所、寺社をめぐる旅を提案する。用いる資料としては、津軽デジタル風土記の対象書目から、藩政時代の歴史や文化が様々に記されている資料として『津軽一統志(つがるいつとうし)』や『封内事実秘苑(ほうだいじじつひえん)』、『津軽歴代記類(つがるれきだいきるい)』、『津軽編覧日記』、『奥富士物語』などを用いる。また見学対象地としては、岩木山神社、高照神社(たかてるじんじゃ)、長勝寺、革秀寺、報恩寺、袋宮寺、最勝院などが挙げられる。

    「津軽デジタル風土記」の資料を活用しながら、歴史・文学・宗教の学びを深め、津軽を堪能できること、文献資料が観光資源になることを目指した提案を試みてみたい。

  3. 報告3 「古典籍のデジタル化による温故知新―武者絵・北斎・ねぷた絵」

    木越俊介(国文学研究資料館)

    ここでは津軽デジタル風土記における試みの一つとして、津軽のねぶた(ねぷた)に多く使用される武者絵や北斎を素材に、デジタル画像を通して、温故知新に結びつけるプロジェクトについて発表する。発掘・再発見・発信の三つの柱に沿って温故知新を具体化していく。

    〈発掘〉

    明治から昭和にかけての弘前ねぷた絵の名人である日本画家・竹森節堂旧蔵の古典籍(弘前市立博物館蔵)などをデジタル化し、地域の遺産(レガシー)として共有する。その上で、現在のねぷたの制作現場における素材、また地域の子どもたち対象のねぷた教室における教材などとして活用する。

    〈再発見〉

    江戸時代の武者絵の「画題」のあり方やバリエーションについて、デジタル画像を通して学ぶ場をもうけ、理解を深める。

    〈発信〉

    将来的には、デジタル画像にインスパイアを受け、現在のねぷた絵の制作者と共同で新たなねぷた絵の創出を目指す。

    こうした活動により、津軽内においては地域における共有遺産の価値を再認識し、さらには新たな創造につなげることによって外部に発信していくことを目指す。

17:30

レセプション(会費制)

平成30年7月28日(土) プログラム詳細
総合司会:青田寿美(国文学研究資料館)
9:30

受付開始

10:00

パネル2「比較書誌学の観点による日本古典籍の特質と問題」

概要説明

落合博志(国文学研究資料館)

日本の古典籍については、これまで様々な研究が積み重ねられてきたが、多くは個別的な問題の考察であり、国際的な観点から日本の古典籍の一般的問題について考察することはあまり行われてこなかったように思われる。そのような状況を多少とも補うべく、共同研究「日本古典籍の比較書誌学的研究」を構想し、研究を進めているところである。日本の古典籍では普通に見られるが他国の古典籍においてはそうではない事象(またはその逆の事象)は何か、その違いはなぜ生じたか等々、中国や朝鮮、あるいはヨーロッパなど、長い書物の歴史を持つ地域の典籍と比較することを通して浮かび上がってくる日本古典籍の特質と問題について考えたい。今回は、手始めに日本の古典籍にも大きな影響を与えた中国及び朝鮮の古典籍との比較を行う。

1人目の報告者の入口敦志教授は、日中韓の袋綴(線装)刊本を取り上げて、様式の相違やその背景等について検討するとともに、日中韓の書誌学用語の違いを考察する。2人目の報告者の陳捷教授は、中国古典籍の研究者としての立場から、日本と中国の古典籍の共通点と相違点、日本古典籍の特徴とその背景などについて考察する。

限られた時間ではあるが、日本の古典籍を国際的な視野から観ることで、日本古典籍について考える上での一つの問題提起になればと願うものである。

  1. 報告1 「日中韓刊本の様式について」

    入口敦志(国文学研究資料館)

    日中韓の古典籍の刊本の多くは、中国で発明された「線装本(袋綴)」の形式をとることで共通している。しかし、利用できる材料や道具、文化的背景によってそれぞれの国における刊本の様式には違いがある。そのことを簡単にまとめるとともに、日中韓の書誌学の用語の違いを考察する。更に、書誌学用語の英訳についても言及してみたい。

  2. 報告2 「比較書誌学の立場からみた日本古典籍:中国古典籍との比較を通して」

    陳捷(東京大学)

    日本の古典籍は中国、朝鮮半島の書物文化の影響を受け入れながら誕生し、また、長い歴史のなかで、独自の文化環境において、独特な特徴を形成されていた。国際的な観点からみて、日中韓三国の古典籍は共通性がありながら、それぞれの独自性も見られると思われる。今回の発表においては、中国の古典籍を研究する研究者が日本の古典籍に接するときに感じたことから出発して日中両国の古典籍の共通点と相違点について考察し、比較書誌学の立場から日本古典籍の特徴について分析を行い、さらにそれらの特徴の社会的、文化的な背景の解明を試みしてみたい。

10:55

休憩(15分間)

11:10

研究報告「画像解析技術の進展と歴史的典籍への展開」

司会

松田訓典(国文学研究資料館)

  1. 報告1 「画像認識の歴史と深層学習」

    佐藤真一(国立情報学研究所)

    計算機による画像認識の研究は50年以上検討されているが、長らく顕著な進展が見えなかった。それが、ここほんの数年で、特に深層学習の出現により、画像認識の精度が大幅に向上し、様々な応用が検討されるようになってきた。本講演では、画像認識研究の歴史と深層学習の出現を振り返り、できるようになったこと、まだできないこと、新たに発生した問題等について議論したい。

  2. 報告2 「古典籍に対する画像検索」

    松井勇佑(国立情報学研究所)

    本稿では、古典籍画像に対する画像検索システムを提案する。近年、コンピュータビジョン技術の発展が著しい。画像認識や画像検出といった技術は特定のタスクでは人間の判断力を上回ったと報告されており、また画像生成やキャプション生成といった新たな応用技術が日々提案されている。

    これらの近年の技術発展は結果が印象的だというだけではなく、誰でも簡単に技術を利用可能である点に特色がある。すなわち、共通の計算機資源(GPU)、共通のフレームワーク(各種深層学習ライブラリ)、公開コードを用意すれば、誰でも各技術の結果を再現することが出来る。

    このようなコンピュータビジョン技術の新たな適用先に古典籍資料がある。これまで古典籍資料は主として人手で管理・解析されてきた。もしコンピュータビジョン技術を古典籍の解析に用いることが出来れば、これまでに知られていなかった新たな解析が可能になるかもしれない。

    本稿では、コンピュータビジョン技術を古典籍資料へ適用する第一歩として、古典籍への画像検索について、国立情報学研究所と国文学研究資料館との共同で行われている取り組みを紹介する。大量の資料を前にしてもっとも基本的な操作は検索である。本稿では古典籍に対する画像ベースの検索の第一歩として、スケッチ検索およびサンプルベース検索のシステムを紹介する。これらの画像ベースの検索が進めば、「ある日本の古典籍資料とタイの古典籍資料が画像的に類似していることを発見し、新たな仏教伝来のルートが発見される」といった人文学上の新発見につながる可能性がある。本稿では萌芽的な内容を報告するが、本稿を足がかりにして、より発展的な議論が出来れば幸いである。

12:10

休憩(65分間・昼食)

13:15

パネル3「古典芸能における身体―ことばと絵画から立ち上がるもの―」

概要説明

山下則子(国文学研究資料館)

「古典芸能における身体―ことばと絵画から立ち上がるもの―」の目的は、日本古典籍に表現されている身体性に注目し、日本文化の身体性の問題に多方面から迫ることである。

日本古典籍の中で、最も多く残っているのは、江戸時代の庶民対象出版物である。しかし、それらは永らく日本では研究の対象とはされてこなかった。また、江戸時代出版物の多くは、芸能からの影響があり、絵画的要素が強いのであるが、それらも日本では研究の対象とはされてこなかった。

身体表現に関わる日本古典籍は、万国共通の理解と興味を得るものであり、挿絵が豊富に存在する日本古典籍の新しい魅力を世界に向けて発信する。

  1. 報告1 「近松門左衛門の時代浄瑠璃における身体性の問題-『酒呑童子枕言葉』を中心に」

    ボナヴェントゥーラ ルペルティ(ヴェネツィア カ・フォスカリ大学)

    発表時にマイクトラブルが発生し、発表の前半部分の音声が録音されなかったため、申し訳ありませんが動画配信を取りやめております。

    近松門左衛門の浄瑠璃の中で、酒天童子伝説を扱ったものは2曲ある。宝永6(1709)年初演と推定される『酒吞童子枕言葉』と、享保3年(1718年)初演の『傾城酒吞童子』である。本発表では、初代竹本義太夫(筑後掾)による竹本座上演の『酒呑童子枕言葉』に注目して、近松の浄瑠璃に現れる身体を考えてみたいと思う。

    『酒呑童子枕言葉』は、酒吞童子伝説の御伽草子や謡曲『大江山』などを典拠としているが、以下のようにより複雑なプロットになっている。

    1段目―源頼光の家来渡部綱が都の羅生門で出会った鬼の腕を切り取り、鬼に腕を奪い返される、羅生門(謡曲『羅生門』)と茨城(渡部の綱)の伝説。

    2段目―三の君の代わりに花山院の庵室に参上した侍女右近を恨む弘徽殿の霊が現れ、安盛の陰謀と酒吞童子が三の宮を奪ったことを告げる劇的な場面。

    3段目―武士の加藤兵衛と広文と二人の娘、横笛とことぢの悲劇が展開されるなかで、平家重代の宝刀伝説(平維茂、謡曲『紅葉狩』、戸隠山鬼神退治)。

    4段目・五段目―酒呑童子(頼光と四天王、謡曲『大江山』)の鬼退治譚。

    近松の作品は頼光と四天王をめぐる諸伝説、武勇談を取り入れ、一貫した纏まりのよい粗筋に仕立てている。

    特に、本浄瑠璃では酒呑童子は悪鬼として頼光たちに退治されるが、謡曲『大江山』にある鬼への同情を更に発展させ、人間から鬼となってしまった主人公酒呑童子の悲哀を深く掘りさげるところに重点を置いている。他方、交換されたり、身替わりになったり、さらわれたりする人間(女性)の悲劇も一つの主題といえる。

    先行作(新古典籍デタベース参照)との関係を参考にしながら、 近松が近世的な感覚による、能などにはないような残虐な場面、残酷な描写を前面に出すが、人形(劇)に適応した酒吞童子の物語にどのような身体性が認められるか吟味したいと思う。

  2. 報告2 「話芸における身体」

    マティルデ マストランジェロ(ローマ サピエンツァ大学)

    資料の権利などの理由から、動画の一部について「ぼかし」を入れておりますので、予めご了承願います。

    このテーマを研究するにあたって、二つのアプローチが考えられる。
      一 演者の身体、仕草。
      二 演目における身体の描写、存在。

    一 日本の古典演芸の一つである話芸には、身体を使用した独特な仕草というものがある。演者のパーフォーマンスにおいては、ジャンル、時代、流派によって、身体の動きなどが異なっている。仕草は、話を語る言葉と同様に重要で、このジャンルの特徴でもある。演者が使う道具も様々で、それによって仕草による表現も異なる。

    二 演目に現れる身体の描写も分析の対象とする。演者は、身体の一つの要素である声で、登場人物を描写し、彼らの身体を聴衆に想像させる。様々な人間のタイプを演じ分ける方法、どのような言葉が扱われているかを分析する。

    以上の問題を、資料館DB収蔵の『春色三題噺』などを取り上げて、具体的に考察したい。

  3. ■報告3 「謡曲における身体と季節 ー 植物の精霊物をめぐってー」

    クラウディア イアッゼッタ(ナポリ大学オリエンターレ)

    本研究のテーマは植物の精霊が登場する謡曲の季節感である。謡曲における自然描写は、和歌の世界の影響を強く受けており、「二次自然」という実際の自然とは異なる理想的な自然であるのが今日では常識となっている。また、植物の精霊は、謡曲の舞台では能役者を通して現れる。そのため、身体というものが非常に重要になってくる。本研究では、擬人化された精霊はいったいどのようなものか。また、それが舞台上に作り出された自然とどのように接触するかを中心に考察することとする。

    今回は第一歩として植物の精霊が登場する謡曲の概観を提示する。そのために、まず、謡曲における動植物を列挙し、引用された和歌を分析することで、舞台に描かれた自然環境について考察する。さらには、登場人物や場面が異なっていても、その謡曲は同じ構造のもとに作成されているという仮説を立てた調査も行いたいと考える。

14:45

休憩(30分間)

15:15

パネル4「漢文化圏におけるデジタル化:東アジアの漢文系データベースと人文学研究の最前線」

概要説明

合山林太郎(慶應義塾大学)
黄昱(国文学研究資料館)

今後の研究計画、資料の権利、技術の保全などの理由から、本パネルの動画については非公開とさせていただきます。内容については、発表資料などをご覧ください

発表資料へのリンク

東アジアでは、漢文によって、様々な事象が記されてきた。こうした漢文は、リンガ・フランカとして知識人の共通言語として機能するのと同時に、それぞれの地域の政治や文化と結びつき、独自の意義を持つに至った。今日、膨大な数の漢文で書かれた典籍や資料が東アジアの諸地域には残されており、これらの多くはデジタル化され、文学をはじめとする人文学研究に活用されている。

漢文系のデータベースは、多くの学問領域において、すでに十年以上の使用実績があり、様々な試みがなされてきた。たとえば、その設計について、近年、新しい潮流を確認できる。すなわち、この領域のデータベースでは、語彙検索型のものが、今日においても主流を占めるが、より書誌学的なアプローチに対応した、高精細画像を持つタイプのものも、近年、開発されてきている。

東アジアの漢文系データベースは、運営や提供の方法の点からも、様々な議論が可能である。具体的に述べるならば、有料、無料両方のデータベースがあり、また、公的機関によって維持されているものもあれば、私企業が運営するものもある。こうした状況について検討することは、デジタル化と社会との関係を考える上で、大いに役立つだろう。

このパネルでは、人文学研究の各領域を代表する研究者や、データベース構築の実績を持つ事業者の方をお招きし、議論する。すなわち、漢文系のデータベースの現状と課題について、グローバルな観点から概括し、今日の研究や教育における利活用の状況について分析を行い、その開発における国際的な連携の可能性について検討してゆく。

なお、本パネルでは、デジタル化の技術的側面について議論するだけではなく、人文学研究の”現場”において、データベースがどのように見られ、また評価されているかについても考えてゆくつもりである。

  1. 報告1 「漢籍デジタル化への提議―デジタルアーカイブ「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧」を例として―」

    住吉朋彦(慶應義塾大学附属研究所斯道文庫)

    デジタル化によって古典の普及を図ろうとする時、一つの方法として、近代以前の書籍そのものを、一組の画像データとして取り扱い、現在の所蔵機関ごとにそれを実施する策が取られる。しかし東アジアの書籍を扱う場合、その方式にはいくつかの問題を伴う。

    東アジアでは、中国を中心に、数千年にわたり書籍が作られ続けているが、この間、メディアの交替を数多く経験している。そこで中国の書籍は、或いはテクストのもつ元来の組織が、メディアの交替によって変更を餘議なくされ、或いは絶えざる変更に鑑み、テクスト内部の組織のみを基準として、書写印刷や装訂については柔軟に対応する習慣を培って来た。東アジアの書籍文化は、この柔軟さを様々に享受しながら、長く活況を呈して来たと言える。

    そこで、ある文庫のある漢籍をデジタル化したとして、原本についての記述である書誌を伴わなければ、有効な情報提供とは言えない。またその書誌は、長きにわたる変転の姿を、できる限り立体的に記述していることが望まれる。またそれは、広く流伝する書籍の一断面を捉えたに過ぎないから、各所に伝来する関連の書籍と照合し、相互に比較して個々の位置付けを得るべく、準備されていなければならない。

    発表者は、上記の認識に基づき、宮内庁書陵部図書寮文庫収蔵漢籍を扱ったデータベースを事例として、学術的な問題をいくつか指摘するとともに、東アジア的な柔軟な書誌記述の共有と、データベース連合への積極的な取り組みを意識するよう提唱したい。しかし、デジタル化という点を除けば、限られた範囲とは言え、近世後期の学者達が、人的ネットワークの中で発展させてきた書籍研究に、その基本的な要素がすでに含まれている。そこで今後は、その豊かな実りの上にデジタル化技術を適用し、学術文化の普及に取り組むことが良策であると主張したい。

  2. 報告2 「韓国における漢籍・古典籍のデータベース構築及びデジタル化―その現状と課題―」

    沈慶昊(高麗大學校)

    韓国人が漢文で残した文献は全23000種以上・59000巻余りに至るとされる(韓国古典翻訳院、2018年5月調査発表)。 韓国の漢籍(本報告では、韓国の漢文文献、及び、韓半島において書写・印刷された中国の書籍を指す)・古典籍に関しては、尹炳泰「韓國古書綜合目錄」(国会図書館、1968)が、初めて作られた総合目録ということになる。2000年以降、韓国情報通信部の支援により、国立中央図書館にて全国国公私立図書館所在の書籍目録資料を総合するデータベースの構築が始まり、この成果が現在、「韓国古典籍総合目録システム」(https://www.nl.go.kr/korcis/)として公開されている。

    そのテキストについては、従来は各機関や出版社がテキストの影印を散発的に出版していたが、現在は国公私立機関のデータベース(DB)構築やデジタル化が行われている。特に韓国人の漢文の文集に対しては、社団法人民族文化推進会が国家の支援を得て1986年から「韓國文集總刊」刊行事業を開始し、2005年までに正編350冊を刊行、その後さらに、2012年までの間に続集150冊を刊行した。収録文集は全1259種である。

    現在、政府による知識情報資源事業の主要対象の一つに「韓国学」が設定され、国家による前近代の書籍の情報の統合・発信が積極的に行われている。韓国の韓国古典籍目録は上述の国立中央図書館の韓国古典的総合目録システムで、韓国人の漢文文集のテキストは韓国古典翻訳院の韓国古典総合DB(http://db.itkc.or.kr/)で、それぞれ検索することができる。

    現在韓国では、各種研究機関等が韓国研究財団の韓国学土台事業や、韓国学中央研究院の委託管理する韓国学振興事業の支援を得て韓国学インフラ構築事業が行われ、なかでも、韓国における漢籍・古典籍をテーマ別・時代別にデータベース及びデジタル化する成果物が続々と出されている。ただ、その研究成果のデータベースとデジタル資料はユーザーインターフェースの機能が統一されておらず、全体を統括するサイトが構築されていない。また既存情報の誤りを修正するプログラムが十分に活用されていない。

    一方、海外に流出した韓国の漢籍・古典籍のうち、米国や日本の主要機関の蔵書は第一段階のデジタル化が一部行われたものの、今後事業を継続するかどうかは不透明である。また、韓国国内の中国書籍(中国で書写・印刷され、韓半島に渡来した書籍)についての目録調査は行われているけれども、実物調査によるデータベース及びデジタル化はまだ行われていない。さらに、中国書籍でも韓国人旧蔵本で海外に流出したものについては、実物調査はもちろんのこと、目録の整理すら行われていないのが現状である。

  3. 報告3 「台湾における仏教学のデジタル資料」

    廖肇亨(台湾中央研究院)

    今日、世界の仏教研究者に対して、台湾の学界がなした最も大きな貢献はおそらくcbetaデータベースの構築であろう。法鼓山をはじめとする中華電子仏典協会は、長い間、このcbetaを発展させ、漢訳仏典が広く利用されることに力を注いできた。現在、cbetaは『大蔵経』(中国部分)、『卍続蔵』、『嘉興蔵』、『歴代蔵経補輯』、『国家図書館善本仏典』、『漢訳南伝大蔵経』、『蔵外仏教文献』、『正史仏教資料類編』、『北朝仏教石刻拓片』などの資料を収録している。法鼓山以外では、仏光山、香光寺においても、継続的に各種の仏教資料のデジタル化を進めている。台湾は、世界における漢文仏典デジタル資料の中心地といっても過言ではないほど、世界中の仏教研究者に広く影響を与えている。本発表では、台湾の仏教界が行っている漢文仏教典籍のデジタル化における構築作業の状況および今後の展望について紹介する。同時に、中央研究院デジタル人文センターを例に、人文学におけるデジタル化作業の新たな潮流についても述べる。

  4. 報告4 「日本漢詩データベースを作成するためのOCRを含むさまざまなテクニック」

    板橋凱希(有限会社 凱希メディアサービス)

    弊社(凱希メディアサービス)では、これまで数多くの漢籍データベースを作成してきた。漢籍のデータベースを作るには、通常、(1)書籍をスキャンする、(2)スキャンした画像をカット(トリミング)する、(3)カットした画像をテキスト化する、という三つのステップが必要であり、その後に校正や難字入力などの作業が生じる。以下、日本漢詩文集のデータ化を例に、それぞれのステップで、弊社が実施している工夫を述べる。

    (1)の書籍のスキャンには、現在多く存在する高性能スキャナーを使用している。

    (2)のスキャンした画像をカットする工程では、OCRの識字効果を高めるため、画像の不必要な部分をカットすることが重要となる。通常、日本の古典籍を撮影すると、見開きの1枚の写真の中に、2枚の半葉の画像が入っている(例:1丁ウラと2丁オモテ)。この2枚の画像を、上下に分割する。このとき、頭注や匡郭外に記された注を保持する、柱の部分の記述(題名、丁数など)を除去する、匡郭が変形している場合でももれなく情報を読み取る、などの点に注意する必要があるが、古典籍の実際の版面は多様であり、手作業によるカットは非現実的である。弊社はどの部分を避け、どの部分が残すかを判別し、95%以上正確に図をカットすることができるツールを開発し、使用している。これにより、1分間に数千枚の図をカットすることができる。

    3)のカットした画像のテキスト化においては、漢詩文集の多くに付されている界線が、OCR処理の際、妨げとなる。これを避けるため、弊社では、文字の部分を囲み、その後にOCR処理を行う。これにより、スムーズにテキスト化することができる。

    OCR後には、校正作業が必要となるが、これは、一文字ずつ校正するのではなく、同じ文字と判別された画像について、一覧・一括処理できるツールを使い、校正を行っている。一文字ずつ校正するのではなく、同じ文字と判別された文字であれば一回の作業で修正できるため、作業の効率は大幅に高まる。

16:55

閉会の挨拶

市民参加型ワークショップ「『古典』オーロラハンタ-3」

ワークショップ「古典」オーロラハンタ-3

日時

平成30(2018)年2月18日(日) 13:30~16:30

場所

国文学研究資料館2F大会議室

主催

人文化研究機構国文学研究資料館
情報・システム研究機構国立極地研究所
総合研究大学院大学(総研大)学融合推進センター
詳細

本ワークショップは、以下の事業として実施しました。
・歴史的典籍NW事業
・総研大学融合共同研究事業「オーロラと人間社会の過去・現在・未来」

概要

古典籍および天文に興味がある一般の方に参加していただき、古代・中世における古典籍・古記録のなかからオーロラ・彗星・隕石などに関する記述の抽出作業を行いました。

平成29(2017)年度

第3回日本語の歴史的典籍国際研究集会

歴史的典籍オープンデータワークショップ ~切ったり貼ったり、古典籍からなにを取り出そう?~

日時

平成29(2017)年
7月28日(金)~ 7月29日(土)(2日間)

場所

国文学研究資料館 大会議室(東京都立川市緑町10-3)

主催

大学共同利用機関法人人間文化研究機構
国文学研究資料館
全体ダウンロード PDF
プログラム詳細
総合司会:野網摩利子(国文学研究資料館研究部准教授)
12:30

受付開始

13:00

開会の挨拶

ロバート キャンベル(国文学研究資料館長)

13:05

機構挨拶

立本成文(人間文化研究機構長)

13:10

趣旨説明

齋藤真麻理(国文学研究資料館研究部研究主幹)

パネル1 「文字認識のフロンティア」

概要説明

山本和明(国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター特任教授)

文字認識のフロンティアと題したこのパネル題は、あまりにも大胆な命名であったかもしれない。その意図する処を簡単に述べておきたい。

日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画(NIJL-NWプロジェクト)ではいくつかのミッションが存在する。その1つがテキスト化実証試験というもので、古典籍の画像公開を踏まえ、それをテキストデータ化することに試験的に取り組むことになっている。

古典籍や古文書の翻刻は、今でも単行本の形で公刊されることが多い。書物として目にするこうした成果は、それ自体貴重なものである。しかし、それをテキストデータとして蓄積していくことで、広がる世界を考えてみたことがあるだろうか。

多くのテキストデータが一定のルールの下で蓄積され、検索することが出来たならば、ジャンルや時代を超えての発見が可能となる。テキストの蓄積数が増えれば増えるほどにその可能性は高まっていき、思いもかけない書物のなかに、求める言葉を発見することもあるだろう。そのためにはテキスト化が必要であるが、そこに傾けるマンパワーの確保は甚だ心許ないというのが実情だ。もしこのプロジェクトでの画像全てにテキストが出来たら…は、夢の世界でしかないのだろうか?

人文系の研究者は、テキスト化を人力でやろうと考えるのが常であるが、恐らく理系の研究者ならば、次のように考えるだろう。機械(コンピュータ)で 出来ないのかと。文字認識の研究は面白い!また、くずし字認識においても、様々なチャレンジが進行している。そうした文字認識の研究の分野を人文系の研究者があまりに知らないでいるのは何とも勿体ない話ではないか。いま文字認識の研究はどこまで進んでいるのか、何が可能で何が課題なのか。そのことを知り、互いに協力できることを探ることが必要なのだと考える。

そうした異分野の研究者の、お互いの交流の場にこのパネルをしたいというのが意図する処であり、研究の最先端を走っておられる三人の先生方にご登壇いただいた次第である。

  1. 報告1 「文字工学から文字科学へ」

    内田誠一(九州大学大学院システム情報科学研究院教授)

    文字を対象とした工学的研究の代表例として、計算機による文字認識が挙げられる。OCRとも呼ばれるこの技術は、現在型の計算機登場以前のTauschek特許(1929年)以来、90年近くも継続的に膨大な数の研究がなされてきた。スキャンされた紙面上の活字や手書き文字、そしてカメラで撮影された一般的情景内の文字、といった具合に、その適用範囲は拡大を続けており、昨今ではさらに変形の激しい古文書も対象とできるようになってきた。一方、こうした華々しい文字認識技術の進展の逆作用もあってか、もしくは文字認識技術が十分高度化しない限り不可能な研究なためか、文字を対象とした他の工学的研究についてはあまり多くは展開されていない。これは残念な状況である。実際、文字は単なる認識対象ではない。例えば、人工物ゆえデザインの対象であり、様々なフォントの用例が示すように、特定のデザインによりある種の印象を与える機能を持つ。さらには町中の「注意書き」のような意味の伝搬機能や、商品ラベルのようにその周囲の詳細化機能もある。深層学習をはじめとする認識技術の高度化や、その学習に利用可能な大規模データセットも公開されている状況により、認識技術の実用性が益々高まる中、その技術を活かして、紙面・環境を問わず様々な文字を収集し、それらを多面的に解析すれば、これら文字の多様な機能を工学的に解明できるだろう。そしてそれらをさらに推進することで、「そもそも文字とは何か」「なぜその文字はこのように体系化されたか」といった、より根源的な科学的課題にも着手できると期待できる。こうした状況を受け、本報告では「文字認識」以外の研究すなわち「文字工学」と「文字科学」と演者が呼んでいる諸研究について、その意義を確認するとともに、萌芽的な実施例を紹介したい。

  2. 報告2 「フォント生成による古典籍検索の試み」

    大町真一郎(東北大学工学研究科教授)

    生成された文字画像を用いて古典籍データベースを検索する試みについて述べる。文字認識研究は大規模データと畳み込みニューラルネットワークによる機械学習により飛躍的に発展した。しかし、その恩恵を受けるためには正確にラベル付けされたデータを大量に収集する必要があり、これは一般的には非常に困難である。特に特殊な字体や多様な手書き文字で書かれた古典籍画像データ中の文字を高精度に認識することは難しい。一方、我々は文字フォントの自動生成方法を開発している。この手法では、文字カテゴリを与えることで、ある特徴を持つ文字画像パターンを半自動的に生成することが可能である。この手法を古典籍の検索に応用することを検討している。すなわち、古典籍の画像が与えられたとき、使われている文字と同様の特徴を持つ文字画像を生成し、生成された画像を用いた画像照合により古典籍画像データベースから特定の文字列の箇所を検出する。本報告では、文字フォントの自動生成法の概要およびその性能を紹介した後、古典籍画像データベース検索への応用について述べる。

  3. 報告3 「字形検索サービスにおける文字認識技術の活用」

    耒代誠仁(桜美林大学総合科学系准教授)

    発表者は、奈良文化財研究所、東京大学史料編纂所の研究者らと共同で、古文書デジタルアーカイブを対象とした字形検索サービスの研究、開発に取り組んでいる。このサービスの検索キーはユーザが用意した字形画像である。サービスのユーザインタフェースはWebアプリケーションとなっており、PC、スマートフォンなどWebブラウザを搭載した様々なコンピュータで利用できる。字形検索に必要なほとんどの処理はサーバサイドで実施しており、クライアントとなるコンピュータへの負荷は小さい。検索対象は古文書を出典とする字形画像である。個々の検索結果は古文書デジタルアーカイブにリンクしており、ユーザはリンク先で字形画像のメタデータを含む詳細な情報を得ることができる。字形検索を実現するために、発表者らは手書き文字認識の技術を応用している。発表においては、字形と背景を分離する画像処理技術、ノイズに頑健な形状評価技術などを取り上げる。字形検索サービスは、検索キーとなる字形の字種を認識するサービスではない。しかし、その基本的な部分では文字認識技術は有効である。さらに、文字認識技術を字形検索サービスとして実装する際に必要となる周辺技術についても言及する。その一方で、発表者らが検索対象としているデジタルアーカイブに対しては、文字認識において有効とされる学習アルゴリズムの適用が難しいことについても述べる。また、このサービスが文字認識を行わない理由について、テキストによるデジタルアーカイブ検索サービスとの関係にも言及しながら述べる。現在、デジタルアーカイブの多くが持つテキストによる検索サービスは、デジタルアーカイブ上で文字情報を扱う方法として、また現代人が古文書を理解する上で有益である。発表者らは、そのことを踏まえた上で、字種以外の情報で古文書デジタルアーカイブのコンテンツを検索・活用する方法も重要であると考えている。

15:25~15:40

休憩(15分間)

15:40~16:00

「「新日本古典籍総合データベース」の新たな試み」

松田訓典(国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター特任助教)

国文学研究資料では数多くの協力機関とともに平成26年度から10カ年にわたる「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」を進めているが、その最初のメルクマールの一つがこの「新日本古典籍総合データベース」(http://kotenseki.nijl.ac.jp/)である。本データベースは本計画がその研究基盤として構築することを掲げている「「日本語の歴史的典籍」約30万点を画像データ化し、既存の書誌情報データベースと統合させた「日本語の歴史的典籍データベース」」の原型となるものである。平成29年度の初公開時点では、およそ5万8千点の画像を収録し、書誌情報や、一部ではあるが画像に付されたタグならびに全文テキストデータなどから、期待される古典籍画像を検索・閲覧する機能を提供している。また実験的なシステムとして、くずし字検索機能の提供なども行っている。

本データベースは一見すれば、当館が長年拡充を図ってきた「日本古典籍総合目録データベース」を補完するもの、あるいはその変種と見えるかもしれない。しかしながら、その背後にあるものは大きく異なっている。従来のデータベースが目指すものは原則として「目録」であるのに対して、本データベースは、例えば、個々のユーザー視点で見れば、学術目的か否かにかかわらず、古典籍という知の宝庫からの新たな発見をもたらす場となること、一方で、現在も止まることなく発展していくインターネットの世界においては、必要とされる情報を、柔軟に、しかるべき形で、流通させていくことを期待している。そのような古典籍に関わる総合的な機能を担っていくデータベースの原型なのである。

本発表では、こうした目的を実現するために新たな試みとして導入したいくつかの仕組みと、これから克服していくべき課題、将来の展望についての紹介を行いたい。

新日本古典籍総合データベース(http://kotenseki.nijl.ac.jp/)
16:00~17:00

パネル2 「文献観光資源学は何をめざすか」

概要説明

谷川惠一(国文学研究資料館研究部教授)

歴史的典籍NW事業では今年度から新たに文献観光資源学の構築を目指す共同研究を開始します。文献観光資源学は、さまざまな分野の歴史的典籍の中に存在する地域情報をテーマに即して統合し、現代の視点から再資源化することによって歴史と風土に根ざした地域の魅力を再発見するとともに、情報を重層的に関連づけて発信することによって新たなツーリズムの開拓を目指します。

具体的なテーマとして本年度から「津軽デジタル風土記の構築」を弘前大学と開始します。本州最北端の地である津軽に生きた人びとが残してきた知の多様な姿を、「藩主・藩士の知」「祭礼と芸能」などのテーマに即して、歴史的典籍を用い最新の研究成果を盛り込んでウェブ上に再構成し、奥深い津軽の魅力をわかりやすく発信していきます。

  1. 報告1 「解析型デジタルアーカイブによる石碑の利活用」

    上椙英之(国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター客員研究員)

    歴史資料としての石碑は、東日本大震災の折、過去の津波の到達場所に在り「これより下の土地に家を立てるな」との警告を記した石碑が人々を救ったことでその価値が見直されてきている。

    しかし、石碑のほとんどは屋外に在り、長期にわたる風化作用の為、文字情報は失われつつある。その為、通常撮影では金石文の判読が難しい場合が多く、単純に撮影するだけでは適切なアーカイブは望めない。また位置情報が重要な意味を持つ資料であり、移設による保管も難しい。このように、早急なデジタル化が望まれる歴史資料でありながら、アーカイブの為には解決すべき課題は多い。

    近年では3Dスキャナによる、3次元形状の復元が可能となり、文化財のデジタル化に大きな役割を果たしているが、フィールドに無数に存在する石碑のアーカイブに適用するには、現実的ではない。結果、比較的安価に手に入るデジタルカメラを使用することになる。しかし、通常撮影でアーカイブされた石碑の調査報告書では文字の判読が難しく、調査者が判読を誤り、且つそれらの石碑が都市化や道路工事などで既に失われていた場合には、もはや正しい情報を得ることは不可能となる。誤読の可能性を考慮し、且つ後世に可能な限りの情報を残す為には、文字を判読できる状態でアーカイブすることが望ましい。

    文字を撮影するためには撮影後、画像処理が必要となる。その画像処理にしても、石碑は、円柱・角柱・自然石・石板などの形状の差や、風化の度合い・材質など多くの要因によって、採るべき画像処置法は変わってくる。現在稼動しているデジタルアーカイブは博物学的な展示システムの延長であり、画像解析を手作業で個別に行った後に、アーカイブに登録する手順を採ると、さらに時間を要する事となる。

    本発表では、上記のような石碑のアーカイブが抱える問題と。それを解決する為のデジカメによる簡便なデータ取得と。石碑の多様な保存条件に対処するための解析型のアーカイブについて提案する。

  2. 報告2 「「デジタル文学地図」プロジェクト紹介」

    ユディット アロカイ(ハイデルベルク大学東アジア研究センター日本学科教授)

    数年前から起きている文化論の中の空間への感心(文学における空間の構築、文学地理学)の結果として前近代・近現代文学の物語の空間性についての様々な分析が行われています。それにもかかわらず、物語の空間性をデジタル地図で表記するツールが今までは発展していないません。使われているのはGISのような数量的な問いかけに応用できるプログラムです。文学テクスト(物語性のあるさまざまな資料)をデジタル地図に表記するプログラム(ツール)は二年前からハイデルベルク大学で開発されていますが、このプログラムを日本の文学専門家に紹介するのはこの発表の目的です。このツールによって文学専門家もテクストの空間的な構築のより深い理解が可能になり、日本文学を勉強する学生は文学的な地誌の知識の取得が期待できます。

    本プロジェクトは文化論や文学論に起きた「topographical turn」を起点に日本の文学的・文化的に有名な土地を取り上げてデジタル地図に載せることを目指しています。文学理論・文学分析はもともと時間軸を重んじてきて、物語の中の時間性を分析する方法をいろいろ作り上げたが、空間軸は長い間無視されていました。日本文学の中では空間についての言及は伝統的に多いです。歌枕・名所の役割、紀行文の中古から現代まで至る流行、地名による間テクスト的な網(ウェッブ)を考察すると、日本文学は文学地理学の視点から興味深い研究対象になります。日本文学の中の地誌的な言及は最初の歌集や物語から始まりますが、地名についての知識を無視してはその意味が理解不可能です。

    開発中であるデジタル地図は地図に地名を表記して、インフォメーション入力のインタフェースになっています。そこから地名についての情報を入力し、地図の背景には歴史的、文学的、宗教的なインフォメーションを保存するデータベースが設置されています。テクストを読みながら、重要な地理的なインフォメーションを持続的に記入することによって、データベースが増設されていきます。プログラムは日本語と英語表記になって、両方の書き込みを目指しています。日本原文以外は英語訳だけではなく、ドイツ語、フランス語、イタリア語訳を記入することを計画しています。

17:30~19:00

レセプション

7月29日(土)

総合司会:青田寿美(国文学研究資料館研究部准教授)
9:30

受付開始

10:30~11:00

研究報告1 「古典の普及・教育と漫画」

小山順子(国文学研究資料館研究部准教授)

漫画を教材として利用することは、主に児童向けの学習漫画が各出版社から出版されており、効果のある教育方法、および学校教育の参考書としてすでに定着している。漫画を教育に役立てるという視点は、漫画文化の成熟と発展に基づくものである一方で、「活字離れ」の現象とも表裏をなすものである。漫画を学習もしくは関心のスタートとする人口は、潜在的に極めて多く、また読者の年代も広がっている傾向にある。今後、若年層や初学層を対象とした普及・教育を考える上で、注目すべき分野である。

本発表では、古典文学を題材とする漫画を取り上げるが、学習漫画ではなく、娯楽作品として発表されている一般向け漫画を中心とする。「学習」を目的とする漫画よりも、娯楽作品の方が一般的な注目度や発信性が高く、影響力を持つと考えられるからである。現在では学習参考書・受験対策としても扱われている大和和紀『あさきゆめみし』(連載1979~1993年)も、当初は一般的な少女漫画として発表されたものであった。原典の内容に忠実に漫画化した作品が、その後、参考書としても用いられることはある。しかし学習漫画が「学習」を目的として制作され、読者も「学習」を目的として読むのとは違い、娯楽作品は、「学習」を目的としない層も手に取るものであることを重視したい。

古典を原作とする漫画について、古典文学を専門とする研究者からの発言は、『源氏物語』を原典とする漫画作品に特に偏重している。しかし、『源氏物語』以外を原作とし、さらには高い評価を得ている作品も多く、「古典と漫画」という視点から広く考える必要がある。古典を現在、どのような古典作品が原作として用いられているか、また多くの読者を獲得しているか、などを概観し、古典文学の教育・普及の方法を考える上での一助としたい。

11:00~11:30

研究報告2 「絵本としての草双紙」

佐藤悟(実践女子大学文学部教授)

文化期(1804~17)に入ると草双紙は合巻と呼ばれる時代を迎える。合巻の特色の一つとして、錦絵以上の手間をかけた摺付表紙や口絵の誕生など、装飾性に富んだ装丁をおこなったことが挙げられる。これによって、合巻の価格は上昇を続ける。また上紙摺と呼ばれる特製本の合巻が誕生している。上紙摺はその高価格ゆえに文化14年に禁令が出ている。また挿絵の登場人物の顔が役者の似顔絵で描かれるといった現象も起きてくる。この現象は読本にも見られるが、合巻の大きな特色となっている。

同時期に同様な現象を示したのが読本である。読本の題簽は意匠を凝らしたものが多く制作される。口絵や挿絵も独特の発展を遂げるなど、絵本に近い作品となったものもある。

この現象の理由として以下のことが考えられる。

  1. 文化・文政期(1804~29)は天明の飢饉や天保の飢饉の間の時代であり、所得が向上したこと。
  2. 合巻の出版部数が増加し、出版者にとって高収益が見込める分野であったこと。
  3. 新しい出版者や作者が参入し、合巻の差別化が激しくなったこと。
  4. 江戸の歌舞伎が繁栄し、役者に対する関心が高まったこと。

このような状況にありながら、江戸では上方で許されていた多色摺が禁止されていた。規制をかいくぐるように、一部の例外を除き、色の濃淡(艶墨・地墨・薄墨)などの多色摺がおこなわれていた。これは文化元年の『絵本太閤記』絶板に伴う色摺の禁止令によるものである。これにより一部の私家版を除いて、多色摺の絵本は江戸では禁止されたのである。

多色摺の絵本には一定の需要があったと考えられる。需要層がありながら商品の提供ができなくなってしまった結果、その代替需要が合巻や絵本に向かったとは考えられないだろうか。それが合巻や読本の新しい装丁を生み出したのではなかろうか。具体例を挙げながら検討を加えてみたい。

11:30~12:00

 研究報告3 「近世日本数学文献研究の新しい地平」

小川束(四日市大学環境情報学部教授)

近世日本の理学文化、とくに数学文化は非常に豊かな内容を持っていました。実際、一定数の数学書が定期的に刊行され、国民の多くが基本的な計算能力を有し、専門家だけでなく趣味として数学を楽しむ者も多くいました。

この近世日本の数学典籍の研究は明治初期より開始されましたが、そのほとんどは日本人による研究によるものでした。しかし、近世日本の数学文化を広く漢字文化圏の中に位置付けることによって、これまでにない新しい視点が得られる可能性があります。そこで、2014年10月から2017年9月までの3年間に渡って、日本、中国、韓国、台湾の研究者を招聘して、東アジアの数学典籍に関する研究を重ねました。中国の研究者の基本的な感覚では東アジアにおける近世以前の数学文化の中心は中国であり、これまで周辺地域における発展には重大な関心は寄せていませんでした。韓国ではその中国の数学文化の受容に儒学思想が深く関与したというのが基本的な認識です。一方、日本では中国から輸入された若干の数学書によって発展の契機があたえられたものの、その後は他国とは独立して日本独自の数学文化が築かれたと考えられています。国際交流を通じて、それぞれの国の研究者がそれぞれの国の数学文化を広い視野から眺めることによって新たな発見をし、また改めて新たな問題を設定することになるのです。

これらの国々の研究者との協働をこれらかも密に続けるためには、人名、書名、主要な用語の英語による標準化は欠かせません。またテキストの英訳なども重要です。高水準の研究のためには日本語で文献を読む必要がありますが、その解読は必ずしも容易ではなく、国際的な研究の十分な進展のためには、英語による標準化やテキストの英訳が必要です。

本講演では近世数学書に関して国際的研究の現状と将来の課題について簡単に紹介します。

12:00~13:00

休憩(60分間・昼食)

13:00~14:30

パネル3 「「文芸を折る」―日本古典籍における折本という存在」

概要説明

海野圭介(国文学研究資料館研究部准教授)

本パネルは、2015年度より3カ年の計画で進めている国際共同研究「江戸時代初期出版と学問の綜合的研究」(代表者 ピーター コーニツキー ケンブリッジ大学名誉教授)の成果の一部を報告するものである。

国際共同研究「江戸時代初期出版と学問の綜合的研究」は、主として日本国外に所蔵される日本古典籍を調査し、その所蔵データをデータベース(コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録〔http://base1.nijl.ac.jp/~oushu/〕として公開中、順次データを追加)として蓄積しつつ、印刷文化の黎明である江戸時代初期において出版がはたした役割を、主として学問的知識の普及の点から検討し、日本の書物文化を多面的に考えること目的としている。また、印刷された書物を対象とした研究であるだけに、書物そのものに対する理解の深化をも目的としている。

中国大陸、朝鮮半島に由来する諸々の知識は、巻子(かんす)本、折本(おりほん)、冊子(さっし)本(粘葉装(でっちょうそう)、列帖装(れつじょうそう)、袋綴(ふくろとじ)などの装丁の別がある)といった多種多様な形態の書物に記されて日本へと伝えられ蓄積された。時代が下るにつれて中国大陸、朝鮮半島においては、書物の形態は次第に袋綴本(線装(せんそう)本)へと収斂していったが、日本においてはそれぞれの装丁が用途に応じて使い分けられ保存された。

本パネルでは、日本の書物文化を考える上で興味深いテーマである「折本」と呼ばれる装丁の書物の利用の諸相を紹介し、その特質と文化史的意義について考えてみたい。

  1. 報告1 「折本という装訂の特色について」

    佐々木孝浩(慶應義塾大学附属研究所斯道文庫教授)

    日本古典籍で良く用いられた装訂は5種程度あるが、その1つが折本(おりほん)である。紙を横方向に長く貼り継いでいくのは巻子装(かんすそう)と同様であるが、巻子装は巻いて保存するものであるのに対し、折り畳んで保存するのが折本である。このような関係であるので、両者は保存される内容も共通性が高い。経典や暦に系図類、あるいは芸道の伝書類などはその典型である。その一方で巻子装で保存されて、折本では殆ど保存されないものがある。文学作品や挿絵のあるものがそれである。折本にも絵はあるが、それなしでは説明が難しい「図」なのであって、無くても特に問題のない「挿絵」ではないと一応は整理できよう。それらが保存されない理由は様々に考えられるが、巻子装の発展形態として生まれながら、あくまでも仮のものと認識されていたことと関係するのであろうか。折目の目立つことや、安定性が悪いこと、あるいは仏教的な色彩が強いことが嫌われたのかもしれない。しかしその一方で折本にも独自な用いられ方があった。書道のお手本や小型のガイドブックのようなものである。前者は手を放しても利用できることが好まれたものと考えられる。後者は綴じられた箇所がないために自由に取り扱え、裏面も利用できる利便性が、江戸期の版本で多用された理由であろう。文学作品が殆ど保存されないこともあって、あまり注目されてこなかったが、主な装訂5種の内で、その用いられ方が最も個性的であるのである。また折本には、旋風葉(せんぷうよう)・画帖装・折帖などといった、折本から派生したと考えられるやや特殊な装訂も存在している。旋風葉や画帖装は折本の安定の悪さを嫌って、冊子に近づくように進化したものである。折帖には両面式のものと片面式のものがあり、両者共に巻子には改装不可能な厚紙を用いたものである。この様な周辺的な装訂が複数存在する点でも、折本は特殊な存在なのである。

  2. 報告2 「知と技法の媒体としての折本―「八卦」を中心に」

    マティアス ハイエク(パリ・ディドロ第7大学東洋言語文化学部准教授)

    「折本」といえばまず誰しも思いつくのは仏典であろう。『江戸時代初期出版年表』(岡雅彦他編、2011年)を見渡すと「折本」の形状の書物は確かに高野版や宗存版の「お経」が圧倒的に多い。もちろん『法華経』など、何巻本の経典ではなく、むしろその入門書や解釈、あるいは短編的で、毘沙門天など一尊に特化したものも少なくない。

    しかしその初期の「折本」群のうち、それらとは一線を引く、特異な書物の系統がみられる。それは『八卦』というものである。慶長16年の『八卦図絵』(仮題、東洋文庫所蔵)を皮切りに、『簠簋』と並んで、初期占書の代表格なものとして再版・新版、(もしくは類版?)を重ね、江戸時代前期を通して書籍目録に顔を覗かせてきたものである。

    この資料群にはいくつかの特徴があるが、他の「お経」系の折本との根本的な相違はその用途にある。それはすなわち、この「八卦」は儀式的に「読み上げる」べきテクストの媒体ではなければ、既存の聖典をそのまま伝えるものでもなく、室町期に成立した「暦占」と「易占」の折衷型の占術の技法に必要な図表を収めた「占い便覧」的なものである。

    初期占書のうち折本形状のものはこの「八卦」群のみで、その特殊性からその内容・構造、用途とのこの形態には何らかの関係があったと考えられる。

    その裏づけとして、これらの資料のもう一つの特徴を取り上げることができる。それは、裏面への多様な書き入れという、「折本」の特別な形状を活かした、本の「使い方」である。現在確認できる25点前後の諸本の大部分に、裏面(時には表にも)に、本文と関係のある書き入れがあり、そこには、「書物」の既存の内容と、読者(利用者)の要望や個人の知の親密で複雑な関係、そして「読書」という「学習行為」を超えた、「知と技法の実践」の媒体としての「書物」の姿が潜んでいるのではなかろうか。

  3. 報告3 「近世日本における折本・折帖の諸相―版本を中心に」

    アレッサンドロ ビアンキ(フリーア|サックラー)

    継ぎ合わせた紙を同等の幅に折り畳んでから、表紙を付けて形作られた折本とは、平安時代から明治にかけて頻繁に使用された装訂である。近世日本においても、写本ばかりか版本でもよく使われており、暦をはじめ経典・便覧・習字の手本・地図など、多岐にわたる作品を保存するために、よく利用された。また、折帖とは折本に近い書物形態であるが、近世の版本の場合この装訂に含まれるものに折帖仕立てと画帖装(あるいは綴)がある。両者とも版面を内側にして料紙を半分に折り、裏端を突き合わせて作られたが、折帖仕立ては折本と同様に背は綴じられていないのに対して、画帖装は表紙と裏表紙が繋がっているので、冊子体に似ているものである。折帖は法帖を作るのによく使われたが、その他に、浮世絵の発達に伴い絵本・絵入り本の出版も普及したため、色鮮やかな画譜を製本するに当たっても、折帖は便利な形態として認識され、一般的に使用されるようになってきた。

    本報告では、近世版本における折本と折帖の諸相について総合的に紹介する予定である。特に、この装訂の書誌学的な特徴や当時の利用方法を軸にして発表したい。先ず、書形・外題・表紙・袋など、すなわち書物の形態と外見的な特質をまとめる。次に、印刷の技法に関して説明する。近世期において基本であった木版印刷のほかに、西洋から導入された銅版印刷の技法によって作られた作品の数例も考慮に入れたい。続いて、版面のレイアウトに注目して、書式とデザイン性について紹介する。最後に、この装訂の用いられ方をめぐって説明したい。取り分け、折本と折帖の書物はどのように読まれたか、当時はどういう風に利用されたのかについて具体的に検討してみたい。

14:30~14:45

休憩(15分間)

14:45~17:00

パネル4 「生活・環境と古典籍――異分野融合研究の可能性」

概要説明

入口敦志(国文学研究資料館研究部准教授)

医療や薬、また食物に関する古典籍は、日本においては相当の数が残されている。直接現実生活に関わるものとして、必要な知識を伝えるためのものであった。中国から伝わってきた典籍をそのまま使うだけでなく、日本の風土と植生などに合わせるかたちで日本人も多くの著述を残している。そのような古典籍の中には、まだわれわれが知らない情報が多く潜在していることは容易に想像できるのだが、それらは十分に活用されてきたとは言えない。

国文学の分野では、文学作品に登場する医療や食物などの記述に文献的な裏付けを持った注釈を付けることを、読解の基本として行ってきた伝統がある。しかし、それはあくまで文献上の記述だけを対象としており、具体的にどのようなものであったか、あるいはどのような行為が行われていたかということについて具体的な肉付けをすることが行われることは稀であったといえる。

現在、国文研が中心となって推進している歴史的典籍NW事業をはじめとする古典籍のデジタル化によって、容易に見られなかった書物の多くが利用できるようか環境が整いつつある。また、このパネルを構成するような、それらの古典籍を利活用した異分野融合研究も行われている。

そこで、本パネルでは、現在進んでいる異分野融合研究の現時点での成果を発表する。更に、古典籍と科学的な研究の間に、単なる相互の情報提供にとどまらない、まさに融合した成果による現代社会への多様な還元の可能性をも探ってみたい。

  1. 報告1 「『広恵済急方』に見る江戸時代の民間救急療法」

    小松かつ子(富山大学和漢医薬学総合研究所教授)

    江戸時代、十代将軍徳川家治は庶民の疾病治療を按じて、「急病に罹った時医師を請う時間もなく、また遠方で医師がいない土地もある。ましてや病気の治療方法も知らずに命を落とすことも多いという。そのような時に救急の方法を記した書物があれば、広く世に報いることができる。」との思いから、多紀元悳に命じて、『済急方』が編纂される。この書は天明七年(1787年)に完成するが、家治はその前年に他界したため、十一代の家斉がその意志を引き継いで、『官準 広恵済急方』という名で寛政元年(1789年)に出版される。本書は、医師の経験や民間の伝承を根拠とし、救急医療に際しての民間療法を記載した書物であり、当時の庶民が医師にかかる前に使用していた身近な薬物(生薬、新鮮な植物、食品などを含む)を知ることができる。

    『広恵済急方』は三巻からなり、上巻には卒倒の類(中風、痰厥、中暑、食厥、霍乱、疔毒昏潰、癲癇、血厥など)、中巻には卒暴諸証(吐血、小便血、諸失血眩暈、急喉痺、心腹卒痛、急黄、便急閉など)と外傷之類、下巻には横死之類(餓死、溺死など)、諸物入九竅(諸物入目、誤呑銅鐵物など)、諸物中毒、婦人産前急証、臨産急証、産後急証及び小兒急証の各疾患の概略が述べられた後に、それらに対する治療法として薬物療法と、鍼灸を含めた理法が記載される。薬物療法では約300品目が収載され、その内訳は植物性のものが約210種類、動物性が約70種類、鉱物性が約20種類である。その内81種類については江戸近郊の植物等の図が付されている。

    本講演では、参附湯、姜附湯など処方としての用法、蒲黄、茅根、柿渋、山椒などの民間薬、赤小豆、黒豆、細茶などの食品、その他、百草霜(竈の煤)などあまり馴染みのない生薬を取り上げ、中国の医書や本草書などの影響や、現在の科学的エビデンスから見た用法の妥当性について考察する。さらに、収載生薬に関するデータベースや民間薬の科学的研究の結果についても紹介する。

  2. 報告2 「古代の甘味料”あまつら”の復元」

    神松幸弘(立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構専門研究員)

    私たちの文化は過去から引き継いだものであるが、一方で消失したものも少なくない。たとえば、それは日本料理において欠かすことができない甘味料の中にもある。今からおよそ600年以前、日本料理に砂糖が使われることはなかった。砂糖は希少なため、薬として用いられていた。当時の人々は甘味料に麦芽の水飴または“あまつら”を用いた。延喜式(927年)によると、あまつらは日本全国二十一ヶ国から都に集められ、また唐に貢物として送られたことが記されている。平安時代に書かれた枕草子や源氏物語などの多くの書物にもあまつらの記述は見られる。それらの書物から、古代の貴族の菓子や料理にあまつらが欠かせない食材であったことがうかがえる。にも関わらず、中世に砂糖を国内で生産し始めるとあまつらは消えてしまう。それから数百年後、あまつらは人々に忘れ去られてしまった。江戸時代の生物学者や医学者はあまつらの原料を探しいくつかの植物をあまつらの原料とする説が立てられた。しかし現在は、ツタを唯一の原料とする説が有力視されている。実際に、ツタの樹液は糖分が高い。また先行研究によってツタからあまつらを再現した事例もある。しかし、他の植物で確かめられた事例はなく、それらがあまつらの原料ではないとする根拠は希薄である。

    このような背景から、本研究では古文書からあまつらの製作方法や原料植物ついて再検討を行なう。とくに、これまで軽視されがちであった仮名書きされた本草学の文献に着目する。本草学では漢文で書かれた文献に格式があり、学術的価値が高いと考えられてきた。しかし、高い教養を持った人々だけがあまつらに関する知識を持っていたとは考えにくい。仮名文字で残された民間伝承や日記などに未知の情報が眠っている可能性は高い。さらに私たちは食品化学の手法を用いて、あまつらの原料の候補と見なされる植物の樹液について糖類の組成や定量分析を試みる。あまつらを復元できれば、古代の食事や菓子類の再現も可能になる。これまで文献を通じてしか知ることのできなかったあまつらを味わうシンポジウムの企画も計画している。考古学や人類学との協働も視野に入れて推進する学際的研究について紹介する。

  3. 報告3 「『延喜式』に見える貢納食材とその加工法」

    清武雄二(国立歴史民俗博物館研究部特任助教)

    古代日本の律令国家税制は国家が必要とする物品の直接貢納を基本としている。食材についても同様であり、10世紀に編纂された法制書である『延喜式』には諸国に割り当てられた多種多様な食材の貢納が規程されている。特に魚介類・海草類といった水産物品が税物としての食材に占める割合は非常に高い。保存が容易ではない古代においては、長距離の運搬や一定期間の貯蔵に対応するために、こうした加工が必要不可欠であったと思われる。実際、多くの水産物品は、乾燥・発酵などの加工をうかがうことができる品名で記載されている。ただし、具体的な加工法・運搬・保管・調理等についてはほとんど記述がなく、不明なものが多い。

    本報告では、『延喜式』に見える貢納食材の具体的事例としてアワビの加工品をとりあげる。アワビは、神饌や天皇への供御をはじめ、節会等の宮廷での饗宴に供給された食材であり、『延喜式』には20数種類に及ぶアワビ加工品が記されている。しかし、これらの大部分は後世には伝えられておらず、食材としての実態はよくわかっていない。そうした中において、長鰒は木簡等の記載から細長い形状であったことがうかがえ、後世において縁起物の贈答品として知られている熨斗アワビにあたるものと考えられる。とはいえ、長鰒の食材としての特性や税物としての製造・運搬などは必ずしも明らかではなく、その解明のためには従来の文献史学にとどまらないアプローチが必要である。

    国立歴史民俗博物館では、伊勢神宮の神饌として熨斗アワビを製造している現場での聞き取り調査、加工実験、生アワビと比較した成分分析を実施している。そこで得られた結果をもとにして、『延喜式』に見える長鰒の製造工程、アワビの種類、加工時期、貢納・運搬を前提とした加工形状、加工による具体的成分変化等を検証することで、古代税制や古代の食文化について考察する。

  4. 報告4 「気候変動適応学と歴史学、国文学との共働可能性」

    田村誠(茨城大学地球変動適応科学研究機関准教授)

    気象極端現象の激化、多発化によって、気候変動に対する短期・中長期的な対応策(適応策)に対する関心が高まっている。国際的には2013-14年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5 次報告書で、気象の極端化が一層進むという将来予測が示され、温暖化対策における適応策の重要性が一層認識されることになった。2015年にはパリ協定が採択され、2016年に早期発効した。

    しかし、現下の気候変動への適応において、気候科学が予測する21世紀の環境変化も考慮した社会経済変化への対応が必要にもかかわらず、将来予測に基づく予見的適応に関する体系的な研究は限られているのが実情である。一方、人類の文明の歴史は、災害や疫病、社会経済環境の変化などに対する広義な適応の歴史であり、気候変動への適応についても歴史から学ぶべきことは多い。災害や農業をはじめとした歴史的な適応の事例から、今後の気候変動適応計画を立案し、実施していくための示唆が得られるのではないだろうか。本稿では、これらを包摂した「気候変動適応学」の構築に向けて歴史学や国文学との共働可能性を議論する。以下の研究事例を提案したい。

    1. 気候変動に関する基礎データの掘り起こし。気温、降水量、作物収量などの文研から長期時系列データを収集し、気候・影響評価モデルの入力値とする。
    2. 古地図、古文書による土地利用、生活様式の変遷と気候シナリオの解析。既存の気候変動影響予測モデルがうまく捉えることができない事象の一つに社会変動、とりわけ居住地の移動や生活様式の急速な変化がある。これらの変化に気候変動が及ぼした影響があるのではないか。
    3. 歴史学、災害史学との連携。古地図による土地利用の解析、GIS データへの統合、古文書などの災害記録などから適応の効果を抽出する。例えば河川整備と住民、土地利用の変遷、営農の歴史的考察から、河川等の大規模な整備効果の検証と同時に移転が起きた場合の影響を再検証する。
    4. 「気候変化の検出と原因特定(Detection and Attribution)」。実在するデータのうちの一部を変更して適応策の有無を仮想する過去再現シナリオ分析を導入する。

    筆者は、国文学や歴史学からは専門外である。これらのテーマから技術開発や学習・教育、社会変革などによって社会の適応力が変遷してきた過程、「温故知新の適応策」を明らかにしたいと考えている。これらのテーマから新たな学際的研究や共働が創発されることを祈念する。

    謝辞
    本稿は、科学研究費補助金基盤研究(B)「適応策の有効性と限界」、環境省環境研究総合推進費S-14「気候変動の緩和策と適応策の統合的戦略研究」の成果の一部である。

17:00

閉会の挨拶

谷川惠一(国文学研究資料館副館長(研究担当))

歴史的典籍オープンデータワークショップ
~切ったり貼ったり、古典籍からなにを取り出そう?~

歴史的典籍オープンデータワークショップ ~切ったり貼ったり、古典籍からなにを取り出そう?~

日時

平成29(2017)年12月8日(金)15:15~18:00

場所

大阪市立大学文化交流センター
大セミナー室・小セミナー室
(大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第2ビル6

主催

人間文化研究機構国文学研究資料館

共催

人間文化研究機構国立歴史民俗博物館
メタ資料学研究センター
人間文化研究機構国立国語研究所
情報・システム研究機構国立情報学研究所
情報・システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設
国立国会図書館
一般財団法人人文情報学研究所
情報処理学会 人文科学とコンピュータ研究会
プログラム詳細
14:30~15:00
※自由参加の予備講習
「キュレーション」と「新日本古典籍総合データベース」について簡単なガイダンス

第1部 歴史的典籍オープンデータを知る

15:15~15:20
概要説明
15:20~15:50
データ/ツール紹介

第2部 歴史的典籍アイデアソン

16:00~16:10
オリエンテーション
16:10~17:20
グループディスカッション
17:20~17:30
小休憩
17:30~18:00
発表・講評
18:30-
懇親会
成果まとめPDF

平成28(2016)年度

第2回日本語の歴史的典籍国際研究集会
日本古典籍への挑戦 ―知の創造に向けて―

歴史的典籍オープンデータワークショップ ~使いたおそう!古典籍データ~

日時

平成28(2016)年 7月29日(金)~7月30日(土)(2日間)

場所

国文学研究資料館 大会議室(東京都立川市緑町10-3)

主催

大学共同利用機関法人
人間文化研究機構国文学研究資料館
全体ダウンロード PDF
7月29日(金) プログラム詳細
総合司会:小林健二(国文学研究資料館研究部研究主幹)
12:30

受付開始

13:00

開会の挨拶

今西祐一郎(国文学研究資料館長)

13:05

機構挨拶

平川南(人間文化研究機構理事)

13:10

趣旨説明

谷川惠一(国文学研究資料館副館長(研究担当))

13:20~14:20

基調講演 「デジタル時代と古典研究 ―画像資料のあり方を手がかりに―」

楊暁捷(カルガリー大学言語学・語学・文化学学科教授)

14:20~14:30

休憩(10分間)

14:30~14:40

「異分野融合共同研究について」

寺島恒世(国文学研究資料館副館長(企画調整担当))

14:40~15:10

研究報告1 「オーロラと古典籍」

片岡龍峰(国立極地研究所研究教育系・宙空圏研究グループ准教授)

人類は古くからオーロラ等の天の異変を観察して記録に残し、現代では多くの人がデジカメで撮影したオーロラ写真をインターネットで共有している。平成27年度に開始したオーロラ4Dプロジェクトの目的は、人々が残したこれらの資産を自然科学に活かすことであり、さらにはそれを通して市民参加型の科学研究のあり方について実践的に考察することである。本報告では、国文学研究資料館と国立極地研究所が初めて共同開催した、「赤気」と書かれたオーロラの記述を古典籍に見出す市民参加イベント「古典オーロラハンター」や、これまでの文理融合型の共同研究を通じて得られつつある新たな知見について報告する。

オーロラ4Dプロジェクト(https://lab.nijl.ac.jp/aurora4d/)
15:10~15:30

休憩(20分間)

15:30~16:00

研究報告2 「書誌学から総合書物学へ」

谷川惠一(国文学研究資料館副館長(研究担当))

bibliographyを翻訳して1930年前後に出現した日本の書誌学は、当初から一貫して、みずからに先行し隣接するさまざまな学問分野との関係にたえず気を配ってきた。書誌学が研究の対象とする書物は、そこに書かれたり印刷されたりしたそれぞれの内容を備えており、それについては、文学・歴史・仏教といった専門分野による知の領土の分割がほぼ完了していたからである。活字印刷により出版された最初期の書物についての分析に始まり、20世紀を迎えるや、書物の「意味内容は書誌学者の関知するところではない」(グレッグ)とまで言いきるに至ったイギリスの「純粋書誌学」とは違い、日本の書誌学は書物の内容との連絡を絶つことはなかった。ただし、それらを専門に扱う学問に対し新参の書誌学はひどく控えめで、書誌学は既成の学問の「補助学」の位置に長く甘んじてきた。「国史学・国語学・国文学・日本漢文学・日本仏教史学等は、書誌学を主要な補助学と考へる事は当然である」(川瀬一馬)。こうした状況にある日本の書誌学にとって、「純粋書誌学」を批判し、コミュニケーション論などの新たな研究と結びつくことによって書誌学と書物の内容とを再び関係づけ、「新しい知識を促進する機能」を書誌学に回復しようとするマッケンジーの提案は刺激的である。

日本文学を含む多様な分野の研究者が参加して取り組んでいる総合書物学は、古典籍を中心とする日本の書物を対象に、これまでの書誌学と諸学との関係を見直し、伝統的な学問分野とは違ったやり方で書物を読み解き、書物を新たな知をもたらす研究資源とするためのさまざまな試みの総称である。

16:00~16:45

研究報告3 「人情本コーパスの表記情報アノテーション」

藤本灯(国立国語研究所言語変化研究領域特任助教)
高田智和(国立国語研究所言語変化研究領域准教授)

本発表では、国立国語研究所が現在構築中の人情本テキストデータに、種々の表記情報(平仮名/片仮名、字母、連綿情報等)を付与した過程と結果を報告し、近世版本における表記研究への応用可能性について検討する。

ひまわり版「人情本コーパス」Ver. 0.1(江戸時代編Ⅱ 人情本) 【動画】国立国語研究所のコーパス ~ありのままの日本語を知るために~(6分32秒)
17:30~19:00

レセプション

7月30日(土) プログラム詳細
総合司会:寺島恒世(国文学研究資料館副館長(企画調整担当))
9:30~

受付開始

10:00~11:20

パネル1 「アジアのなかの日本古典籍」

  1. 報告1「日本における中国舌珍書『傷寒金鏡録』の受容」

    梁嶸(北京中医薬大学中医診断系教授)

  2. 報告2「『毛詩品物図考』の成立・流布をめぐって―」

    陳捷(国文学研究資料館研究部教授)

  3. 報告3「日本古典籍としての漢籍―日本語の歴史的典籍のその先にあるもの―」

    入口敦志(国文学研究資料館研究部准教授)

【要旨】
本パネルは国文研主導共同研究という枠組みのなかの「アジアの中の日本古典籍―医学・理学・農学書を中心として―」と「表記の文化学?―ひらがなとカタカナ―」との二つの共同研究の研究報告である。梁?「日本における中国舌診書『傷寒金鏡録』の受容」は舌の変化によって健康状態を判断する「舌診」の専門書の日本での受容状況を考察し、陳捷「『毛詩品物図考』の成立・流布をめぐって」は、江戸時代の『詩経』名物考証書の一つを例として、古典籍の画像データベースの意義と問題点を考える。なお、入口敦志「日本古典籍としての漢籍―日本語の歴史的典籍のその先にあるもの―」は日本の書記方法は漢文から始まり、その後も学問・技術を支えてきた点に注目し、漢文も日本語であるということを、医学書の表記をとおして考えてみたい。

11:20~12:10

休憩(50分間・昼食)

12:10~13:40

パネル2 「日本漢文学研究を“つなぐ”―通史的な分析・国際発信・社会連携―」

概要説明「日本漢詩文研究をめぐる諸問題」

合山林太郎(慶應義塾大学文学部准教授)

  1. 報告1「集団の場をめぐって(古代日本漢詩文研究の立場から)」

    滝川幸司(京都女子大学文学部教授)

  2. 報告2「誰のための「五山文学」か(中世日本漢詩文研究の立場から)」

    中本大(立命館大学文学部教授)

  3. 報告3「望まれた読み手とは(近世日本漢詩文研究の立場から)」

    福島理子(帝塚山学院大学リベラルアーツ学科教授)

  4. 報告4「フランス語圏における日本漢文学への眼差し(古代・中世を中心に)」

    ジュリアン・フォーリ(フランス高等研究実習学院博士課程)

  5. 報告5「英語圏における日本漢文学への眼差し(近世・近代を中心に)」

    マシュー・フレーリ(ブランダイス大学准教授)

討議「新しい日本漢文学の研究のあり方を探る―誰にどのようにつなぐか?」
要旨

日本漢詩文(日本人が作った漢詩や漢文)は、今日、様々な文芸ジャンルの中でも、とくに大きな研究発展の可能性を持つ領域として注目を集めている。しかし、そこには、いくつかの乗りこえられるべき課題もある。そして、それは、以下に述べるように、"つなぐ"ことによって解決すべき問題として理解し得るように思われる。 まず、日本文学領域において、古代・中世・近世・近代など、時代ごとに行われている研究を "つなぐ"必要がある。すなわち、それぞれの時代において異なる問題意識を共有し、作品へのアプローチや学術用語についても、相互参照可能なかたちへ改めてゆくべきであろう。日本漢詩文の全体像に関して生産的な検討を行うためにも、こうした作業は必要不可欠のものと言える。

次に、研究の成果を社会と"つなぐ"ことも、積極的に考えるべきテーマと言える。学習指導要領の改正などにより、現在、日本人が作った漢詩や漢文が、高等学校の国語教科書に収録されるようになってきている。最新の研究の成果を踏まえつつ、どういった作品が教科書に収録されるべきか、あるいは、研究と教育とをどのように連携させるかといったことについて、具体的な議論を行うべきである。

最後に、海外における日本漢文学の研究を、日本における研究をどのように "つなぐ "かについても考えなければならない。日本漢詩文への関心は、近年、世界の様々な地域で高まっているが、それぞれの文化圏において、異なる視点から分析がなされている。こうした動向と日本国内での研究の蓄積とを接続し、立体的・多面的な認識を形成することが求められている。

このパネルでは、本共同研究においてこれまで行ってきた試みと成果を報告する。また、英語圏及びフランス語圏における日本漢文学研究の現状について紹介する。その上で、時代ごとに細分化した日本漢詩文研究を通史的に記述するために、どのような工夫が必要か、さらに、研究を国際的に発信し、また社会において役立てるために、どのようなモデルを考え得るかについて討論してゆく。

13:40~13:50

休憩(10分間)

13:50~15:20

パネル3 「中世の異界 ― 内と外 ―」

概要説明

齋藤真麻理(国文学研究資料館研究部教授)

  1. 報告1「地獄とこの世 ―『富士の人穴草子』に於ける異界観 ―」

    ケラー・キンブロー(コロラド大学ボルダー校アジア言語文明学部准教授)

  2. 報告2「御伽草子に見る中世後期の夫婦観―「理想の妻」としての異界の女性 ―」

    若林晴子(プリンストン大学)

  3. 報告3「病草紙 ― 内なる異界としての身体 ―」

    山本聡美(共立女子大学文芸学部教授)

討議「新しい日本漢文学の研究のあり方を探る―誰にどのようにつなぐか?」

ディスカッサント:
ポール・スワンソン(南山大学人文学部教授)
金沢英之(北海道大学大学院文学研究科准教授)

要旨

本パネルは文学における境界性を考究するため、中世における異界を取り上げ、その内と外の両面から考察を加えることにより、異界生成の文化的・思想的背景を明らかにする。そのためには文字資料のみならず、絵画資料をも視野に入れる必要がある。

14世紀から17世紀に量産された室町時代物語には、しばしば異界の様相が語られており、挿絵とともに当時の異界意識が濃厚に反映されている。たとえば、『富士の人穴草子』には地獄めぐりの様相が活写されており、「現世界」と「あの世」を武士の旅物語の中で対立的に見せる。しかし、死の境界を越え、地獄を訪れる主人公の仁田四郎忠綱が閻魔王に教わる罪と罰の話は、冥土よりも人間界に繋がり、両世界の対立性を裏切ることになる。

また、『御曹子島渡り』『梵天国』『浦島太郎』などは、日本人の主人公と異郷・異界の女性との婚姻譚である。境界を超えた婚姻ゆえに、主人公たちは通常よりも困難な局面にぶつかるが、女性たちは状況打開のため、「理想的な妻」としての道徳的義務を果たす。異界との境界を越える婚姻の描写を検証することにより、中世後期に登場する「理想的な夫婦の絆」を提示した儒教的イデオロギーの一端が明らかとなろう。

さらに、平安時代末期から鎌倉時代初期に成立した「病草紙」には、多種多様な病が描かれている。本作品は経典(『正法念処経』)にある経説絵巻としての性質を備え、かつ、京都及びその周辺地域の風俗と融合した説話画としての一面も看取される。病、あるいは身体という、人間にとって最も「内なる」ものを、経説・説話として「他者化」していくメカニズムの考究は、中世における異界観念の生成過程を考える上で、重要かつ新しい視点と思われる。

以上の報告を通じて、中世における異界生成と継承の諸相を明らかにしたい。

15:20~15:30

休憩(10分間)

13:50~15:20

パネル4 「古典籍を活用する/情報を活用する」

概要説明

山本和明(国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター特任教授)

  1. 報告1「くずし字OCR技術の現状と展望」

    大澤留次郎(凸版印刷株式会社情報コミュニケーション事業本部)

    「くずし字OCR」は古典籍で用いられているくずし字を自動的に読み取ることで、翻刻作業の効率化を図る仕組みである。また、翻刻後のテキストデータを扱いやすいデータ形式に変換することで、利活用の推進にも資するものと考えている。本セッションでは、これまでの実証実験の結果および今後の見通しについて報告する。

  2. 報告2「古典籍画像のための実験的ウェブアノテーションツール」

    林正治(一橋大学情報基盤センター助教)

    異なる所蔵機関にある古典籍画像群から一つの仮想的なコレクションを作ることを目的としている。静的なコレクションを定義するのではなく、動的なコレクション定義を実現する。本研究ではその定義にウェブアノテーション技術を用いる。古典籍画像のオンライン公開が進めば、研究者による様々な研究利用が想定される。本報告では、古典籍画像活用の一例として、ウェブアノテーションによる古典籍画像の動的なコレクション定義手法について述べる。

  3. 報告3「人文学オープンデータ共同利用センターにおける日本語歴史的典籍の利活用」

    北本朝展(国立情報学研究所コンテンツ科学研究系准教授)

    情報・システム研究機構では、2016年4月1日に「人文学オープンデータ共同利用センター」を立ち上げ、データ駆動型人文学の振興に寄与する活動を展開する計画を練っている。この活動に不可欠となるオープンデータの中でも特に国文学研究資料館の日本語歴史的典籍データに焦点を合わせ、これをどのように解析し公開すれば共同利用の拡大に寄与するか、画像解析や人工知能などの研究の観点からいくつかのアイデアを示したい。

17:00

閉会の挨拶

谷川惠一(国文学研究資料館副館長(研究担当))

歴史的典籍オープンデータワークショップ
~使いたおそう!古典籍データ~

歴史的典籍オープンデータワークショップ ~使いたおそう!古典籍データ~

日時

平成28(2016)年12月9日(金)15:10~18:10

場所

国文学研究資料館 2F大会議室

主催

人間文化研究機構国文学研究資料館

共催

情報・システム研究機構国立情報学研究所
情報処理学会 人文科学とコンピュータ研究会
人間文化研究機構国立国語研究所
国立国会図書館
情報・システム研究機構国立情報学研究所
情報・システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設
プログラム詳細

第1部 歴史的典籍オープンデータを知る

15:10~15:25
あいさつ/歴史的典籍に関する大型プロジェクトの概要
15:25~16:05
データ/ツール紹介

第2部 歴史的典籍アイデアソン

16:20~16:30
オリエンテーション
16:30~17:00
セッション1
17:00~17:10
小休憩
17:10~17:40
セッション2
17:40~18:10
発表・講評
18:30~
懇親会
グループ成果まとめPDF

ワークショップ「古典」オーロラハンタ-2

ワークショップ「古典」オーロラハンタ-2

日時

平成29(2017)年2月19日(日)13:30~16:30

場所

国文学研究資料館2F大会議室

主催

人文化研究機構国文学研究資料館
情報・システム研究機構国立極地研究所
総合研究大学院大学(総研大)学融合推進センター
詳細

本ワークショップは、以下の事業として実施しました。
・「機関拠点型基幹研究PJにおける異分野融合研究創成に関するプロトタイププログラム作成事業」
・歴史的典籍NW事業
・総研大学融合共同研究事業「オーロラと人間社会の過去・現在・未来」

概要

古典籍および天文に興味がある一般の方に参加していただき、古代・中世における古典籍・古記録のなかからオーロラ・彗星・隕石などに関する記述の抽出作業を行いました。

平成27(2015)年度

第1回日本語の歴史的典籍国際研究集会
可能性としての日本古典籍

2016年CEAL(Council on East Asian Libraries)年次大会

日時

平成27(2015)年 7月31日(金)~8月1日(土)(2日間)

場所

国文学研究資料館 大会議室(東京都立川市緑町10-3)

主催

大学共同利用機関法人
人間文化研究機構国文学研究資料館
全体ダウンロードPDF
7月31日(金) プログラム詳細
総合司会:寺島恒世(国文学研究資料館副館長(企画調整担当))
13:00

受付開始

13:30

開会の挨拶

今西祐一郎(国文学研究資料館長)

13:35

機構長挨拶

立本成文(人間文化研究機構長)

13:40

来賓挨拶

文部科学省(予定)

13:45

趣旨説明

谷川惠一(国文学研究資料館副館長(研究担当))

14:00~15:00

基調講演 「古典籍共同研究とオープンサイエンス」

有川節夫(前九州大学総長)

15:00~15:20

休憩(20分間)

15:20~16:50

パネル1 「古典籍研究の近未来」

プロジェクト紹介(5分)

座長:山本和明(国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター特任教授)

  1. 報告1「文書画像の全文検索システム」(15分)

    寺沢憲吾(公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科准教授)

  2. 報告2「古典籍画像を利用したオンライン協働と翻刻訓練の実現に向けて」(15分)

    橋本雄太(京都大学大学院文学研究科情報・史料学専修博士後期課程)

  3. 報告3「古典籍の画像分析に向けて」(15分)

    北本朝展(国立情報学研究所コンテンツ科学研究系准教授)

  4. 報告4「研究活動としての人文学デジタル化 ―仏教学知識基盤を事例として」(15分)

    永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所主席研究員)

小休憩 (5分)

討議(20分)

討議司会:後藤真(人間文化研究機構資源共有化担当特任助教)
パネリスト:山本和明、寺沢憲吾、橋本雄太、北本朝展、永崎研宣

16:50~17:00

事務連絡

17:00~17:30

移動

17:30~19:00

レセプション

8月1日(土) プログラム詳細
総合司会:小林健二(国文学研究資料館研究部研究主幹)
10:00~

受付開始

10:30~12:00

パネル2 「総合書物学への挑戦」

概要説明(5分)

座長:谷川惠一(国文学研究資料館副館長(研究担当))

  1. 報告1「東アジアの医書・農書・理学書への新たな視界」(15分)

    陳捷(国文学研究資料館研究部教授)

  2. 報告2「日本古典籍の書誌概念と書誌用語の諸問題」(15分)

    落合博志(国文学研究資料館研究部教授)

  3. 報告3「文化としての表記」(15分)

    入口敦志(国文学研究資料館研究部准教授)

討論(40分)

ディスカッサント:
ルーカ・ミラージ(ローマ大学大学研究員(講師))
飯倉洋一(大阪大学大学院文学研究科教授)
小林一彦(京都産業大学日本文化研究所所長・教授)

12:00~13:00

休憩(60分間・昼食)

13:00~13:50

講演 「国際共同研究の意義―古活字版の終焉に向けて」

ピーター・コーニツキー(ケンブリッジ大学アジア中東研究学部 名誉教授)

13:50~14:00

休憩(10分間)

14:00~15:30

パネル3 「紀州地域と寺院資料・聖教―延慶本『平家物語』の周縁―」

研究計画概要説明(5分)

座長:大橋直義(和歌山大学教育学部准教授)

  1. 報告1「智積院聖教における「東山」関係資料についてー智積院蔵『醍醐祖師聞書』を手懸かりとしてー」(15分)

    宇都宮啓吾(大阪大谷大学文学部教授)

  2. 報告2「増吽年譜雑考ー安住院・覚城院蔵書調査を通してー」(15分)

    中山一麿(大阪大学大学院文学研究科招聘研究員)

  3. 報告3「根来寺と延慶本『平家物語』の周辺資料」(15分)

    牧野和夫(実践女子大学文学部教授)

■討論(40分)

ディスカッサント:佐伯真一(青山学院大学文学部教授)
藤巻和宏(近畿大学文芸学部准教授)
舩田淳一(金城学院大学文学部准教授)
牧野淳司(明治大学文学部准教授)

15:30~15:40 

休憩(10分間)

15:40~17:10

パネル4 「キリシタン文学の継承:宣教師の日本語文学」

概況紹介(10分

座長:郭南燕(国際日本文化研究センター海外研究交流室准教授)

  1. 報告1「ミルクで教理を育む:A・ヴァリニャーノの教育思想小考 」(10分)

    李梁(弘前大学人文学部思想文芸講座教授)

  2. 報告2「宣教師の辞書編纂」(10分)

    陳力衛(成城大学経済学部教授)

  3. 報告3「外国宣教師の韓国語書籍」(10分)

    李容相(又松大学校鉄道経営学部教授)

  4. 報告4「日本文化への貢献:S. カンドウ神父の著書」(10分)

    ケビン・ドーク(ジョージタウン大学東アジア言語文化学部教授)

質疑応答、総合討論(40分)

総合コメンテータ:川村信三(上智大学文学部史学科教授)

ディスカッサント:
北原かな子(青森中央学院大学看護学部教授)
申銀珠(新潟国際情報大学国際学部国際文化学科教授)
谷口幸代(お茶の水女子大学グローバルリーダーシップ研究所准教授)

17:10

閉会の挨拶

谷川惠一(国文学研究資料館副館長(研究担当))

2016年CEAL(Council on East Asian Libraries)年次大会

2016年CEAL(Council on East Asian Libraries)年次大会

日時

平成28(2016)年3月30日(水)

場所

米国ワシントン州シアトル

主催

CEAL
(Council on East Asian Libraries)
CEAL ProgramダウンロードPDF
発表

Talk1「Future of the Network for Research on Japanese Classical Books」

山本 和明(国文学研究資料館 古典籍共同研究事業センター副センター長)

歴史的典籍オープンデータワークショップ
~古典をつかって何ができるか!じんもんそん2015~

日時

平成27(2015)年12月18日(金)15:00~19:00

場所

メルパルク京都6F会議室

主催

人間文化研究機構国文学研究資料館

共催

情報・システム研究機構国立情報学研究所

後援

情報処理学会 人文科学とコンピュータ研究会
日本デジタル・ヒューマニティーズ学会
プログラム詳細

第1部 歴史的典籍オープンデータを知る

15:00~15:20
歴史的典籍に関する大型プロジェクトの概要
15:20~16:20
データ紹介1~3(各20分程度)
16:20~16:30
質疑応答・ディスカッション

第2部 歴史的典籍アイデアソン

17:00~17:10
オリエンテーション
17:10~17:40
アイデアソン・セッション1
17:40~17:50
小休憩
17:50~18:20
アイデアソン・セッション2
18:20~18:30
小休憩
18:30~19:00
発表・まとめ
グループ成果まとめPDF

ワークショップ「古典」オーロラハンタ-

日時

平成28(2016)年3月13日(日)13:30~16:30

場所

国文学研究資料館2Fオリエンテーション室

主催

総合研究大学院大学学融合推進センター
人間文化研究機構国文学研究資料館

支援

総研大平成27年度学融合共同研究
「オーロラと人間社会の過去・現在・未来」
詳細

本ワークショップは、以下の事業として実施しました。
・歴史的典籍NW事業
・総研大学融合共同研究事業「オーロラと人間社会の過去・現在・未来」

概要

古典籍および天文に興味がある一般の方に参加していただき、古代・中世における古典籍・古記録のなかからオーロラに関する記述(例えば「赤気(赤いオーロラ)」の文字を探す)の抽出作業を行いました。対象は寺社・公家の日記を中心とした古記録で、刊本を使用しました。

平成28年1月28日~29日にIPC生産性国際交流センター(神奈川県三浦郡葉山町)で開催された総合研究大学院大学学融合推進センターの公開研究報告会において、片岡龍峰准教授のポスター発表が最優秀賞を受賞しました。

国立極地研究所
学融合共同研究『オーロラと人間社会の過去・現在・未来』が総研大の「学融合推進センター公募型研究事業・公開研究報告会」の最優秀賞を受賞
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