古活字本と整版本

江戸初期は、活字版から整版への移行期で、同じ著作が両方の形で出版されることもあり、古活字本を覆刻した整版本もしばしば刊行されました。ここでは、両者の判別の方法について解説します。

匡郭のあるもの

史記

史記

匡郭きょうかくのあるもの

古活字本の匡郭は、上下左右の線を組み合わせて作るため、隅にしばしば隙間が生じます。匡郭のある版本では、匡郭の隅に隙間があるかどうかで、古活字本か整版本かの見当づけができます。

匤郭のないもの

諸礼集

諸礼集

匤郭きょうかくのないもの

古活字本の活字は齣によって高さが微妙に異なり、墨付きが一様でないことから、匡郭のない版本では、墨付きの様相が古活字本か整版本かの判別の拠り所の一つとされます。しかし古活字本と認定するのにより確実な方法は、欠損活字の使用を確かめることでしょう。

右頁7行目と左頁3行目の「ひき」の「ひ」に共通の欠損があり、同一の活字と認められる。

古活字覆刻整版本

伊勢物語

伊勢物語

古活字覆刻整版本こかつじふっこくせいはんぼん

江戸初期には、古活字本を覆刻した整版本がしばしば作られました。一見すると元の古活字本と酷似していますが、連続文字のあり方などが整版本であることを示しています。

「とり(鳥)のこ(子)をとを(十)つゝとを(十)はかさ(重)ぬとも」の「とをは」と「かさ」がそれぞれ連続し、かつ「か」の上端が「は」にくい込んでいるが、「とをはかさ」のような無意味な連続活字が作られる可能性は低い。本書が基づいた古活字版(嵯峨本)では、「とをは」と「かさ」は離れている。