成唯識論述記
春日版
平安末期頃から奈良の興福寺で出版された本で、しばしば刊記に法相宗の守護神である春日の神への信仰が表明されていることから、春日版と通称される。法相宗関係の経論やその注釈書が主体。
大毘盧遮那成仏神変加持経
高野版
鎌倉中期から高野山で出版された本で、弘法大師の著作を初め、真言宗関係の経典や教理書が中心。冊子本は粘葉装に装訂され、高野紙という厚手の楮紙を用いるのが特色。
千字文註
五山版
鎌倉中期から、京都と鎌倉の五山を初めとする禅宗寺院で出版された本で、仏書のほか漢籍なども少なくないことと、中国や朝鮮の版本の強い影響が見られることが特色。
皇朝類苑
勅版
天皇が命じて出版させた本。後陽成天皇による文禄勅版（文禄２年〔1593〕刊『古文孝経』、現存せず）と慶長勅版（慶長２年〔1597〕～８年刊『日本書紀神代巻』『論語』など）、後水尾天皇による元和勅版（元和７年〔1621〕刊『皇朝類苑』）がある。
船弁慶
嵯峨本
本阿弥光悦の創始した光悦流の書体を持つ一群の版本（大半は古活字本）は、嵯峨の角倉素庵の資金援助で出版されたと言われることから、嵯峨本と通称されている。ただし光悦と素庵の関与については明証がなく、想像にとどまる。
伏見版
徳川家康が慶長四年（1599）から十一年にかけ、主に伏見の円光寺で活字により出版させた本。『貞観政要』『吾妻鏡』『周易』『七書』などが知られる。
往生要集抄
叡山版
比叡山で出版された本。鎌倉時代にもあるが、一般には慶長～寛永期に出版された古活字本を指す。天台宗関係の仏書が中心。
無言抄
慶長元和期の古活字本
古活字印刷が隆盛を迎えた慶長～元和期の古活字本で、後の寛永期のものより概して書型が大きく、文字も大ぶりである。
うつほ物語
寛永期の古活字本
古活字印刷が隆盛から次第に衰退に向かった寛永期の古活字本で、概して文字が小ぶりである。
歌仙金玉抄
江戸時代の整版本
古活字本の隆盛が終わった十七世紀半ば以降、再び整版本が主流になりました。古活字本では困難な、絵と文字が入り組んだり、和歌を散らし書きした版面は、整版本ならではのものです。
南蛮寺興廃記
近世～近代の木活字本
江戸時代後期から明治時代にかけて、木製の活字で印刷した本が作られました。これを近世（近代）木活字本と言います。
博物新編
近代の整版本
明治時代になっても、江戸時代と同じ方法で整版本が作られていました。しかし木版印刷による新刊本は、大正頃にはほぼ消滅したようです。
飛騨匠物語
近代の和装 金属活字本
明治時代には、金属活字版という新しい方法で印刷し、伝統的な袋綴の和装本に仕立てた本も多数作られました。