各時代の写本

日本の写本の歴史は七世紀に始まり、現在に及んでいます。ここでは、その時代的変遷を見ていただくために、各時代の写本の例を選んで展示します。

奈良時代の写本

大般若経 断簡

大般若経 断簡

奈良時代の写本ならじだいのしゃほん

奈良時代の写本で現存するものはほとんどすべて仏書で、その大半が写経です。これらは、現在の所蔵に関わりなく、本来は奈良の諸寺院に伝来したものが主体です。

平安時代の写本

金剛頂瑜伽金剛薩埵五秘密修行念誦儀軌

金剛頂瑜伽金剛薩埵五秘密修行念誦儀軌

平安時代の写本へいあんじだいのしゃほん

現存する平安時代の写本には、仏書以外の国書や漢籍も少なくありませんが、量的にはやはり仏書が主体です。ただし写経の割合は減少し、日本で作られた教理や修法に関する書が増えてきます。

全体に朱のヲコト点を付す。ヲコト点は真言宗小野流で用いられた東大寺点。

鎌倉~南北朝時代の写本

源氏物語 松風

源氏物語 松風

鎌倉~南北朝時代の写本かまくら~なんぼくちょうじだいのしゃほん

鎌倉~南北朝時代は現存する写本の数も増え、ジャンルも広がってきます。また、著者の自筆本や成立年時に近い写本が残ることも持筆されます。

室町時代の写本

詞花和歌集

詞花和歌集

室町時代の写本むろまちじだいのしゃほん

室町時代の写本は、現存数が格段に増加し、著者自筆本の伝わるものも稀ではありません。

江戸時代の写本

うつほ物語 俊蔭

うつほ物語 俊蔭

江戸時代の写本えどじだいのしゃほん

出版が盛んになった江戸時代にも、依然として多量の写本が作られました。時代が近いだけに、現存する量も厖大です。

明治時代の写本

慕景集 附作者考

慕景集 附作者考

明治時代の写本めいじじだいのしゃほん

明治時代には、和紙に墨で書く写本が普通に作られていました。しかし大局的には、伝統的な写本が書物の世界で重要な役目を終えつつあったと言えます。