書名(題記)

和書の多くには、書名(題記)が記載されています。それらは表紙にあるもの(外題)と、本の内部にあるもの(内題)に大別され、内題はその位置によってさらに区別されます。

外題

表紙にある書名を外題と言います。これに対し、本の内部にある書名が内題です。外題は、題簽を用いる場合と、表紙に直接記載する場合があります。

外題

源氏物語 あげまき

源氏物語 あげまき

打付書き外題うちつけがきげだい

表紙に直接書かれた外題を、打付書き外題と言う。和書では古くは題簽を使わず、表紙に打付書きされていた。一般に題簽を用いるようになったのは、室町時代頃以降と見られる。

外題

源氏物語 ゑあはせ

源氏物語 ゑあはせ

書き題簽かきだいせん

外題や巻冊の順を記載するため、表紙に貼る細長い紙片や布片が題簽で、そのうち、文字が筆で書かれたものを書き題簽と言う。写本は普通書き題簽である。

外題

狭衣物語

狭衣物語

刷り題簽すりだいせん

題簽のうち、文字が印刷されたものを刷り題簽と言う。主として版本に用いられるが、稀に書肆によって製作された写本に使われることもある。

外題

鏡山誉仇討

鏡山誉仇討

絵題簽えだいせん

題簽のうち、書名のほかにその本の内容に関わる絵が描かれたものを絵題簽と言う。江戸中期以降、草双紙類に多用された。

外題

狂歌列仙画像集続編

狂歌列仙画像集続編

刷り外題すりげだい

表紙に直接印刷された外題を、刷り外題と言う。文字だけのものと、題簽の形に枠で囲んだものがある。丁数の少ない、簡素な本によく用いられた。

内題

内題

懐風藻

懐風藻

見返し題みかえしだい

内題の一種で、前見返しにあるものです。写本や江戸時代以前の古版本には普通ありません。

見返しは薄墨で刷られている。

内題

風俗文選

風俗文選

扉題とびらだい

内題の一種で、扉にあるものです。

内題

文鳳山水画譜

文鳳山水画譜

序題じょだい

内題の一種で、序の冒頭にあるものです。「(書名)序」という形になっているのが一般的です。

内題

内裏雛

内裏雛

目録題もくろくだい

内題の一種で、目録の冒頭にあるものです。「(書名)目録」という形になっているのが一般的です。

本書は、目録題「山城名所寺社物語」、巻首題・尾題「内裏雛」、版心書名「京の花」で、享保2年刊本の一冊の外題には「〈山城/名所〉たいりひい(?)□」とある。一つの本で二種類の書名を持つものはしばしばあるが、全く異なる三種類の書名があるものは珍しい。

内題

年中行事歌合

年中行事歌合

巻首題かんしゅだい

内題の一種で、本文の冒頭にあるものです。狭義では、この巻首題を内題と呼ぶことも多くあります。

内題

内裏雛

内裏雛

柱題はしらだい版心書名はんしんしょめい

冊子本の版本の版心部分(柱)にあるもので、しばしば柱題と呼ばれますが、正式な題記ではなく書名の略称の場合も多いので、版心書名と呼ぶのが穏当です。

内題

内裏雛

内裏雛

尾題びだい

内題の一種で、本文の末尾にあるものです。「(書名)終」という形になっていることがしばしばあります。

内題

澄月法師千首

澄月法師千首

跋題ばつだい

内題の一種で、跋の冒頭にあるものです。「(書名)跋」という形になっているのが一般的です。

内題

吉水法語集

吉水法語集

小口書こぐちがき

下小口に書かれた記事です。所蔵者が整理保管の便宜上、書名や巻次などを記入したものが大半ですが、それ以外の情報が書かれることもあります。

小口に書名はなく、「宝順求」という入手識語が記されている。