奥書と識語

写本において、末尾に書写の年月日や書写者の名などを記したものが奥書で、写本に特有のものです。識語は、所蔵者などがその本や著作について書き入れた言葉で、写本にも版本にもあります。

奥書

覚禅鈔 六字明王経法、嵯峨のかよひ路

覚禅鈔 六字明王経法、嵯峨のかよひ路

奥書おくがき

写本を書写した人が、年月日や名前、書写の事情などを末尾に記したものです。本奥書と書写奥書の別があります(Ⅳの「本奥書と書写奥書」を参照してください)。

識語

三種歌合、源氏物語新古今和歌集ほか抜書

三種歌合、源氏物語新古今和歌集ほか抜書

識語しきご

本の所蔵者などが、その本や著作について書き入れた言葉です。奥書と同様本の末尾に書かれるほか、冒頭部や途中の余白に書かれることもあります。

三種歌合
(後見返し朱書識語)此三種の哥合は京の三条通なる岐阜屋といふ家に/ありてさきつとし京に在けるほとしたしく見たり/いつれもうるはしき真跡にそ有ける板にゑれるは/寺町の本能寺の前なる銭屋惣四郎とよへる書肆なり/安政五年午正月四日  豊城記之
こはこその冬或人の望みけれは京へいひやりてもとめ/来りしついておのれももたねは共にもとめたる也