かるた 百花繚乱!
会期:平成30年1月15日(月)~3月13日(火)
休室日:日曜日・祝日、展示室整備日(2月14日)
かるたは、天正年間(1573~1593年)に、ポルトガルより持ち込まれた「天正カルタ」と呼ばれるカードが由来といわれ、ポルトガル語の「カード」が語源とされます。「天正カルタ」は遊戯や賭博に用いられ、日本でも禁令が発布されるほど流行し、日本風のデザインにアレンジされた「うんすんカルタ」などが出回ります。
一方で、貴族の間では貝合わせを発展させて貝の裏面に和歌を書き、これを合わせる貝覆いなどの遊びが室町期より流行し、『百人一首』や『伊勢物語』などを題材とした優美な歌かるたが作られました。庶民の間で流行するに伴って、木版摺りのものも相当数作られます。
ここでは、一般的な「百人一首かるた」「伊勢物語かるた」「源氏かるた」のほか、「内裏名所百首かるた」や「唐詩五絶かるた」などの珍しいかるたもご紹介します。新年らしい、華やかな「かるた」の世界をのぞいてみて下さい。
展示ケース1
【百人一首かるた】〔江戸中期〕写
『百人一首』を題材とした歌かるた。札表は絹本で、絵・文字ともに肉筆描き。読み札には金砂子が霞のように施され、上部に作者名と和歌の上の句が記され、下部には精細な歌仙絵が描かれている。畳には白い臣下用の高麗縁と、縦縞に彩色が施された天皇用の繧繝縁の二種類がある。取り札は、金砂子散らしに下の句が様々に散らし書きされている。箱は二重箱で、内箱は鶴丸紋入り塗箱(日野家旧蔵か)。帙の内側に舞楽の絵が描かれる。
展示ケース2
【伊勢物語かるた】〔江戸中期〕写
『伊勢物語』に読み込まれる和歌を題材とした、肉筆の絵入りかるた。札表は紙本で、読み札は銀箔を霞のように散らし、物語の場面や和歌にちなんだ多様な絵と和歌の上の句をしたためる。取り札は、全体に銀箔を散らした上に文字が散らし書きされる。奈良絵風の絵と装束の輪郭や模様などを銀泥で描くなど、細部に優美さを備えている。畳紙四包に分けて、黒塗りの箱に収められる。鉄心斎文庫の伊勢物語コレクションのひとつ。
展示ケース3
【内裏名所百首かるた】〔江戸中期〕写
建保3年(1215)10月に順徳天皇が主催した「建保名所百首」を題材とした珍しいかるた。建保内裏名所百首とも呼ばれ、名所による組題百首の嚆矢とされる。順徳天皇の他、定家・家隆など12名が列座するが、本かるたは順徳天皇詠。春20・夏10・秋20・冬10・恋20・雑20の百首が名所題ごとに部類される。読み札は各名所にちなんだ絵が彩色で描かれ、和歌の上の句が記される。取り札は読み札よりも小さな札に下の句(文字)のみが書かれたもの。一般的な『百人一首』や『伊勢物語』などと比べてマイナーな古典なため、名所とそれにちなんだ和歌を愛でるために作られたものか。箱には「順徳院御製名所百首 謌札」と記される。
展示ケース4
【〈新板〉源氏物語かるた】〔江戸中期〕刊
『源氏物語』を題材にした多色摺りのかるた。一般的な『源氏物語』に読み込まれた和歌を取り上げた歌かるたではなく、源氏香と役者絵を描いた変わったもの。『源氏物語』の桐壺から夢浮橋までの五十四帖(若菜が上下に分けられ全55組)が題材となっており、一方には源氏香、もう一方には『源氏物語』の役者絵を描いた絵札で、どちらにも巻の題名が記される。遊び方は不明であるが、漢字に読みがふられていることから教育的な配慮が見られる。袋が付属している。
【唐詩五絶かるた】〔明治大正期〕写
中国唐代の漢詩の中から五言絶句を選び、かるたに仕立てたもの。読み札に初句・第二句を記し、取り札に第三句・第四句を記す。読み札の裏面に取り札の内容を覚え書きとして記している。読み札・取り札ともに、絵や装飾はなく文字ばかりであるが、したためられた書跡を楽しむために作られたものではない。訓や返り点が付されているため、教育目的に使用されたと思しい。