大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国文学研究資料館

館長あいさつ

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 年度が替わり、春から忙しい。
 国文研では昨年から準備を進めているいくつかのプロジェクトが本格的に稼働すると同時に、新規事業に着手することも計画しています。立川でいよいよ活溌に、新しい年度の充実したスタートを切ることができました。
 戸越時代から半世紀近く地道につみ上げてきた調査収集と日本古典籍総合目録データベース構築などの基幹事業の成果をふまえ、全館体勢で取り組んできた大規模学術フロンティア促進事業「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」の核心ともいうべき画像データベースを公開しました。昨年10月のことで、以来、当館の電子資料館へのアクセス数が格段に増え、当該「新日本古典籍総合データベース」の周知も順調に進んでいる模様です。総合データベースの存在が知られるにつれて、国内外にある複数の古典籍保有機関から学術協力や画像データの提携などに関する問い合わせが届いています。新しいデータベースの拡張と、それを基盤とする新たな研究の創成がいっそう重要な意義を持つようになるでしょう。
 今年は10年間に及ぶフロンティア促進事業の中間点にあたり、科学技術・学術審議会による中間評価を経て、いよいよ後半戦に入っていくことになります。画像データ作成と画像へのタグ付けに対してソーシャルタギングなど新たな手法を導入するとともに、国立情報学研究所等と協働して行っているこれまでにない検索技術の開発を推進し、新しいデータベースのコンテンツの充実とその機能の向上に取組みます。
 文学をはじめ、古典籍を扱う領域にかかわる諸学会との学術協定締結を増やしながら実体化させ、そのことで研究者コミュニティとの連携を強化し、大学共同利用機関としてのミッションをいっそう鮮明に位置づけるようにします。国文研は、日本文学研究の推進というコア事業を持ちながら、そのマテリアルである書物を広く他分野の研究者と、関心を寄せる世界中の人々に開放し、新たな知見の開発と文化的価値の創発に寄与することが求められています。
 この観点から、次の3 領域における活動を強化したいと考えています。
 ひとつは、異分野融合研究と、いわゆる異業種団体との協力体制です。昨年度の歴史的オーロラに関する国立極地研究所との共同研究成果の世界に向けた発信や、江戸料理本の画像公開とレシピウェブサイトへの搭載(公益財団法人 味の素食の文化センターおよびクックパッド株式会社)などは良い先例になったと言えます。
 もうひとつは、われわれとともにフロンティア促進事業を推進している各地の大学と自治体、各種法人などをプレイヤーとした地域との協働体制です。国文研が進めるネットワーク構築計画は、資料公開と研究者によるネットワーク構築が核心にあることは言うまでもありませんが、一方、その公開と活用が個々の大学の教育・研究とそれぞれの地域の生活文化の活性化に大きく寄与し得ることは論を俟ちません。地域との連携をいっそう強めることが求められる所以です。
 3つ目の領域は、グローバルなネットワーク作りの加速化です。現在進めている国際共同研究の遂行とともに、その成果を持続的に問うことのできる英語によるオープンソース・ジャーナルを発信したい。個々のプロジェクトを超えて日本の人文科学そのものを世界と共有する大きなきっかけになると考えます。
 これらに加え、研究者コミュニティの先に広がる社会にもアウトリーチすべく、いくつかの事業に着手・推進させていきます。今年度から、人間文化研究機構が率いる研究資源の可視化高度化プログラムに加わることによって、古典籍の展示方法などをめぐる先端的な研究が可能となります。秋に開催予定の特別展「祈りと救いの中世」では成果の一端を披露することになります。また昨年度に続き、文化庁との共同事業である「ないじぇる芸術共創ラボ」を拡充させながら、各アーティストと翻訳家が手がける作品制作に関する公開ワークショップや成果発表などを行って行きます。詳細は、春に全面改修したばかりの新規ウェブサイトに随時公開していきますので、折々に覗いてみてください。

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