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プロジェクト概要

 国文学研究資料館は、大規模学術フロンティア促進事業「日本語の歴史的典籍の国際研究ネットワーク構築計画」のもと、足かけ5年にわたり、古典籍の「書物」という面に焦点を絞り、書物と人との関わりを研究する「総合書物学」という異分野融合プロジェクトを推進してきた。当初の目標どおり、この成果は総研大における文化科学研究科共通科目「総合書物論」の開講に結実し、人文学の異文化融合研究の成果を大学院教育に還元するという新たな一歩を踏み出した。ただし、「総合書物学」プロジェクトは、前例のない研究スタイルそのものをめぐって理論的な基盤を構築しながらスタートしたものであり、各機関が対象とする膨大な史資料群を前に予算・人員的制約もあり、研究内容そのものはまだ緒に就いたばかりであるともいえる。

 そうした中、本プロジェクトは「総合書物学」のバージョンアップをはかるべく、2020年9月に文部科学省に策定された「データ駆動による課題解決型人文学の創成」(ロードマップ2020)の指針を見据え、新たなる時代のデジタルヒューマニティーズの成果などを適宜取り込みつつ、広領域連携研究の拡張を目指すと同時に、総研大における文化科学研究科共通科目「総合書物論」の展開に寄与し、学界ならびに社会への貢献を目指すものである。

 具体的には3つの研究ユニットから形成され、そのいずれも日常では顧みられる機会の少ない古い時代の書物群を対象とし、《語彙レベルや文字組成といった何らかの単位に基づいて断片化》→《付加価値を有するデータとして再構築》という共通したフローを基盤としている。こうした共通化は、相互に情報や意見の交換を行うことを活発にするとともに、共同研究集会の開催を通して、フィードバックや新たな展開へのブレイクスルーを呼び込むことを企図したものである。

 以上、本プロジェクトは各ユニットの成果を「総合書物論」という授業科目のもとに有機的に結びつけるという異分野融合の観点に基づいており、「総合書物学」のさらなる拡張を実現させる役割を担うべく始動するものである。