大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国文学研究資料館

能・狂言の資料

通常展示の一部のスペースを使って、能と狂言に関わる各種の資料を展示します。

会期:平成27年5月14日(木)~7月7日(火)
 (5月29日は展示室整備日のため休室します。)

 国文学研究資料館では、平成21年度に「能楽資料展」を開催しました。今回は、それ以後の新収品を中心に、能と狂言に関わる各種の資料を展示します。
 点数は僅かですが、伝存が知られながら長らく一般の目に触れていなかった能の伝書[でんしょ]や、新たに存在が知られた謡本[うたいぼん]の古写本・狂言台本など、注目すべきものを含んでいます。
 能(謡[うたい])や狂言が、どのようにして伝えられ、また享受されたか、展示資料を通して垣間見ていただければ幸いです。

tokusetsu_all.jpg


<二曲三体人形図[にきょくさんたいにんぎょうず]>

 袋綴大本[ふくろとじおおほん]1冊。室町末期写。「応永廿八年七月日世阿判[ぜあはん]」の奥書[おくがき]のある世阿弥[ぜあみ]伝書の写本で、児[ちご]・老人・女・武士・鬼など、風体[ふうてい]別に立ち姿や舞姿を描き、心持ちや演技のあり方を説明する。能の絵図として最古のもの。第8代観世大夫元尚[かんぜたゆうもとひさ](?~1577)筆と推定され、室町中期書写の金春禅竹[こんぱる ぜんちく]筆本に次ぐ古写本。川瀬一馬旧蔵書の内。

<謡稽古秘伝抄[うたいけいこひでんしょう]>

 袋綴半紙本1冊。延宝3年(1675)写。内題・外題[げだい]「謡稽古秘伝抄」。扉題「謡秘伝之書」。大半は謡の技術的な論であるが、世阿弥の伝書『花鏡[かきょう]』からの引用(「万能綰一心事[まんのうをいっしんにつなぐこと]」「音習道之事[おんしゅどうのこと]」の一部)と見られる箇所があり、注目される。奥書「於播陽苅屋城下以森本氏本写書[ばんようかりやじょうかにおいてもりもとしのほんをもってうつしかく]焉/延宝第三暮春念日校焉」。蔵書印記「□子□」。山鹿[やまが]文庫の内。

nougaku1-1.jpg nougaku1-2.jpg

<元和卯月本[げんなうづきぼん]>

 四半本3冊。元和6年(1620)刊。『白髭[しらひげ]』『唐船[とうせん]』『葛城[かづらき]』の3番。冊末に元和6年(1620)卯月の観世左近大夫暮閑[かんぜさこんたゆうぼかん](身愛、黒雪)[ただちか、こくせつ]の自筆識語を刻した観世流謡本で、識語の年月により「元和卯月本」と通称される。雲母引き鳥の子紙列帖装[きらびきとりのこがみれっちょうそう]を用い、紺地表紙に金泥[きんでい]の手描き絵のある豪華本。表紙絵は曲の内容にちなむものと、一般的な草花などを描くものの二種類がある。『白髭』は後者、『唐船』『葛城』は前者の例。

nougaku2.jpg

<鷺流狂言本[さぎりゅうきょうげんぼん]>

 袋綴横中本[よこちゅうほん]1冊。江戸末期写。外題、後筆にて「能狂言記」。扉題、「鷺流/雑狂言三人事[ざつきょうげんさんにんのこと]/廿二番」(「鷺流」は後筆)。その左に「守拙堂」「□真」の印記がある。後見返しに「七代目伝右衛門/自書」と記し、その下に「祐光/印」の印記がある。『舎弟[しゃてい]』以下22番所収。伝存の少ない鷺流のテキストとして貴重であり、筆者が明確なことも注目される。篠田融旧蔵能狂言写本コレクションの内。

<大蔵流狂言本[おおくらりゅうきょうげんぼん]>

 袋綴横中本6冊。外題「大蔵流/能狂言」は旧蔵者篠田氏の筆か。奥書等はないが、丁寧に書かれた写本で、素性の良さを思わせる。『大黒連歌[だいこくれんが]』『蛸』各2番(詞章は一致しない)の重複を含め、計111番所収。篠田融旧蔵能狂言写本コレクションの内。

<大蔵流間狂言本[おおくらりゅうあいきょうげんぼん]>

 袋綴横本1冊。能の間狂言のテキスト。後見返しに、貞享2年(1685)2月28日に書写した旨の、「豊前国宇佐宮住[ぶぜんのくにうさのみやじゅう]/賀徳氏[かとくし]」の奥書がある。その左に、「大蔵又左衛門正本/大蔵弥右衛門伝」とあり、大蔵流宗家の弥右衛門家の伝に基づくことが知られる。計43番所収。大蔵流間狂言のテキストとして比較的古いものであり、資料的に貴重である。

nougaku3-1.jpg

nougaku3-2.jpg

nougaku3-3.jpg

<興福寺薪猿楽南大門能図[こうふくじたきぎさるがくなんだいもんのうず]>

 1舗。江戸末期写。淡彩画で、文字は朱書。毎年2月に行われた興福寺薪猿楽の一環を成す、興福寺南大門前の能の図で、舞台とそれを取り巻く見物の人々、出演者の楽屋、諸役人などの様子が詳細に描かれる。江戸前期以後、薪猿楽は金春[こんぱる]・金剛[こんごう]・宝生[ほうしょう]の3座が2座ずつ交代で勤める形になっており、本図では「金剛座」と「宝生座」の楽屋が描かれているが、年は特定し難い。宝生座楽屋の横の「翁[おきな]座」は、薪猿楽において『翁』のみを演じた年預衆[ねんよしゅう]の楽屋である。

nougaku4.jpg

問い合わせ先

国文学研究資料館企画広報係
TEL:050-5533-2910 FAX:042-526-8606
E-mail:mail01.gif

ページトップ