大分合同新聞連載
平成27年1月29日(木)夕刊 マレガ・プロジェクト報告1 大友一雄
バチカン図書館において発見されたマリオ・マレガ神父収集豊後キリシタン文書群の概要調査は、これまでのところほぼ順調に進展しつつある。昨年11月1日、臼杵でのシンポジム「マレガ神父収集豊後切支丹文書群の魅力」では、バチカン図書館パシーニ館長、研究員のデリオ・ヴァニア・プロヴェールビオ氏を日本に招き開催することができた。両人には、日本そして大分に大いに親しんで頂いたように思われる。これらも弾みに調査・研究をさらに進展させたいと念じている。
とくに今年9月には、バチカン市国においてシンポジウムを開催予定である。大分臼杵に続いて、バチカンやイタリアの方々にも、この文書群の重要性を伝えたい。プロヴェールビオ氏は、マレガ神父自身の意向によって、1953年に文書群がバチカンに送られたことを明らかにした。理由は詳らかでないが、キシシタン研究を続けたマレガ神父の判断ということであれば、少なくとも文書群の価値は、日本にとどまらず欧州社会においても共有できると考えられたものであろう。つまり、豊後のキシシタン文書群は、その価値を世界の人々と共有できる存在と捉えたことになる。文書群が大分に伝えられなかったことは残念であるが、バチカンにあることを積極的に考えることも重要ではなかろうか。たとえば、欧州からのキリスト教の伝播と世界の国々の動向を比較するといったなかでは豊後のキリシタン文書群が大きな価値を発揮するに違いない。
このキリシタン文書群の価値を、また、文書がバチカンに大量に存在することを欧州の人々、世界の人々に伝える必要があろう。シンポジウムの実施はそのような意味がある。マレガ神父はイタリア語で江戸時代のキリシタン禁制、踏絵、キリシタン墓地などについて論文を発表してきた。豊後のキシシタン禁制に関する具体的な歴史を世界に伝えた最初の人である。
バチカン図書館の人々とともにキシシタン文書の調査・研究を行うことは、マレガ神父のそうした研究を継承することになり、豊後のキリシタン文書群を世界共有の記録遺産に高めることになる。9月のバチカン・シンポジムでは、是非日本からも多くの人に参加していただければと考えている。
(マレガ・プロジェクト代表、国文学研究資料館教授・大友一雄)
※ このページの記事は、大分合同新聞に掲載された記事を元に、研究の進展に応じて修正等が加えられています。記事掲載にあたり、中心となって活動した大分先哲史料館と大分合同新聞からの了解を得て作成されています。肩書はすべて当時。