国際連携部では、次世代育成を主な目的として、大学院生や司書を対象に、海外の学術交流協定先と「日本古典籍セミナー」を共催しています。
近年、インターネット上では、当館の「新日本古典籍総合データベース」をはじめ、あらゆる分野の日本古典籍を容易に参照できる環境が整いつつあります。日本古典籍を正しく扱い、読み解く力はますます重要となり、それを身につけることで新たな知見も得られるでしょう。以下にセミナーの概要を記し、講義資料を順次公開して参ります。是非とも日本古典籍の豊かな世界へ足を踏み入れてみて下さい。
セミナー概要
1.カリフォルニア大学バークレー校(バークレー、米国)
同大学には昭和25年に財閥三井家から購入したコレクション「三井文庫」があり、当館では昭和58年から同文庫の悉皆調査を行って目録等を刊行しています。セミナーはこのコレクションを対象に、当館教員を中心とした講師が注目すべき古典籍を取り上げ、新たな知見とともにその特徴を解説しています。
2.ハワイ大学マノア校(ホノルル、米国)
ホノルル美術館の協力を得て、同校と当館と3機関共催のセミナーを実施しています。美術館のリチャード・レインのコレクションについて、当館教員を中心とする講師陣が講義を行っています。また、このセミナーを契機として、コレクションの調査作業に着手した受講生有志を対象に、書誌調査をレクチャーしています。
3.北京外国語大学(北京、中国)
受講生が関心を寄せるテーマに焦点をあて、当該分野を牽引する研究者を講師に招いてセミナーを実施しています。多様なジャンルの研究者を招聘することで、次世代育成に加え、国際共同ネットワーク構築に資するセミナーとして位置づけられます。当館の「新日本古典籍総合データベース」をはじめ、インターネット上の資料画像の活用法も実践的に学んでいます。
〇第11回(2023年3月26日(日)14時~・オンライン開催)
「能狂言研究への招待―パフォーマンスと表象―」
第一部:世界のコレクション紹介
・シェラー・クインタナ氏
(神奈川大学助教・元ボストン美術館RA)
「ボストン美術館、その歴史と日本の収蔵品」
・宮本圭造氏(野上記念法政大学能楽研究所教授)
「能楽資料の宝庫―法政大学能楽研究所の蔵書紹介―」
第二部:講演
山中玲子氏(野上記念法政大学能楽研究所教授)
「パフォーマンスの規則と記録」
講演要旨:能や狂言は、室町時代に成立し現在まで演じ続けられている演劇です。そのため、研究には現在の上演を見ることも必要です。ただし、現在の能と室町時代の能はけっして同じではありません。古い時代の演出を知るためには、型付、囃子伝書、役者たちの逸話等々の資料を読み解くことも必要になります。録画技術が無い時代、演じられては消えていくパフォーマンスはどのように書き留め伝えられてきたのか。我々はその 資料を研究にどう利用できるのか。いくつかの例を紹介します。
※参加をご希望の方はこちらからお申し込みください。
〇第10回(2022年3月19日(土)14時~・オンライン開催)
①世界の日本古典籍コレクション
南清恵(ホノルル美術館)
ホノルル美術館所蔵浮世絵ハイライト
岡崎礼奈(東洋文庫)
東洋文庫の古典籍コレクション
②戯作と浮世絵
板坂則子(専修大学)
要旨:鈴木春信によって見出された多色摺りの木版「錦絵」の技法は、瞬時に磨き上げられて、歌麿や清長、北尾派の絵師たちが続々と出現しました。この時期はそのまま戯作(江戸後期小説)の進展期と重なります。共に大衆文化である戯作と浮世絵は密接な関係を持ち、多くの浮世絵師は版本に関わってその技量を磨きました。絵師と戯作者、書肆の関係は極めて近しいと言えます。今回は、柳亭種彦と歌川国貞、曲亭馬琴と葛飾北斎、為永春水と溪斎英泉の三組を取り上げて、戯作者と画師の関わりを考察します。
・200名参加。第10回日本古典籍セミナー参加体験記(中国語)はこちらです。
「讲座回顾|江户时 代的大众文化:浮世绘、戏作、书肆」(刘嘉瑢氏)
〇第9回(2021年2月27日・オンライン開催)
①絵画史料の読み方―肖像画の髭と年齢
黒田智(金沢大学)
要旨:肖像画に描かれた人物は何歳にみえるでしょうか。
中近世日本の肖像画は、どのように若さや老いを表象していたのでしょうか。
集団肖像画における年齢表現のコード論から、絵画史料論の分析・読解の一例を提示してみたいと思っています。
②奈良絵本・絵巻の研究とその影響
石川透(慶應義塾大学)
要旨:従来は不明とされてきた奈良絵本・絵巻の制作時期や制作過程について、 本文の筆跡を手がかりに検証するとともに、実際の作例の分析を通じて、 さらなる研究展望について考えます。
参加ご希望の方はこちらからご登録ください。
※申込は終了しています。
〇第8回(2019年3月1日・於ハワイ大学マノア校及びホノルル美術館・米国)
ご挨拶(NIJL)
①「装訂(how traditional books are put together)」 落合博志(国文学研究資料館)
②「書型(shapes and sizes of traditional books)」 神作研一(国文学研究資料館)
③「絵入本-写本(illustrated manuscripts)」 恋田知子(国文学研究資料館)
④「嵯峨本(a type of Edo Period mass-printed book)」 入口敦志(国文学研究資料館)
⑤「絵入本-版本(Illustrated block-printed books)」 木越俊介(国文学研究資料館)
・33名参加。「国文研ニューズ」№55に報告がございます。
〇第7回(2019年2月26日・於北京外国語大学日本学研究センター・中国)
①絵巻入門-物語を伝える色と形
山本聡美(共立女子大学)
②絵巻における時間と空間の表現
佐野みどり(学習院大学)
・60名参加。「国文研ニューズ」№55に報告がございます。
北京外国語大学のWEBページに記事が掲載されています。
〇第6回(2018年9月6日・於カリフォルニア大学バークレー校C.V.スター東アジア図書館・米国)
開会挨拶
ピーター・ズー(C.V. スター東アジア図書館長)
ロバート キャンベル(国文学研究資料館長)
Part A:・仏書について On Buddhist Texts
①日本の仏書の書誌学: UCB 東アジア図書館賀蔣(Ho-Chiang)コレクション本を用いて
落合博志(国文学研究資料館)
②Sectarian Buddhist Canons in Modern Japan
マーク・ブラム(カリフォルニア大学バークレー校)
Part B: 写本について On Manuscripts
③奈良絵本について: UCB 東アジア図書館三井文庫蔵『文正草子』を例として
恋田知子(国文学研究資料館)
④写本の生成: 添削、編集、モノとしての三条西家詠草(The Creation of Manuscripts:Editing, Compilation, and the Materialityof Sanjō-nishiFamily WakaPoetry)
海野圭介(国文学研究資料館)
Part C: 刊本について On Printed Books
⑤刊本を筆写した写本について: UCB 東アジア図書館三井文庫蔵本を用いて
入口敦志(国文学研究資料館)
⑥〈刊本の書誌学〉刊記と刊・印・修: UCB 東アジア図書館三井文庫蔵『百人一首像讃抄』を例として
神作研一(国文学研究資料館)
・32名参加。「国文研ニューズ」№54に報告がございます。
〇第5回(2018年3月1日・於ホノルル美術館・米国)
・趣旨説明 バゼル山本登紀子(Japan Studies Librarian)
①写本について-写記(奥書)と識語- 落合博志(国文学研究資料館)
② 刊本について-刊記- 神作研一(国文学研究資料館)
③ レインコレクションの物語草子 恋田知子(国文学研究資料館)
④ 日中韓刊本の様式について-レインコレクションを例に 入口敦志(国文学研究資料館)
⑤ 基調講演「『獣絵本つくし』の背景にあるもの」 山下則子(国文学研究資料館)
・36名参加。「国文研ニューズ」№51に報告がございます。
〇第4回(2018年2月17日・於北京外国語大学北京日本学研究センター・中国)
テーマ「朝鮮軍記と出版文化」
① 朝鮮軍記研究の現状と課題 井上泰至(防衛大学校)
② 軍記と読本―秋里籬島『絵本朝鮮軍記』の位置 大高洋司(国文学研究資料館)
③ 新日本古典籍総合データベースについて 齋藤真麻理(国文学研究資料館)
・20名参加。「国文研ニューズ」№51に報告がございます。
〇第3回(2017年3月3日・於カリフォルニア大学バークレー校・米国)
Introduction マルラ俊江(C. V. スター東アジア図書館)
Part1
① はじめての古典籍 神作研一(国文学研究資料館)
② 写本の装訂 落合博志(国文学研究資料館)
Part2
③ 奈良絵本『文正草子』について 恋田知子(国文学研究資料館)
④ 版本〔謡本〕3点について 柳瀬千穂(国文学研究資料館)
⑤ 版本の諸問題―医学書を例に 入口敦志(国文学研究資料館)
⑥ 稲葉黙斎自筆『孤松全稿』について 小山順子(国文学研究資料館)
Part3
⑦ 講演:日本の『死の舞踏』: 『九相詩』と『一休骸骨』今西祐一郎(国文学研究資料館)
・24名参加。「国文研ニューズ」№47に報告がございます。
〇第2回(2017年2月17日・於ホノルル美術館・米国)※ハワイ大学マノア校と共催
・開会挨拶
ロバート・ヒューイ(ハワイ大学マノア校)
今西祐一郎(国文学研究資料館)
① NIJL-NW プロジェクト概要 小山順子(国文学研究資料館)
② くずし字について 恋田知子(国文学研究資料館)
③ はじめての古典籍と書誌の著録法 神作研一(国文学研究資料館)
④ 百人一首について 寺島恒世(国文学研究資料館)
⑤ 奈良絵本について 齋藤真麻理(国文学研究資料館)
⑥ 「鉢かづき」について 小林健二(国文学研究資料館)
⑦ 「大坂物語」について 入口敦志(国文学研究資料館)
総括 神作研一(国文学研究資料館)
・25名参加。「国文研ニューズ」№47に報告がございます。
〇第1回(2016年3月11日・於カリフォルニア大学バークレー校・米国)
Part1
① 歴史的典籍に関する大型プロジェクトについて 入口敦志(国文学研究資料館)
② 板本『職原抄』について 今西祐一郎(国文学研究資料館)
③江戸の写本文化 神作研一(国文学研究資料館)
Part2
④ UCバークレー所蔵三井写本コレクションの概要 マルラ俊江(C. V. スター東アジア図書館)
⑤ 三井文庫の写本 入口敦志(国文学研究資料館)
⑥ 2016 Kotenseki Workshop at University of California, Berkeley 小山順子(国文学研究資料館)
⑦ Treasures of Mitsui Collection, owned by C. V. Starr East Asian Library 海野圭介(国文学研究資料館)
・30名参加。「国文研ニューズ」№44に報告がございます。