中村真一郎:江戸漢詩に関する創作ノート (なかむらしんいちろう:えどかんしにかんするのーと)
2007/7/ 1
【解題】
作家中村真一郎〈なかむらしんいちろう〉(1918~1997)の 江戸漢詩に関する創作ノート(画像1枚目)。中村真一郎旧蔵の江戸漢詩文コレクション(画像2枚目)が当館に収蔵された後、中村真一郎夫人 佐岐えりぬ氏から、関連資料として当館に寄贈された。
最初の扉には「江戸漢詩」、次の扉には「凍泉堂詩話のための覚書」「「詩人の庭」horti poetae」とある。
江戸時代の漢詩人について、年代順に1頁1人ずつ、200頁(200人分)にわたって、詳細に記載されている。このノートを基に、『頼山陽とその時代』『詩人の庭』『木村蒹葭堂のサロン』などの著作が生み出された。
ノート中、赤字で「雲」「庭」「頼」(○印で囲む)とあるのは、それぞれ『雲のゆき来』・『詩人の庭』・『頼山陽とその時代』で取り上げた漢詩人を示している。ノートの最初の部分には、江戸漢詩文史に関する構想のメモが記されている。
このノートについて、中村真一郎自身は、「『五山堂詩話』の登場人物たちを中心とする、江戸漢詩人の、各頁にひとりを割りあてたノート作りと、蒐集した数千巻の江戸漢詩の木版本のカード作りという、機械的な仕事に没頭した。」(「文学としての評伝」『新潮』1991年1月号)と述べており、夫人佐岐えりぬ氏は、「いつの頃からか真一郎は自分の手作りでそれらの書物の人名辞典のようなものを作っており、分厚い辞書のような束見本に細い字でびっしりと書きこんでいた。新しく本を入手する度にその自家製辞典のページは増えてゆき、また感想などを書き入れるため各ページの下にのりで紙を継ぎ足し、それをページに折りこむので辞典はいびつな形にふくれあがっていた。」(「真一郎と江戸漢詩文書」『木村蒹葭堂のサロン』)と述べている。
※当館の所蔵する中村真一郎旧蔵書については、『中村真一郎江戸漢詩文コレクション』(国文学研究資料館普及連携活動事業部編・2007年刊)を参照されたい。