河内本源氏物語切 (かわちぼん げんじものがたりぎれ)
2007/2/ 1
作品の全画像を見る
【解題】
[請求記号 ヨ6・19]
軸装 1軸
31・8×25・0センチ
字高28・0~28・4センチ
斐楮交漉紙〈ひちょまぜすきがみ〉。
朱点あり。
左端に綴じ穴痕あり。
極め札も箱書きもないが、本断簡のツレが「藤原為家筆」と伝称されている。
『源氏物語』薄雲巻の断簡である。鎌倉時代中期の筆。縦30センチに及ぶ大型の四半本。朱で句読が打たれている。本文は、《青表紙本》《河内本》《別本》のうち、《河内本》と判断される。『源氏物語大成』618頁参照。鎌倉時代前期に源光行・親行によって整定された源氏写本の系統を《河内本》と呼ぶが、本断簡は、光行・親行にきわめて近い時代の写本として重要視される。
『古筆学大成23』165番の薄雲巻切「うちゆき~」、『和歌と物語─鶴見大学図書館蔵貴重書八〇選─』図版9の薄雲巻切「にまいりつとひ~」、『筑波書店古書目録81号』48番の薄雲巻切「まさりけめと~」は、本断簡と同型・同筆。ツレ(もともと一つの写本を成していた断簡同士)と認められる。また、同型の断簡として、薄雲巻の他に、賢木巻切や真木柱巻切の存在も報告されており、かつては、54帖揃いの《河内本》写本であったと考えられる。
なお、本断簡の図版と解題は、国文学研究資料館編『古筆への誘い』(三弥井書店・2005年)に掲載されている。また、高田信敬氏「源氏物語の古筆切 二題」(『源氏物語と源氏以前 研究と資料』武蔵野書院・1994年)、池田和臣氏「源氏物語の古筆切」(『中央大学文学部紀要』91号・2003年 3月)も参照のこと。
【 翻刻 】
はのこすゑあらはにみえて・雲のうすくわたれるか・
にひいろなるをつねはなにとも御めとまらぬ
事なれと・いとものあはれにおほさる
いりひさすみねにたなひくうすくもは
ものおもふ袖に色そまかへる・なとひとりこち給ふも・
人しきかぬところなれはかひなし・御わさなともす
き・ことゝもしつまりて・みかとものこゝろほそくおもほ
しめしたり・かの入道の宮の御はゝきさきのおほん
よゝりつたはりて・つき/\の御いのりのしにてさふら
ひ給けり・ほうむの僧都・こ宮にもいとやんことなく
したしきものにおほし・おほやけにとおもき御