江戸時代のレシピ本
さて、「昔の本」というと、いわゆる古典文学や古文書を連想するかもしれません。
けれど昔の本は、文学や歴史の本だけではありません。
昔の人々が学び、伝えようとしたことを本にしているのですから、ありとあらゆる分野の本があります。
文学作品以外の古典籍を開いて、覗いてみましょう。
たとえば下の本は、江戸時代の寛政7年(1795)に出版された『万宝料理秘密箱』という本です。つまり、江戸時代のレシピ本です。
国文学研究資料館『万宝料理秘密箱 前編』(49-101)
巻之二「卵の部」の目次を挙げました。「金糸卵(きんしたまご)」など、現代でもなじみのある卵料理も見えます。けれど「青海たまご」や「紅煎貫たまご」などは、どういう卵料理なのか、興味をそそられます。 この中で「源氏たまご」という卵料理の作り方を見てみましょう。
源氏卵の仕方
一、是は、卵鍋にてたまごわりこみ、厚さ一分ほどに焼。さて蓮のふときをむき、よくゆでて雫をさり、右のたまごに、又たまごの白味をぬり、すこし、うどんの粉をふりて、右の蓮の中へ入れて、能〆て、巻め小口に、同じく白味をぬり、右の蓮の中のす穴へ、すこし白味をながしこみ、遠火にて、火とりて、よくさまして、切べし。 (これは、卵焼き器で、卵を割って入れ、厚さ3mmほどに焼く。レンコンの太いものの皮を剥き、よく茹でて水気を切り、先ほどの卵焼きに、さらに生卵の白身を塗って、少し小麦粉を振って、レンコンを入れて、よく締める。レンコンの切口に同じように生卵の白味を塗り、レンコンの穴の中に生卵の白味を少し流し込み、遠火で焼き、よく冷まして切る)]
どんな料理か想像できるでしょうか?
今、こうした江戸時代のレシピを現代に復活させる取り組みがあります。
クックパッドでも、国文学研究資料館所蔵の『万宝料理秘密箱』によるレシピが公開されていて、実際に作った写真も添えられています。
cookpad 【江戸の味】和食に洋風に☆源氏卵(撮影:AMANE) https://cookpad.com/recipe/4153337