「徳川の平和」が生み出した奇想天外な武士・勝小吉
―なぜ今、『夢酔独言
』なのか?―
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■ フルバージョン(日本語)
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■ ダイジェスト版(中国語字幕)
前近代の日本は、みな親切だった!?
勝海舟の父、勝小吉は14歳のとき(文化12年・1815)、家からお金を盗み家出、しかし道中で盗難にあい、無一文に。そのとき宿の主のすすめで、乞食をしながら伊勢参りをすることにしました。お金も持たず、旅は4ヵ月続けられます。
この乞食道中は『夢酔独言』は――「夢酔」と号する、勝小吉(勝海舟の父)の独り言という意味です――42歳の時に隠居して執筆した晩年の回想録の白眉です。
「すごくみんな親切なんですよね。どこに行っても、どうしたんだい坊やといって、ご飯をたべさせてくれる」(内田樹氏)。
毛丹青氏は内田樹『日本習合論』(ミシマ社)を翻訳する過程で、勝小吉に取り憑かれ、現在『夢酔独言』の中国語訳に取り組んでいます。
その翻訳の過程で生じた疑問をこのトークで語り合います。
勝小吉が生きた前近代の江戸時代は一体どういう時代だったのか。
「鎖国」時代は閉塞的で、日本の近代化が遅れた原因にもなったというが、本当はどうだったのか。
260年以上、大きな戦争もなかった平和な江戸時代は、世界にとってどんな意味を持つのか。
「一人では生きられない世の中」を生きるためにみんなどういうふうに考えていたのか」(太田尚宏氏)。
これらを、毛氏が内田樹氏、当館太田尚宏准教授ともに考えていきます。
司会は当館特任助教で古典インタプリタの黄─
出演者
内田 樹(うちだ たつる)氏(神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長)
1950年東京生まれ。専門はフランス現代思想、武道論、教育論など。
主著に『ためらいの倫理学』、『レヴィナスと愛の現象学』、『寝ながら学べる構造主義』など。
第六回小林秀雄賞(『私家版・ユダヤ文化論』)、2010年度新書大賞(『日本辺境論』)、第三回伊丹十三賞を受賞。
近著に『日本習合論』、『コモンの再生』、『武道論』、『戦後民主主義に僕から一票』など。
毛丹青(マオタンセイ)氏(神戸国際大学教授、国文学研究資料館トランスレーター・イン・レジデンス)
中国北京出身。北京大学卒業後、中国社会科学院哲学研究所に入所。25歳で三重大学に留学し、後に商社勤務などを経て執筆活動を開始。2000年日本での生活体験をつづった『にっぽん虫の眼紀行』で第28回神戸っ子ブルーメール文学賞を受賞。中国語の著作も多く、日中双方の文壇で活躍している。中国語翻訳書には『歎異抄』や『出家とその弟子』など多数。2017年神戸市文化奨励賞受賞。
太田 尚宏(おおた なおひろ)氏(国文学研究資料館准教授)
東京都北区の北区史編纂調査会編纂専門員、公益財団法人徳川黎明会徳川林政史研究所の研究員・主任研究員を歴任。
専門は日本近世史。とくに、武蔵野を含む江戸周辺の地域編成に関する研究、漁業史・林業史などの産業史研究に従事する。
著書は『幕府代官伊奈氏と江戸周辺地域』。共著として『森林の江戸学』、『江戸時代の古文書を読む』全10冊、『江戸文化の見方』など。