アーティスト
成瀬 拓己 (画家)

<プロフィール>
1997年岐阜生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程美術専攻絵画修了。
2020年FACE2021入選、2021年FACE2022入選、2023年第14回バンフー年賀状コンテスト審査員賞。こいのぼりギャラリーMIDTOWN OPEN THE PARK 2021(2021)、たましん地域貢献スペース企画展「Rebirth」(2022)、FACE展選抜作家小作品展2022(2022)など参加。
私の大きな制作テーマは共同幻想です。共同幻想とは個人が持つ情報が作り出すイメージと、他者の情報が持つイメージが特定の言葉や記号を誇張する事と解釈して制作しております。日本神話をモチーフに、支持体の木目からアニミズム的な見方で、私なりの神の姿を創造して描いてきました。私のイメージと木目のアニミズム的な要素でのイメージの拡張を目指しました。その後、中国の敦煌に行く機会があり、そこで線に魂が宿る様な西夏時代の壁画を見たことで、線によるイメージの広がりに衝撃を受け、線を意識した絵画を描いています。水、風のような表現に用いられる線は見えないモノを映し出す際に用いられる技法でもあると思い、画面を線で埋め尽くす事により、精神的な見方を絵に投影し、写真とは違うメモリーとしての絵画を残したいと思い制作をしておりました。今は線によるイメージの誇張や拡大を目指して制作しております。
<就任期間>
2024年4月~
「アーティストおすすめの古典籍」
①『古事記(こじき)』

古事記には神話と、神武天皇の伝記と大きく分けて二つありますが、神話の身の回りの建物などの神から大きな世界に広がって行く流れや、子供の様な突拍子もない衝動から新しい神が生まれ、大国主の所から愛に近いものが芽生えて行く流れが、人の人生観や世界と私の関係みたいなのが感じられるのでモチーフにして描いていました。
国書データベース②『源氏つまこゑ(げんじつまこえ)』

源氏ツマコエは、文字が大小に羅列し記号の様に見える事が気に入りました。大きな文字から小さな文字に向かって読んでいくとお聞きし、文字という意味を持った一つ一つの記号が、総体としての画面を構成する記号として見える事が、絵画の画面を構成する意識に似ていると感じました。また、私の制作で色を制限して特定の意味を持たせる事にも共通点があると感じました。記号化させることで絵の見え方のパターンを増やす事と、意識と遊びの様に閲覧者の優先度の高い記号から無限に想像できる所、物語が前提で読むルールがある事で書物として成り立っている点が、興味を抱きました。今回の源氏物語に携わるにあたり、私の表現のきっかけになればと思っております。
国書データベース「ないじぇる芸術共創ラボにおいて取り組んでみたいテーマ」
紫の上の人物像を描きたいと考えております。私の作品で共通するテーマがありまして、それは共同幻想です。1人が解釈する人物像がその人が経験で得た情報によって外観や存在の大きさが変わる事を、僕の中での共同幻想として制作しております。ないじぇる芸術共創ラボに参加し各先生方のお話を伺い、今までの肖像画と違い1人の人物から集められる情報量が増えた事で、不特定の未知の部分を含んだ共同幻想で描いてた人物から、未知の人物(例えば紫の上)がリアルな人物になってきているので、物語の登場人物としての人物像をどういう人物で描くか楽しみながら描きたいと考えています。また何処まで記号化するのか、源氏物語に登場する人物像は人なのか擬人化させるのか?など考えております。また専門家の先生方の意見と、読み込んだことで何処まで心や愛をアウトプットできるかが、絵画の魅力を左右すると思うので、積極的に知識を取り入れていきたいと思っております。