アーティスト
片渕 須直 (アニメーション映画監督)

<プロフィール>
1960年生まれ。日本大学芸術学部特任教授。監督作はTVシリーズ『名犬ラッシー』(96)、『BLACK LAGOON』(06)、長編『アリーテ姫』(01)、『マイマイ新子と千年の魔法』(09)など多数。『この世界の片隅に』(16)、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(19)。現在、疫病の中に生きる千年前の人々を描く次回作を制作中。
<就任期間>
2021年11月~
「アーティストおすすめの古典籍」
①『枕草子(まくらのそうし)』

「心ちよげなる物」から始まる『枕草子』三巻本第一類の写本です。「春はあけぼの・・・・・・」に始まる三巻本冒頭部分は後世に復元されたもので、本来の姿はどうだったのか。でもみんなが「春はあけぼの」は知っている。不思議な感覚を覚えます。
新日本古典籍総合データベース②『源氏物語画帖(げんじものがたりがじょう)』

平安時代からかなり時が過ぎてから描かれたに違いない絵。建物や調度のいろいろな細部が『枕草子』や『源氏物語』が書かれた時代から変化したのちの形で描かれています。そのギャップから、むしろ感じられるのは、長い長い時の流れなのでした。
新日本古典籍総合データベース「ないじぇる芸術共創ラボにおいて取り組んでみたいテーマ」
2009年に完成させたアニメーション映画『マイマイ新子と千年の魔法』を構想中に、物語の舞台である山口県防府市国衙に千年前に実際に住んでいたのはどんな人だったのだろう、と考えて、まだ子どもだった清少納言が父親の赴任について来ていたはず、と思い至りました。そういえば『枕草子』には、湊へ着く直前の舟の上での経験の記憶が、「とても揺れて怖かった」と述べられています。そしてこの映画の取材中に、ひょっとしたらほんとうに清少納言がその頃住んでいたかもしれない館の跡が発掘されているのに出会ってしまいました。自分が踏んでいるのと同じ土の上で千年前に遊んでいた女の子がとても身近に感じられるようになって、その後の彼女の人生の道のりまでたどり直してみたくなってしまいました。清少納言が確かにいたのだという証しを、彼女がどんなところでどんなふうに生きていたのかというその片鱗からはじまるさまざまを、ないじぇるという場でも得られていけるのではないかと期待しています。