アーティスト
芦川 瑞季 (版画家)

<プロフィール>
静岡県生まれ。2024年現在武蔵野美術大学大学院博士後期課程作品制作研究領域在籍。版を知覚や認識の外部化と内部化を繰り返すメディアとして捉え、遭遇した風景をリトグラフを用いて制作している。
主な展覧会「TOKASレジデンシー成果展『誰かのシステムがめぐる時』」トーキョーアーツアンドスペース本郷/東京(2023)「 第3回 PAT in Kyoto 京都版画トリエンナーレ」京都市京セラ美術館/京都(2022)、賞歴は「 第3回 PAT in Kyoto 京都版画トリエンナーレ」ニッシャ印刷財団賞(2022)、「山本鼎版画大賞展」大賞(2021)
<就任期間>
2024年4月~
「アーティストおすすめの古典籍」
①『信貴山縁起絵巻(しぎさんえんぎえまき)』

鉢が米俵を倉ごと運ぶ描写を初めて見たときは衝撃的でした。
画面の端に見切れていく倉や、斜め上から川を渡り降ってくる米俵。尼君の巻の東大寺の大仏に向かい合うシーンも、大仏の大きなスケール感に圧巻です。現代の映像的な表現の中に、潜在的に受け継がれているのではないかと思わせる構成です。いつか絵巻の形式で全巻纏めて拝見してみたい。
②『源氏物語絵屏風(げんじものがたりえびょうぶ)』

ミニチュアールのように丸く切り取られた物語。一つ一つの世界を覗きこんでしまいます。国文研のワークショップで、実際は暗い部屋の中で蝋燭を照らして一つ一つを照らして見ていたと聞き、背面の黄金の必然性に気がつきました。この作品は空間、時間、振る舞い、そこにある全てを組み合わせたインスタレーションとも捉えられるのではないかと思いました。
国書データベース「ないじぇる芸術共創ラボにおいて取り組んでみたいテーマ」
平安時代の貴族の間では、姫君が夫や親族以外に顔を出してはいけないなど、現代では理解できないような規則が多々あります。そのような決まりごとに包含された世界で、佇まいや噂からその人を知っていく。時折抑えきれない感情や衝動に襲われ、自己と他者との境界を超え、物語が動いていく。今は御簾が不可抗力で動くシーンに興味があります。
コロナ禍を過ぎ、SNSが普及した現在、人と顔を合わせなくても交流する機会が増えました。顔を見てはいけない、見せてはいけない者どうしのやりとりは、改めて興味深く映ります。一見すると現在とは異なるものですが、自分なりに実感して制作することで親しみのある新鮮なイメージを生成することを可能としてくれると思っています。