入口 敦志
『百千鳥狂歌合(ももちどりきょうかあわせ)』2帖、赤松金鶏(あかまつきんけい)撰、喜多川歌麿(きたがわうたまろ)画、寛政初年頃、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)刊
蔦屋重三郎が刊行した狂歌絵本の一つで、鳥を主題として図と狂歌とを配している。図は木版の多色刷りで、見開き一図を一枚の紙に刷って画帖(がじょう)に仕立てる。同じ狂歌絵本でも、これに先立つ『画本虫撰(えほんむしえらみ)』(石川雅望(いしかわまさもち)撰、歌麿画、天明 8年(1788)蔦屋刊)では見開き一図ではあるが、袋綴であるために左右で刷りが異なっており、微妙に色彩にずれが生じていた。おそらくその欠点を解消するために工夫されたものと推測する。
掲出した図は梅の枝に止まる鷹と百舌鳥(もず)を描いたもの。細かな産毛までが極細の線で描出されている。また、鵜と鷺の図では凹凸のみで表現する〈空刷(からずり)〉などの技巧を用い、色刷りの技術の粋を見せていると言っても過言ではない。絵師である歌麿の画力は勿論のこと、彫師・摺師の高い技量がなければなしえなかった作品であり、三者の緊密な連携がうかがわれる。
図に比して狂歌はむしろ添えもののように見えてしまう。巻末の広告に「和鳥の生写すに狂歌をくはへ古今めつらしき本也」と紹介されているところから見ても、歌麿の写実的な絵を見せることが主眼であったことは間違いないだろう。ぜひ国書 DB の精細なデジタル画像でその精緻な技巧を御確認いただきたい。
国書データベース書誌詳細→https://doi.org/10.20730/200040927
