異分野融合共同研究

文理融合による新たな領域開拓と新たな研究手法の構築を目指す共同研究です。


【文献観光資源学】

総括:谷川 惠一(国文学研究資料館 研究部 教授)
TANIKAWA Keiichi (Professor, Research Department, National Institute of Japanese Literature)

津軽デジタル風土記の構築

研究期間:平成29(2017)年4月~平成32(2020)年3月

研究代表者:瀧本 壽史(弘前大学 教育学研究科 教授)
Representative Researcher : TAKIMOTO Hisafumi (Professor, Graduate School of Education, Hirosaki University)

    新日本古典籍総合データベースの歴史的典籍画像を活用し、典籍をはじめとする多様なメディアに分散して残されている地域情報をデジタル空間において連結する汎用ツールを開発するとともに、津軽地域を対象として、地域の大学・自治体・地元企業等と連携して、地域が自立して継続的に地域情報を統合し、新たな地域の価値を創出していくモデルを構築する。

碑文のデジタル復元に関する手法研究と実践

研究期間:平成29(2017)年4月~平成32(2020)年3月

研究代表者:上椙 英之(奈良文化財研究所 埋蔵文化財センター アソシエートフェロー)
Representative Researcher : UESUGI Hideyuki(Visiting Researcher, Center for Collaborative Research on Pre-modern Books, National Institute of Japanese Literature)

    研究代表者はこれまで碑文(石造遺物銘文)、特に砂岩製石造遺物の銘文の風化傾向に対し、そうしたものであっても銘文の取得が可能ではないかという考えのもと、デジタル撮影によるアーカイビングの手法開発に関する研究を実施してきた(例 じんもんこん2012論文集pp179-182ほか)。こうした撮影手法において重要なのは、如何に大がかりな装置ではなく、簡略に可能とするかという点である。またその撮影したものを如何にして加工し、可視化しうるかというデジタル画像処理の手法を実験レベルだけではなく、方法として確立させることも重要である。特別な技術者のみに可能である限りにおいて、それは汎用性をもたないことは言うまでも無い。
    今般、国文研で実施される文献観光資源学に関する研究の一環という位置づけで本研究を実施するにあたり、簡便な装置の作成(既存製品の活用による)などを執り行うとともに、画像処理におけるツール化やノウハウのマニュアル化を進めると共に、地域に点在する種々の碑文等を対象に撮影等を執り行うことで、実際にその画像を活用する段階に進めたい。
    文献観光資源学という観点からみれば、各地の碑文等については歴史的典籍ならびに文書類に記載されることが多い。ただし、その記載は実際の碑文との照合作業がなされていない(しづらい)ことも多く、苔などによって判読出来ない状態にあるものもある。現状の碑文そのものが読めないのである。読めない碑文を読めるようにするのが当研究の醍醐味であり、撮影及び画像処理したものを写真として提示することは、単に文書の記述を示す以上に、一般の人々にとってわかりやすい情報提供と言える。

GISを用いた総合地域情報に関する国際発信方法に関する研究

研究期間:平成29(2017)年4月~平成32(2020)年3月

研究代表者:山本 和明(国文学研究資料館 研究部 教授)
YAMAMOTO Kazuaki (Professor, Research Department, National Institute of Japanese Literature)

    平成28年度ハイデルベルグ大学との間で協定を結んだが、当該大学のアロカイ教授が作成したツール「デジタル文学地図」をベースに改良を加え、NIJL-NWプロジェクトで公開される古典籍画像をくみこんで、汎用性の高い教育教材、観光資源の可視化アプリとすることを目標に、情報の集約、展開を果たしていくものである。アロカイ教授の作成したものは「歌枕」についてグーグルマップ上に位置情報を示し、クリックするとその説明情報を見ることができるというもので、以下のような画面構成となっている。特徴はウェブ上で情報入力をするという点であり、此の研究を展開することで国際共同研究および多言語化対応可能となる。今回は歌枕だけではなく、文献観光資源学にも有用な汎用的なフレームを検討していく。具体的に付加情報を加えていくため相応の研究経費と時間をかけたい。

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【典籍防災学】

総括:山本 和明(国文学研究資料館 研究部 教授)
YAMAMOTO Kazuaki (Professor, Research Department, National Institute of Japanese Literature)

典籍等の天文・気候情報に基づく減災研究の基盤整備

研究期間:平成28(2016)年4月~平成32(2020)年3月

研究代表者:片岡 龍峰(国立極地研究所 研究教育系・宙空圏研究グループ 准教授)
Representative Researcher : KATAOKA Ryuho (Associate Professor, Space and Upper Atmosphere Science Group, National Institute of Polar Research)

    平成27・28年度に総研大学融合共同研究事業として「オーロラと人間社会の過去・現在・未来」(オーロラ4Dプロジェクト)、同28年度に共同研究相手の国文研が人間文化研究機構機構長裁量経費「異分野融合研究創生に関するプロトタイププログラム作成事業」に採択され、おもに宇宙災害に関する基礎研究とともに、市民向けに「古典オーロラハンター」等の事業をおこなってきた。その継続発展的な研究として、典籍等に記載された天災や気象情報を整理することにより、過去に起こった天変地異の発生パターンや長期的な気候変動の復元などの基礎研究を行う。さらに、防災・滅災について考察することで、今日的な課題解決にも貢献したい。
    太陽活動の影響は遠く離れた地球の様々な気象現象やそれに連動する自然界への影響、飢饉などにも繋がるものである。地震や火山活動も含めそうした事象は、今日的な課題であり、過去の自然現象の激変と人間活動の歴史をきちんと位置づけ、典籍等に記された記述を古典籍や歴史の研究者と地球物理や宇宙物理の研究者とが普段からの交流を重視して文理融合で読み解くことによって、天災に関する理解が相互に深まり、新たな発見に繋がることを経験した。例えば「Historical space weather monitoring of prolonged aurora activities in Japan and in China」と題した、数百年に一度の巨大磁気嵐が発生する原理に関する論考が、先の研究者グループで国際的な研究誌(Space Weather)に採択されたが、これは「明月記」の記述を精査していく中で展開したものであった。今回こうしたことを踏まえ、これまでの研究で蓄積された宇宙災害に関するデータに加えて、今後さまざまな天災や気象データに関する研究も進めることで、得られたデータをタイムライン化してオープンな形で公開し(オーロラ4Dプロジェクトのウェブサイトを活用)、研究者ならびに一般市民にも公開をしたうえで、論文等での発表、市民向け講座等での紹介を進めていきたい。本研究による基盤データの整備は、防災・減災に繋がる研究を醸成することとなる。

【ホームページ Homepage】
オーロラ4Dプロジェクト

歴史資料を活用した減災・気候変動適応に向けた新たな研究分野の創成

研究期間:平成28(2016)年4月~平成32(2020)年3月

研究代表者:田村 誠(茨城大学 地球変動適応科学研究機関 准教授)
Representative Researcher : TAMURA Makoto(Associate Professor, Institute for Global Change Adaptation Science, Ibaraki University)

    本研究は異分野融合研究の一環としての研究であり、かつ【典籍防災学】という大きな括りのなかで、もうひとつの共同研究「典籍等の天文・気候情報に基づく減災研究の基盤整備」と連動し、研究成果が出ること、出る可能性の萌芽を見いだすことを最終目標とする。
    地球規模で広がる気候変動に対してどのような適応戦略を進めることが必要となるのか、すでに環境省『地球温暖化影響・適応研究委員会報告書 気候変動への賢い適応』(2008年)に指摘されるように過去の対応事例の参照が有効である。本研究ではそうした観点のもと、古典籍・古文書を用いつつ、歴史を参照し未来への適応シミュレーションを作成することを念頭に研究を行いたい。
    代表者は理工系の研究者であり気候変動のシミュレーションを担当する。文系の担当として国文研西村准教授が中心となり、特定の時期の気候変動に関する資料・データの発掘をしてもらい、その古典籍の撮影(現段階では災害関係典籍として『地震後世俗語之種』や地誌関係『豆州志稿』などを取り上げる予定)およびタグ付けをし、典籍画像の公開と共に利用可能性を高める。
    そのほかに実際に様々な水害や地震の起こった地域の調査を行うこととする。
    本研究が異分野融合研究および典籍を用いた工学的な視点に基づく研究であることを大前提とするため、現地調査についてはその研究の必要性などを十分に配慮した上で行うものとし、予算を用いる場合も典籍防災学の総括者の確認を経て行い、歴史調査中心にならないようにする。

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【和食と伝統医学の研究】

総括:小林 健二(国文学研究資料館 研究部 教授)
KOBAYASHI Kenji (Professor, Research Department, National Institute of Japanese Literature)

古典籍を活用した和漢薬に関する総合研究
Comprehensive Research into Pre-modern Texts relating to Sino-Japanese Pharmacology

研究期間:平成27(2015)年7月~平成30(2018)年3月終了

研究代表者:小松 かつ子(富山大学 和漢医薬学総合研究所 教授)
Representative Researcher : KOMATSU Katuko (Professor, Institute of Natural Medicine, University of Toyama)

    本草書等から和漢薬に有用な情報を抽出してデータベース化を進め、将来的に健康食品等の開発等に何らかの寄与ができるようにすることをめざす。
    和漢医薬に関する情報は、江戸時代、中国およびその周辺地域にから書物として日本に伝えられ、それらの情報は日本社会に定着してさらなる発展を遂げた。現在、中国やその周辺地域に古医方に関する資料が少ないため、日本国内に所蔵される医薬学書への注目は非常に高まっていると言える。そこで、国内外の研究者および和漢医薬に関心を持つ方々に広く情報を提供すべく和漢医薬書のデータベース化を行う。作成したデータベースは書誌情報とともに富山大学和漢医薬総合研究所附属民族薬物資料館の民族薬物データデータベースに反映させる。本データベースには、生薬本体と原植物の画像データ・生薬名・原植物名・薬用部位・臨床応用・伝統医学的薬効に関するデータがあり、これらに古典籍の情報を加えることで、特に薬用部位や伝統医学的薬効に関する情報の充実に寄与できる。将来的には、このデータベースを国内外の多くの研究者に活用してもらうことにより、現在、研究が進みつつある癌治療における緩和ケアやアルツハイマー症の予防をはじめ、様々な健康促進のための研究に貢献できる可能性がある。

料理・調味料の復元と活用に関する研究

研究期間:平成28(2016)年7月~平成32(2020)年3月

研究代表者:神松 幸弘(立命館大学グローバル・イノベーション研究機構    助教)
Representative Researcher : KOHMATSU Yukihiro(Senior Researcher, Ritsumeikan-Global Innovation Research Organization)

    本研究は、あまつらの原料、製法について、古文書資料と実験により解明し、あまつらとそれを用いた調理を復元することを目的とする。あまつらは古代には主要な甘味料であったにも関わらず、中世以降は姿を消し、砂糖に置き換わってしまった。この甘味料に関する一大変化は、日本料理や和菓子の味、製法においてどのような影響を及ぼしたのか検証する。加えて、食品化学の分析手法から糖類構成や甘味特性を科学的に明らかにし、日本食文化におけるあまつらの意義について評価する。
    あまつら(甘葛)は、植物の樹液から得る古代の甘味料である。枕草子や今昔物語などにも記述があり、延喜式によると全国20ヶ国から王都に貢がれていた。しかし、その後砂糖の生産増大とともに姿を消し、すでに江戸時代には、本草学者の間でも謎の存在となった。あまつらは、つる性木本のツタ(Parthenocissus tricuspidata)の樹液を原料とする説(畔田:1843)が有力視され、白井(1936)をはじめ、 石橋(1988)、奈良女子大学(2011)による甘味料の復元事例がある。一方、ツタ説に比べて歴史に埋もれたかに見えるが、ツタ以外の植物を原料とする説は複数存在する(たとえば、藤原:1839のノブドウ、大槻:1891のツルアジサイなど)。しかしながら、これらの植物について甘味料作成を試みた事例はない。

【研究成果】

錦絵等に対するアノテーション付与の研究

研究期間:平成30(2018)年1月~平成32(2020)年3月

研究代表者:小林 顕彦(味の素食の文化センター食の文化ライブラリー 館長)、山本 和明(国文学研究資料館 研究部 教授)

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オーロラと人間社会の過去・現在・未来<総合研究大学院大学学融合共同研究採択課題>
The Nortern Lights and Society : Past, Present, and Future

研究期間:平成27(2015)年4月~平成29(2017)年3月終了

国立極地研究所 ・ 京都大学 ・ 総合研究大学院大学 ・ 国文学研究資料館
National Institute of Polar Research / Kyoto University / SOKENDAI(The Graduate University for Advanced Studies) / National Institute of Japanese Literature

研究代表者:片岡龍峰(国立極地研究所 研究教育系・宙空圏研究グループ 准教授)
Representative Researcher : KATAOKA Ryuho (Associate Professor, Space and Upper Atmosphere Science Group, National Institute of Polar Research)

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オーロラ4Dプロジェクト
【発表論文】
Historical space weather monitoring of prolonged aurora activities in Japan and in China
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