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[No. 67 表紙絵資料紹介]『散木奇歌集(さんぼくきかしゅう)』(当館碧洋臼田甚五郎文庫蔵)

岡﨑 真紀子

散木奇歌集(記載書名:散木弃謌集)
コレクション 国文学研究資料館, 碧洋臼田甚五郎文庫 国文研蔵請求記号 29-47-1~2

平安後期を代表する歌人である源俊頼(みなもとのとしより)の自撰家集。

『散木奇歌集』は、春夏秋冬、祝・悲歎、恋上下、雑上下の十巻構成。伝本は、藤原定家書写監督で独自の異文を伝える冷泉家時雨亭文庫蔵本が抜きん出て書写年代が古く、その他はいずれも近世以降の書写で、十巻本と、雑上下がない八巻本がある。

掲出した本書は八巻本で、袋綴二冊。縹はなだ色無地の原表紙、二冊とも原題簽欠。奥書識語なし。本文同筆の墨で集付や異本注記等の書入があり、第二冊末尾の五丁分に『田上集』からの抜写を付す。「吏部大卿忠次」「文庫」の蔵書印があることから、姫路藩主榊原忠次(さかきばらただつぐ)(1605~1665)のもとで書写された本と推断される。

本文は島原藩主松平忠房(まつだいらただふさ)旧蔵本(国立国会図書館現蔵)、林羅山旧蔵本(国立公文書館内閣文庫現蔵)に近い関係にあり、文芸愛好の大名たちの書物を介した交流圏がうかがえることも興味深い。

榊原家の蔵書目録で元禄12年(1699)の『御書物虫曝帳』、享和3年(1803)の『君公御蔵目録』に「散木弃謌集〈俊頼集〉二冊」とあるのはこの本であろう。

その後、榊原の所蔵から離れたのは一体いつの頃だったのだろうか。

なお現在、榊原家伝来の資料は、九代政永(まさなが)以後明治維新まで藩主をつとめた上越高田の地の上越市立歴史博物館に寄託されており(公益財団法人旧高田藩和親会管理)、本書と書型・装訂が近似し、同じ忠次の蔵書印を有する、一具の平安私家集写本が複数現存する。当館碧洋臼田甚五郎文庫蔵。

臼田博士旧蔵書の同文庫は、歌謡関係をはじめ、和歌・物語の古写本等優品を多く有する、広がりあるコレクションである。