川崎 剛志(つよし)(就実大学教授)
本共同研究は、2022~24年度、正宗文庫(岡山県備前市)所蔵資料を対象として、郷土資料及び重要資料に関する研究ならびに正宗敦夫研究を行ったものである。
正宗文庫は、国文学者で歌人の正宗敦夫(1881~1958)が丹精込めて収集した古典籍・文書・短冊類を中心に、昭和11年(1936)、郷里に創設された。蔵書数は7,000点、20,000冊を超える。
正宗文庫前にて(2022年9月11日)
《研究代表者》川崎剛志、《研究分担者》小川剛生(たけお)、尾崎名津子、竹内洪介(こうすけ)、長福(ちょうふく)香菜、新美哲彦(あきひこ)、野澤真樹(まき)、丸井貴史(たかふみ)、山本秀樹、神作(かんさく)研一(館内担当者)の10名で、
【A】正宗敦夫研究、
【B】郷土資料に関する研究、
【C】源氏物語や近世和歌ほか注目資料に関する研究、
という三つの柱を立てて研究を進めた。
主な研究成果を摘記すると、
【A】金光(こんこう)図書館報『土(つち)』に連載された、文庫資料・桂園派歌人・郷土儒者等に関する敦夫の随筆の紹介と評価(正宗文庫監修・小川剛生編『正宗敦夫文集1 ふぐらにこもりて』平凡社東洋文庫、2024)、詠歌・出版・研究など多方面にわたる敦夫の活動の総合評価、
【B】近世以来の豊饒な岡山の学芸(熊沢蕃山(ばんざん)・湯浅常山(じょうざん)・土肥経平(どひつねひら)ほか)の継承という視点から、また井上通泰(みちやす)・塚本吉彦(よしひこ)ら中心とする吉備史談会(1899~1902)での学びを踏まえた、郷土資料の個別・総合評価、
【C】数十年来所在不明で、近代の転写本で研究されてきた『倶舎論音義(くしゃろんおんぎ)』(〔鎌倉時代〕写)の再発見、近世岡山和歌史の至宝、浅野由隆(よしたか)編『𠮷備和歌集』、岡俊直撰『𠮷備和歌打(うちぎき)聞』の評価
などがあげられる。
第5回正宗文庫セミナー(2024年10月13日、岡山県立博物館)
本研究の最も大きな特長は、資料の調査・収集、研究、地域貢献を緊密に連動させたところにあり、研究成果を地域と共有することに力を注いだ。
2022年度、第2回正宗文庫セミナー開催(就実大学)。2023年度、国文学研究資料館・正宗文庫・岡山県立博物館・就実大学人文科学部の間で協約書を交わし、「正宗文庫と正宗敦夫展」(岡山県立博物館主催)を開催し、展示リーフレット作成(国文学研究資料館・就実大学人文科学部発行、国文学研究資料館学術情報リポジトリでも公開)、第3回正宗文庫セミナー開催(同館)、ギャラリートークを実施した。観覧者数は2,000名超。
その盛況と地元からの評価を受けて、2024年度も同じ体制(博物館との協働はより緊密に)で「岡山の至宝―正宗文庫の輝き―展」を開催した。展示リーフレット作成、第4・5回セミナー開催等も同様。観覧者数は2,500名超。
なおこの一連の活動は『山陽新聞』で報道され(22/09/25、23/10/18、24/09/22、同12/08、同12/21各朝刊)、また『岡山地方史研究』162号(24年6月)でも展示内容の紹介や観覧記が掲載されるなど、地元における正宗文庫再評価の機運も高まった。
