近世の文学

近世は、17世紀初頭から19世紀後半までの約270年間を指します。それまでの写本の時代から刊本の時代へと移ったこと(出版文化の普及)が最大の特徴です。文学の享受層は多岐に及んで大衆化し、漢詩・和歌といった伝統的な雅文学から俳諧・小説・芸能などの俗文学に至るまで、多彩に展開しました。前期は上方中心、徐々に文運東漸して、後期は江戸が中心となりました。

江戸後期の文学

寛政頃から慶応末まで(1789~1858)、おおむね19世紀を「後期」と捉えます。中心は江戸へと移り、十返舎一九や曲亭馬琴ら職業作家も出現、地方にも良寛(越後新潟)、橘曙覧(越前福井)、小林一茶(信濃)など、種々の個性的な作家が登場しました。ピークの文化・文政期(1804~1830)には、他に香川景樹・式亭三馬・鶴屋南北(四世)らが活躍します。

*印は推定。年紀は成立年を示したが近世の一部の書目は刊年を示したものもある。