近世の文学

近世は、17世紀初頭から19世紀後半までの約270年間を指します。それまでの写本の時代から刊本の時代へと移ったこと(出版文化の普及)が最大の特徴です。文学の享受層は多岐に及んで大衆化し、漢詩・和歌といった伝統的な雅文学から俳諧・小説・芸能などの俗文学に至るまで、多彩に展開しました。前期は上方中心、徐々に文運東漸して、後期は江戸が中心となりました。

江戸前期の文学

幕初から元禄あたりまで(1603~1704)、おおむね17世紀を「前期」と捉えます。整版本の普及によって古典が広く継承されると、今度はそこに同時代の文芸が花開きます。京・大坂などの上方を中心として公家と武家が文化を領導する一方で、徐々に町人も台頭し、元禄期(1688~1704)には松尾芭蕉・井原西鶴・近松門左衛門が華々しい活躍を見せました。

*印は推定。年紀は成立年を示したが近世の一部の書目は刊年を示したものもある。