中世の文学

中世は、12世紀末から16世紀までの約400年間を指します。それまで権力を握っていた貴族や寺社勢力に加え、新たに武士が力を伸ばした時代です。政治の実権が武士へ移行した鎌倉時代に始まり、天皇が巻き返しを図り混迷した南北朝時代、再び武家の政権となった室町時代を経て、下克上の安土桃山時代に至るまで、不安定な政局と度重なる戦さは文学にも多大な影響を与えました。

室町・安土桃山時代の文学

長く続いた内乱も、三代将軍足利義満の頃には次第に収まり、明徳3年(1392)、南北朝の合一が実現します。文学は芸能と融合し、享受層を拡大します。和歌の余技として始まった連歌は庶民にも広まり、民衆の芸能であった能・狂言は貴族や武士にも愛好されました。民衆や異類などを積極的に取り込んだ物語絵が作られ、町衆の思いをうたった小歌も流行します。文学・芸能の成立や受容の場で、庶民が大きな影響力を持つに至ります。

*印は推定。年紀は成立年を示したが近世の一部の書目は刊年を示したものもある。