上代の文学

日本史では「古代」という言葉が多く用いられますが、文学史では、平安時代より前を「上代」と呼ぶのが一般的です。その始まりは定かではありませんが、終わりの線は8世紀末に引かれます。政治的には国家が統一と制度の完成に向かった時代であり、文学との関わりで言えば、文字を持たなかった日本人が漢字という文字と出会い、漢字を使って表現する行為を、さまざまな形で試みて行った時代です。

奈良時代以前の文学

延暦13年(794)、都が平安京に遷るまでの、主に大和に都があった時代の文学。神話・伝説・歌謡・和歌・漢詩文・伝記・歴史・地誌などにわたりますが、全体の著作数は多くありません。また、内容は古い時代のものを含んでいても、著作としてまとめられたのは、現存するものはいずれも奈良時代(710~794)で、国家の体制の整備を背景に成立したものが目に付きます。

*印は推定。年紀は成立年を示したが近世の一部の書目は刊年を示したものもある。