説話・伝記集・縁起

平安時代初期

説話集

『日本霊異記』は、正式な書名を『日本国現報善悪霊異記』と言い、薬師寺の僧景戒によって弘仁13年(822)頃編まれたもので、日本最古の仏教説話集です。雄略天皇から嵯峨天皇(在位809~823)の時代までの因果応報説話と霊験説話116話を、ほぼ年代順に、3巻に分けて収めています。

平安時代中期~後期

説話・伝記集

仏教系の説話・伝記集として、源為憲が撰した説話集『三宝絵』、慶滋保胤が撰した往生者の伝記集『日本往生極楽記』、鎮源が撰した法華経とその信仰者の霊験・伝記集『大日本国法華経験記』があります。『三宝絵』は仮名文、他の二書は漢文で書かれています。いずれも、次代の『今昔物語集』の素材となった点でも文学史的に重要です。

院政期

説話・伝記集

全31巻1000余話から成り、日本の説話文学を代表する作品である『今昔物語集』は、この時期に成立しました。平康頼撰とされる『宝物集』は、院政期の終わりに原形ができたようです。紀伝道大江家の学者大江匡房の言談を筆録した『江談抄』も、説話に関して逸し得ない作品です。また、末法思想による浄土信仰を反映して、大江匡房撰『続本朝往生伝』・三善為康撰『拾遺往生伝』などがあいついで成立しました。

鎌倉・南北朝時代

説話

中世は説話の時代と言われるほど、数多くの説話集が誕生します。新時代の到来は、地方や庶民の世界の話に新鮮な興味を呼び起こし、盗賊や大力の女の話など世俗の説話や「こぶ取り」などの民話を語る『宇治拾遺物語』が編まれました。戦乱の世で仏教信仰も高まるなか、通俗的な例話をもとに教理を巧みに説いた無住の『沙石集』などの仏教説話集も著述されました。

室町・安土桃山時代

説話・縁起

相次ぐ戦乱で後ろ盾を失った寺社は、自らの存続をかけて正当性を主張し、信仰を宣布するため、数多くの寺社縁起や宗派の祖師伝を制作しました。絵巻や掛け幅の絵伝に仕立てられ、時には民衆の前で披露されました。和歌山県の道成寺の縁起は、歌舞伎で知られる安珍・清姫の伝説を伝えています。絵巻を見せながら物語を語る「絵解き」は現在も道成寺で行われています。