随筆・日記・紀行

平安中期~後期

日記・随筆

個人の日々の体験や心情を仮名文で綴った日記文学も、この時期に現れました。紀貫之の『土佐日記』、藤原道綱母の『蜻蛉日記』、『和泉式部日記』、『紫式部日記』、菅原孝標女の『更級日記』が代表的な作品です。清少納言の『枕草子』は、中宮に仕える女房としての生活を踏まえた日記的章段を含みつつ、多くの話題にわたり、随筆という文学形式を確立した点で特筆されます。

鎌倉・南北朝時代

日記・紀行

新しい政治都市鎌倉の誕生によって、東海道は整備され、京と鎌倉を往来する旅を素材として日記や紀行文が成立しました。東海道の情景と旅情を描いた代表的な紀行文学に、『海道記』『東関紀行』があります。藤原為家の後妻となった阿仏尼による『十六夜日記』は、実子の為相と先妻の子為氏との間で生じた所領争いの訴訟のため、鎌倉に下向する様子を綴っています。

随筆

動乱の時代、新しい社会に不安を抱いたり、不満や批判を持ったりした人々の中には、出家して俗世を離れた隠者(隠遁者・世捨て人)となる人たちがいました。山里に庵を結んだり、諸国を遊行したりして無常を観じ、仏道修行に励み、いくつかの文学作品を残したのです。中世文学の特徴である無常観を基調とした、鴨長明の『方丈記』と兼好の『徒然草』は隠者文学の双璧といえます。