日本文学研究コース長 齋藤 真麻理
日本文学研究コースは、国文学研究資料館を基盤とする大学院(博士後期課程)です。2003年4月、総合研究大学院大学の一専攻として発足し、今年で20周年を迎えました。
国文学研究資料館は、1972年の創立以来、国内外の研究・教育機関と連携して日本古典籍や近代文献を中心とする大規模な調査研究等を推進し、重要文化財を含む優れたコレクションを形成してきました。国内外の若手研究者が集う国際日本文学研究集会や日本古典籍セミナーの開催、隣接諸学との協働も活発です。その蓄積が評価され、現在、文部科学省の大規模学術フロンティア促進事業や「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想」に唯一の人文学系として策定されるなど、先導的な研究事業を展開しています。本コースの教員はその研究者21名で、国立大学法人としては最大規模の日本文学研究科といってよいでしょう。学生1名に主任指導教員1名、副指導教員2名がついてきめ細やかな指導を行っており、他コースの単位も取得できる柔軟なカリキュラムが組まれています。
毎年秋にはコースの全教員出席のもと、博士論文の中間発表会が実施され、研究の方向性や手法を検証し、論文完成までの道程を多角的視点からサポートしています。広々とした施設には院生用の研究室・図書室・談話室が完備し、手厚い経済支援も受けられます。こうした環境の中で着実に成果がまとめられており、審査には学外の専門家が副査として加わって、厳正な審査の結果、優れた博士論文が次々公刊されています。他大学に在籍するシニア研究者に学位を授与した例も少なくありません。
本コースは博士後期課程のみですから、3年間で博士論文を完成することが目標となります。時間的にさほど余裕はなく、堅実な計画性と実行性が求められるでしょう。けれども、本コースで学ぶ方にはまず、自身の知的好奇心を大切にしながら、じっくり文献と向き合って頂きたいと思います。千年を越えて生成・継受され、変容し、時に消えていった文芸のすがたとことばのもつ奥行き、そこには有限の生を生きる人間とはどのような存在なのかという、根源的かつ現代社会にも通ずる問いが潜んでいることでしょう。
是非、文献から発せられるさまざまな問いに対しつつ、本コースおよび国文学研究資料館の良質な研究資源と、知のネットワークを大いに活用して下さい。この場所で、皆さんが新たな研究の視座を獲得していかれることを願っています。
2023年6月