【出展 26】
光源氏系図
国文学研究資料館蔵[99-123]
鎌倉時代末期頃写
巻子本 一軸
三四・〇×五二一・一センチ
【解題1】
『源氏物語』の作中人物を系図にしたもの。いわゆ
る源氏物語古系図の一伝本である。のべ一六二名の
作中人物を、略歴とともに掲載している(数え方に
よって増減あり)。序文・奥書等はなく、系図不載
人物一覧も具備しない。源氏物語古系図としては、
これまで三〇数本の伝本が報告されている。しかし、
本書は新出の鎌倉期写本であるのみならず、「巣守」
巻関係の人物を最も多く記載した文献として、資料
的価値がきわめて高い。「巣守」巻は既に散佚して
伝わらないが、源氏物語古系図や源氏物語歌集の断
簡の中に、断片的に伝えられている物語である。本
書の記載によれば、巣守の三位という女君が薫の子
を出産するも、匂宮に言い寄られて世を厭い大内山
に身を隠す、という物語であったらしい。「巣守」
巻の作者が宇治十帖の作者と同じであるか否かは定
かでないが、鎌倉時代の人々が『源氏物語』の一巻
としてこれを認知していたことは確かである。
【解題2】
本系図は、伝二条為氏筆(極め札が二種付属する)。
界線を施した墨流し料紙二一枚継ぎ。ただし、料紙
の紙背には紙継ぎ順を示した三種の漢数字番号が墨
書されている。それに基づくと、本来は一〇枚継ぎ
で、理由は不明ながらも、のちに本来の紙継ぎ位置
を避けながら料紙が一二枚に分割され、かつ再び当
初の順番どおりに継ぎ合わせたことがあった、と思
われる。ほかに、等間隔の折り目も存し、ある時期、
折本に改装されてもいたようである。表紙は後補。
本文とは別筆で「光源氏系図」と墨書した題簽は、
より以前の表紙の外題を転用したものか。また、題
簽左端には縦の折線がみられるが、これは冊子の表
紙にまま施されることのある押八双か。ならば、折
本改装の際に付された後補表紙の外題を切り取った
のが、この題簽なのかもしれない。
解説 加藤昌嘉
(法政大学)
久保木秀夫
コンテンツ 北村啓子