ヴァーチャル展示

和書のさまざま

 

 

 

第二部 

さまざまな本の形

 

書名に下線が付いているものをクリックすると画像が見られます

                                                    

      

 A 写 本   

印刷された版本(刊本)に対し、手で書かれた本を、写本〈しゃほん〉と言います。現存する日本最古の写本は、推古二三(615)年頃の、聖徳太子の筆になる『法華義疏〈ほっけぎしょ〉』だと言われています。

 

平安時代の写本

 《76》教時義[高乗勲文庫]

 

鎌倉時代の写本

 《77》法相宗二巻抄[ヤ4-41]

   ※弘安一〇年(一二八七)奥書

          

室町時代の写本

 《78》古今和歌集[12-20]

 《79》年中書物所役私記[ヤ5-116]

 

奈良絵本〈ならえほん〉 

室町中期から江戸前期までの間に作られた奈良絵入りの写本。冊子体と絵巻とがあります。天地に青色か金砂子の雲霞を引くのが特徴です。お伽草子・幸若・古浄瑠璃・寺社縁起・軍記物など、主に上流女性の観賞用に作られていました。(→当館の「奈良絵本画像データベース」にて、画像を御覧いただけます。)

 《80》住吉物語[99-39]

 《81》唐糸草紙[99-34]

 《82》文正草子[タ4-56]

 

江戸時代の写本

 《83》伊勢物語[12-394]

 《84》俊頼髄脳[12-349]

 《85》鉢かづき[タ4-19]

 

 

 

 

B 版 本

手で書いた写本に対し、印刷した本を版本〈はんぽん〉と言います。刊本〈かんぽん〉とも呼ばれ、板本と書かれることもあります。活字を使った活字版と、板に彫刻する整版とに分けられます。

 

古版本〈こはんぽん〉 

日本の印刷は、奈良時代、神護景雲四年(770)に完成した『百万塔陀羅尼経(無垢浄光経)』に始まります。

以後、平安中期から室町末期には、寺院を中心として、仏書や漢籍が出版されていました。江戸初期以降に盛んとなる版本と区別して、これらを特に、古版本と呼びます。興福寺・春日大社で出された春日版、高野山の寺院で出された高野版、比叡山延暦寺で出された叡山版、京都五山・鎌倉五山などで出された五山版のほか、東大寺版・西大寺版・法隆寺版・東寺版・根来版・浄土教版などがありました。

 《86》百万塔陀羅尼経[99-85]

 《87》大般若波羅密多経(春日版)[ヨ2-43]

 

 

古活字版〈こかつじばん〉 

室町末期から江戸初期のごく短い期間に行われた、銅活字・木活字を用いた版本。出版者により、キリシタン版・文禄勅版・慶長勅版・元和勅版・伏見版・駿河版・甫庵版・直江版・要法寺版・宗存版・嵯峨本などの名称があります。

 

 ▽嵯峨本〈さがぼん〉   

本阿弥光悦の流麗な書体やそれに類似した書体の版下によって刷られた本。料紙や装訂も工芸的な意匠で装われています。京都の嵯峨に住した角倉素庵〈すみのくらそあん〉が出版に関わったため、この呼称があります。

   《88》蝉丸[タ7-16]

 

 ▽慶長(1596〜1615)頃の古活字版

      《89》東鑑(伏見版・慶長一〇年刊)[ヤ2-147]

 

 ▽寛永(1624〜1644)頃の古活字版

   《90》長恨歌抄[ワ8-14]

 

 

整版〈せいはん〉 

薄い紙に本文を清書して版下〈はんした〉を作り、それを裏向きに板に貼り付けて上から彫刻し、その板(版木と言います)に墨をつけ、上から紙をあてて馬楝〈ばれん〉でこすって印刷したもの。寛永以降、古活字版にかわって再び盛んになり、江戸時代を通じて広く行われました。この技術により、挿絵が簡単に入るようにもなりました。

 《91》桃栗三代記[ナ4-496]

 《92》本朝酔菩提全伝(文化六年刊)

 

 ▽覆古活字版〈ふくこかつじばん〉  

古活字版の本を版下に使い、整版の技術で刷った版本。覆せ〈かぶせ〉とも、古活字覆刻整版〈こかつじふっこくせいはん〉とも呼びます。

  《93》たむらのさうし[タ4-68]  

 

 ▽丹緑本〈たんろくぼん〉   

版本の挿絵に赤・緑・黄の三色の淡彩を手で加えたもの。寛永年間(1624-44)から万治年間(1658-61)にかけ上方で刊行されました。軍記物・お伽草子・古浄瑠璃などに多く見られます。

  《94》きりかみ曾我(切兼曾我)[タ7-29]

 

 ▽カッパ摺〈かっぱずり〉   

油をひいた厚紙を切り抜き、その切目から、下においた印刷面に彩色を施したもの。

  《95》当狂言絵尽[ナ7-1]

 

 ▽多色摺〈たしょくずり〉   

複数の色を重ねて摺られたもの。江戸後期には、木版手摺り技術の発達によって、版本の口絵や絵本に重ね刷りが行われました。

  《96》春色梅暦(天保三〜四年刊)[ナ4-199-7〜18]

  《97》偐紫田舎源氏(天保三〜一三年刊)[ナ4-229-1〜38]

 

 

▼参考▼

版木〈はんぎ〉 

整版を作成するために文字や絵を彫りつけた板。薄い紙に、本の一丁分を清書して版下を作り、これを裏向きにして板に貼り付け、その上から彫りました。

  《98》武徳鎌倉旧記[ヲ9-1]

  《99》魚貝譜[ヤ8-180]

 

 

近世木活字本〈きんせいもっかつじぼん〉 

江戸後期の、木活字による印刷本。幕末、私塾や個人の少部数出版として行われました。

 《100》静寄軒集[ナ8-18]

 《101》落窪物語(寛政六年刊)[サ4-56]

 

近代木版本〈きんだいもくはんぼん〉 

明治時代になって行われた整版本。

 《102》牛店雑談安愚楽鍋[ハ4-4]

 

近代金属活字本〈きんだいきんぞくかつじぼん〉 

明治時代になって行われた金属活字による印刷本。洋装活字本が主となりつつも、旧来の版の形式をとどめた和装活字本も多く刊行されました。

 《103》毛剃九右衛門筑紫講談[ヒ4-43]

 《104》高橋阿伝夜叉譚

   ※初編は本文のみ活版、二編からはすべて木版。

 

チリメン本〈ちりめんぼん〉 

各頁見開きに、木版手摺りの優雅な彩色絵を入れた、横文字(英文・独文など)の本。用紙に絹の縮緬〈ちりめん〉を連想させるやわらかく加工した縮緬紙を用いています。明治中期から大正にかけ、外国人の土産用に刊行されました。

 《105》日本昔噺(JAPANESE FAIRY TALE SERIES)[ム8-38]

 

 

 

                                                           

 C 本以外の資料    

文字や絵の書かれた資料・印刷物のなかには、本の形態を取らないものも多くあります。

 

掛物〈かけもの〉 

書画を掛けて鑑賞するために軸装したもの。本の断簡が貼付されることも多くありました。「掛軸〈かけじく〉」とも呼びます。

 《106》水無瀬釣殿十六首和歌[ヨ6-3]

 

〈きれ〉  

本の一部を切ったり剥いだりしたもの。古筆切〈こひつぎれ〉とも呼びます。名筆家の筆蹟が珍重されたため、こうした裁断が行われたのですが、その一面、貴重な典籍の一部が残存することにもなりました。

 《107》古今和歌集切(伝 後円融天皇筆)[ユ3-6]

 

屏風〈びょうぶ〉

 《108》しづか[99-17]

 

一枚刷り〈いちまいずり〉 

一枚の紙に印刷されたもの。片面刷りと両面刷りとがあります。社寺の歴史や御利益などを記した「略縁起〈りゃくえんぎ〉」、人物・事項などを位付けした「芝居番付〈しばいばんづけ〉」「長者番付〈ちょうじゃばんづけ〉」、なぞなぞや双六〈すごろく〉、暦〈こよみ〉や地図など、さまざまな種類があります。

 《109》城崎温泉寺観音并ニ湯之縁起[ユ9-23]

 《110》武者鑑番付[ユ2-2]

 《111》嘉永期大小暦[ユ9-35〜40]

 《112》まんざい絵考[ユ9-2]

 

 

 

【参考文献】

◎井上宗雄・岡雅彦・尾崎康・片桐洋一・鈴木淳・中野三敏・長谷川強・松野陽一編集『日本古典籍書誌学辞典』(岩波書店)

◎川瀬一馬『日本書誌学用語辞典』(雄松堂出版)

◎藤井隆『日本古典書誌学総説』(和泉書院)

◎廣庭基介・長友千代治『日本書誌学を学ぶ人のために』(世界思想社)

◎橋本不美男『原典をめざして─古典文学のための書誌─』(笠間書院)

◎中野三敏『書誌学談義 江戸の板本』(岩波書店)

◎山岸徳平『書誌学序説』(岩波全書)

◎川瀬一馬 著・岡崎久司 編『書誌学入門』(雄松堂出版)

 

 

 

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LastUpDate 20031031

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