今月の一冊
2008年9月

源氏物語団扇画帖・橋姫巻
〈げんじものがたりうちわがじょう〉



(回線の種類によっては、ダウンロードに時間が掛かることがあります。)

【 解題 】
[当館請求記号99-12]
書誌解説は、前月の「今月の1冊」を参照。

本画帖の最大の特徴は、絵が、大きな団扇(うちわ)型になっている点である。
一方、団扇型の源氏絵としては、これまで、石山寺蔵『源氏物語絵団扇等貼交屏風』・高津古文化会館『源氏物語絵団扇貼交屏風』(久保惣記念美術館図録『白描絵』参照)や、チェスター・ビーティー・ライブラリィ蔵『源氏物語歌絵帖』(サントリー美術館『物語絵』参照)などの存在が知られており、バークコレクションにも団扇型の源氏絵が所蔵されている由である。また、土佐派の絵画資料の中にも作例を見ることができる(徳川美術館図録『絵画でつづる源氏物語』参照)。本画帖は、それらに加え得る新たな源氏絵として注目される。
氏絵以外で団扇型になっている絵画作品としては、『十牛図』(サントリー美術館図録『物語絵』参照)、『伊勢物語絵詞巻』(『思文閣古書資料目録善本特集第3輯』参照)、岩佐又兵衛『歌仙図屏風』『団扇型風俗図』(千葉市美術館図録『岩佐又兵衛』参照)、『芸人絵尽』(国文学研究資料館貴重書99-128)などがあり、加えて、版本においても、『元禄10年版 絵入伊勢物語』(『鉄心斎文庫所蔵伊勢物語図録第2集』参照)、鳥居清長『江戸八景』(千葉市美術館図録『鳥居清長』参照)、奥村政信『小判紅絵揃物源氏物語』(『絵画でつづる源氏物語』参照)などの例がある。団扇型の絵は、扇型(扇面)や色紙型(正方形)の絵と並べられることも多く、王朝物の絵画として中世〜近世にしばしば用いられるキャンバスだったと言えようか。
なお、団扇型の絵を「州浜型」と称する向きもある(「州浜」は歌合で用いる盤)けれども、ここでは、「扇型」に対応するものとして「うちわ型」と呼んでおきたい。なお、『重文 豊国祭礼図屏風』(徳川美術館図録『輝ける慶長時代の美術』所収)には、この形の団扇を持った人々の様子が描かれている。
(解説は、来月につづく。)

今回画像として掲出したのは、「橋姫」巻の図である。
徳川美術館蔵『国宝源氏物語絵巻』をはじめ、源氏絵として古来最も頻繁に絵画化される名場面の一つ。
場所は宇治の八宮邸。季節は秋。薫21歳。
晩秋、薫は、琵琶(びわ)と箏(そう)を合奏する大君と中の君をかいま見る。「扇でなく、この撥(ばち)でも月を招き寄せられましたよ」などと戯れている姉妹の様子に、薫は心惹かれていく。
物語本文の解釈として、中世近世の注釈書では「大君が琵琶、中の君が箏」とするが、現代の注釈書では「中の君が琵琶、大君が箏」とする。
空には満月。透垣の周りには、萩・菊・女郎花・薄が咲く。

※本画帖については、当館基幹研究「源氏物語再生のための原典資料研究」のメンバーが分析を重ねている。10月に開催する源氏物語特別展において、初公開・初解説を行う予定。



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